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息子の行動変容を促すために

今回はレターをいただきましたので、返答させていただこうかなと思います。

頂いたレター

「本日ズームで講義を受けさせて頂きました。ありがとうございました。
(補足ですが、産業医の資格取得のための講義があって、「行動変容」というテーマで講師をさせて頂いたとき、講義を受けて頂いた方なのかなと思います。)
私は30歳で開業し、今は56歳になりました。医師にとってコーチングは必要と10年前より感じており、今回ご講演いただきました。行動変容に関しても大変勉強になりました。
短い診察時間で患者さんにご自分の病気に関して気づかせ継続させることはなかなか難儀なことです。
(本当ですね。診察時間が短い中でコーチングというところで関わるのは結構大変。ティーチングでさっと教えちゃう方が時間が短いですしね。)
前置きはさておき、私には子供が三人おり、長女は歯学部、長男は医学部に通っており、次男が問題で、高校2年生ですが、将来の展望がなく心配しています。行動変容できるかどうすればよいのでしょう?
福田先生は理学療法士からなぜ医師を目指したのですか?ぜひお教えください。」
ということで、ありがとうございます。質問は二点ですね。「行動変容できるにはどうすればいいのか」と、それに関連して、「僕が理学療法士からなぜ医師を目指したのか」というところですね。

不安に思っているのは誰?

まず一つ目ですね。高校2年生の息子さんの将来の展望がなく心配しているということですけれど、心配している、展望がないと思っている「主人公は誰か」ということを、まず明確にしておいたほうがいいと思います。
僕もやりがちなんですが、特に子どもに対して、子どもは心配していなくて、親が心配しているんですよね。だから子供の心配を解消したいのか、親の心配を解消したいのか、どっちかって話です。そして、将来に展望がないと子供自身が考えているのか、親が子どもに対して将来の展望がないと思っているのか。
だから2パターン✖️2パターンで4パターンありますよね。
僕の予想はどちらも親が抱えているものなんじゃないのかなと予想します(外れてたらごめんなさい)。その前提で進めていこうかなと思います。

親が「将来の展望がない」と思うことが、本当にそうなのか

親が子どもにやりがちで、僕自身重なることですが、目に見えるもの、成績とか学歴がより良いものになってくると嬉しい。肩書きとか立場とか、地位財というものです。また、そんなふうに育てることができたという親自身の地位財にもなります。
どうしても僕も100%、そこから逃れられないなと思います。無いよりはあった方が良いって思いますし、レターを拝見しても、ご兄姉は歯学部や医学部に通っていらっしゃって、良い悪いではなく地位材としては高いふうに思えます。
その中で次男さんが、仮にそうではない学部に行ったとして、それについて展望がない、もしくは大学に行かないことで展望がない、ということであれば、それは地位財というものにこだわりすぎてないかなとぼくは感じました。
そうではないかもしれないです。でも親が生きてきた世代と、子どもたちがこれから生きていく世代って、世の中の成功も常識も変わってきています。ブーカの時代と言われますが、以前ある程度目標を持って積み上げていくことでなんとかなっていたことも、このあまりに変化が大きい今、これまで良かったものが、今後良いとは限らない。親世代から見て子供たちの展望が見えないことが、本当に問題なのかとも思います。
僕もまだ子供が11、9、7歳で、僕なりに子どもたちの将来、こうなってほしいという思いはありつつも、僕の考える将来安泰というものが必ずそうだと限らないなぁなんて思います。

行動変容につなげるには

もしお子さんが将来の心配をしているのだとしたら、ぼんやりした不安感をもう少し切り分けて、明確にしていくのがいいのではないかと思います。3年後先にどの大学に進むかを心配しているのか、もう少し先の職業が心配なのか。今何か困っていることがあるかもしれない。それはお子さんに聞いてみないと分からないですよね。
どちらにせよ、親が「こっちに行ってほしい」と誘導するのは、ティーチングに近い。行動変容を起こさせるには長期的にも短期的にも効果的ではない気がします。
親から見てこうだという課題ではなく、お子さんから見て、もやもやした心配から、具体的に今何が問題で何をしたらいいのかっていう課題に変わっていくことができたら、一部解決することができるかもしれません。
そこで起こる行動変容は、内側から出ないとなかなか定着してこないし、万が一親がした選択を歩んでしまって失敗した時、親の責任にします。
今回の話題での主人公は、間違いなく息子さんです。親は主人公じゃないので、親の思い描く方向に行動させるのは違います。息子さんが思い描く将来の展望をより明確になるようにお話しを聞き出して整理して行くことが結果的に行動変容につながる。といったところでしょうか。

医師から理学療法士を目指した理由

二個目は、僕が理学療法士から医師を目指した理由ですね
少し関連付けると、親から誘導されたということは全くないです。
理学療法士をしていて。とある患者さんがリハビリをして良くなっていって、その痛みから解放されて、生活が変わって、これからというときに、癌になって亡くなったという体験をしました。その時、ぼくは理学療法士としては何にもできなかったんです。そこでもっと命に関わる仕事をしたいっていうパッションが芽生えたっていうのが大きな理由です。
後から気づいたのは、僕が19歳の時、父の胃癌が発覚して最後3ヶ月の余命宣告をされて、入院して亡くなっていくプロセスに、深く向き合おうとしなかった強い後悔があって。家族といい関係を築くとか、ご家族と向き合って深いところで対話をしたいっていうところが今でも僕のパッションになっています。父の死んでいくことに寄り添えなかったという残念さというものは強く残っているから、そういう意味では親からの影響がすごい強いなと思っています。
今までは、理学療法士から医師になるなんで、なんであんなに遠回りしたんだろうかと考えてましたが、最近本当の意味でポジティブに捉えられるようになって。自分の人生のつながりとして、腑に落ちるというか、しみじみ味わえるようになったというか。それができるようになったのは最近、ようやくなんですよね。
つまり、何がよくて何が悪いのかなんて誰にも分からない。もし医学部など目指さずに理学療法士を極めていたらいたら、もっと何かあったのかもしれないとか、そんなことも言えますしね。
ということでいかがだったでしょうか?このレターを送っていただいた方に届くといいなと思いますし、こうやって最後まで読んでいただいた皆さんに、何かが響くといいなと願っております。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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ファミリードクター福田幸寛
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