長期経営計画のすすめ Ⅱ.企業戦略_現状分析 8. 現状分析のまとめ
1. チェックポイント
「Ⅱ 企業戦略 _ 現状分析」では、これまで6つのテーマにて記述してきました。
1. MVVを振り返る
2. 事業構成を分析する
3. コア能力を再認識する
4. メガトレンドを調査する
5. 成長市場を調査する
6. 企業会計を分析する
7.人的資本を分析する
上記の 1 . 2 . 3 . 6.7 が企業の内部環境分析、4 , 5 が企業を取り巻く外部環境分析になります。ここから内部と外部に分けて、テーマごとのチェックポイントを紹介していきます。
①内部環境分析
「実現したい未来」が描かれているか?
それはどんなタイトルと構造で描かれているか?
それは長期間かけて取り組むべき内容か?
それに社員が取り組みたいという意欲は沸くか?
それに取り組むことはビジネスとして成り立つか?
事業ポートフォリオ分析は理解しているか?
「実現したい未来」を叶える事業構成に、現時点で、どこまでたどり着いているか?
既存事業の成長だけで「実現したい未来」にたどり着けるか?
「実現したい未来」に沿っている事業だが、成長性・収益性が低い事業はどうすべきか?
「実現したい未来」に沿っていない事業だが、成長性・収益性が高い事業はどうすべきか?
コア能力や、コア能力の4つの分類を理解しているか?
現在のコア能力を継続的に磨き上げているか?
必要なる新たなコア能力は明確になっているか?
自社の安定性はどのような状態か?
自社の収益性はどのような状態か?
自社の労働生産性はどのような状態か?
自社の人材確保はどのような状態か?
自社の賃金水準はどのような状態か?
自社の働く環境はどのような状態か?
②外部環境分析
マクロ市場の分析方法を理解しているか?
注目する3つのメガトレンドとは何か?
メガトレンドを長期経営計画へどのように活かすか?
市場動向を把握できているか?
注目する2つの成長市場とは何か?
成長市場をどのように調査するか?
2. 【ケース1】 A社の現状分析と長期経営計画の方向性
私の実務やコンサルタントとしてのこれまでの経験から、代表的な2つのケースを紹介していきます。まずはA社におけるそれぞれのチェックポイントの結果と長期経営計画で検討していく方向性です。
「実現したい未来」はある程度は描かれており、チェックポイントは一定クリアしている。しかしながら、改めて長期経営計画の中で、今のままで良いのか、更に見直すのか熟考しよう!
今の「実現したい未来」により近づけるためには、既存事業の成長だけでは物足りない。よって長期経営計画の中で新たな事業を立ち上げることを検討しよう!
既存事業の更なる成長と新規事業の立ち上げに向け、メガトレンドを意識し成長市場にドメインを移行させていくことを検討しよう!
既存事業をさらに成長させ、新規事業を立ち上げるためには、今のコア能力をもっと磨くことを検討しよう!また新たなコア能力として何が必要になるのか検討しよう!
企業会計上、安定性は問題ないが、社員の人件費を継続的に高めていくために、より収益性と労働生産性を高める方法を検討しよう!
複数ある事業の中で、過去、取引先の要請から立ち上げた事業があり、実現したい未来に沿っていないため、この事業を今後どうするか検討しよう!
人的資本に関する情報に関して、ステークホルダーへの開示を適切に実施していきたい。開示項目や適切な情報収集体制、その情報のモニタリング体制をどのように構築するか検討しよう!
3. 【ケース2】 B社の現状分析と長期経営計画の方向性
次にB社におけるそれぞれのチェックポイントの結果と長期経営計画で検討していく方向性です。
経営理念は前社長の時代から変わらずに掲げているが、「実現したい未来」と言えるような内容ではなく、長期経営計画の中で検討しよう!
複数の事業はそれぞれ独立して運営しており、事業を跨いだ横断的かつ共通する方針などはないため、「実現したい未来」と合わせて検討しよう!
なんとなくコア能力と言えるものはあるが、コア能力をどう高めていくかという計画は無く、それを長期経営計画の一つのテーマにしよう!
収益性が低い事業が複数あるため、その結果、企業全体の安定性は年々低下してきている。また労働生産性が低いため、社員の人件費を高めることができずに離職者が増加してきている。長期経営計画の中で「実現したい未来」に向けて事業構成を再構築し、企業の安定性を着実に高めていく長期計画を作ろう!
メガトレンドや成長市場を意識し、企業としてのドメインを定め、各事業戦略を描いていこう!
ここ数年、採用が厳しくなると同時に、離職者が増加傾向にある。その原因を客観的に分析すると同時に、長期的な要員計画を立て、人材確保を長期経営計画の重要テーマの一つにしよう!
4.まとめ
長期経営計画の策定は、経営者や従業員の意志としての【①実現したい未来】、その「実現したい未来」を実現するための【②事業構成】、それぞれの事業を拡大し、新たな事業を創る上で、追い風となる【③メガトレンド】の3つが軸となります。
チェックポイントにて皆さんの会社の現状を確認いただき、もし今、長期経営計画が自社に無い場合は、策定することを検討されてはいかがでしょうか?
今回は以上となります。次回は 「 Ⅱ 事業戦略_ 現状分析 1. 過去の事業業績を分析する 」について書くつもりです。
【目次(案)】
Ⅰ 方針
1. 目的を決める
2. 期間・更新を決める
3. アウトラインを決める
4. スケジュールを決める
5. 体制を決める
Column 事例を調査する
Ⅱ 企業戦略 _ 現状分析
1. MVVを振り返る
2. 事業構成を分析する
3. コア能力を再認識する
4. メガトレンドを調査する
5. 成長市場を調査する
6. 企業会計を分析する
7. 現状分析のまとめ ←今回
Ⅱ 事業戦略_ 現状分析
1. 過去の事業業績を分析する ←次回
2. 現在の製品ポートフォリオを可視化する
3. 外部環境を分析する
4. 現状分析のまとめ
Ⅲ 企業戦略 _ 一次長期計画
1. 長期ビジョンを決める
2. 企業ドメインを決める
3. 目指す事業ポートフォリオを決める
4. 成長戦略を決める
5. 新規事業・M&A戦略を決める
6. 一次業績計画を策定する
7. 一次投資枠を設定する
8. 全社一次要員計画を策定する
9. TOPマネジメントを決定する
10. 企業戦略を事業戦略に展開する
11. 一次長期計画のまとめ
Column 事業承継に向けた長期経営計画
Ⅳ 事業戦略 _ 中期計画
1. 企業戦略を理解する
2. ミッション・バリューの見直しを検討する
3. 事業ドメインを決める
4. 目指す製品ポートフォリオを決める
5. 成長戦略を決める
6. 売上計画を精緻化する
7. 要員計画を精緻化する
8. 投資計画を精緻化する
9. 損益計画を精緻化する
10. ロードマップ・KPIを決める
11. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
12. 中期計画のまとめ
Column 経営計画の先行研究
Ⅳ 企業戦略 _ 長期経営計画
1. 売上計画を確定させる
2. 投資計画を確定させる
3. 要員計画を確定させる
4. 採用計画を確定させる
5. 組織計画を確定させる
6. 人材育成計画を決める
7. 新規事業・M&A計画を決める
8. リスク管理計画を決める
9. IT投資計画を決める
10. 財務三表計画を決める
11. ロードマップ・KPIを決める
12. モニタリング計画を決める
13. コミュニケーションを開始する
14. 長期経営計画のまとめ
Column 社員がワクワクする長期経営計画
最後に私の著書と副業で経営している会社の紹介をさせてください。
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