男泣きと大好きな生ビールで乾杯
あれは、今から10年くらい前の出来事だった。
今でも思い出す一番の親友との涙ながらの乾杯の話です。
当時、毎日のように会っていた同じ職場の友達がいた。自他共に認める一番の親友であり、お互いに切磋琢磨できるライバルでもあった。職場での飲み会も結構な頻度であったが、お互いに独身であったこともあり、2人で飲みに行くことも多かった。
その日は夕方になって、いつものように彼が真剣な面持ちで「今夜飲みに行こう」って誘ってきた。いつもなら二つ返事でOKなのだが、その日はたまたま別件が入っていて、珍しく断ってしまった。
もちろん、飲みに行くのを断るのは初めてでなかったが、その時の彼は本当に残念そうだった。
残念そうな彼のことは気にはしていたが、それから数日はお互いに仕事に忙殺されてしまい、その時のことは徐々に記憶から薄れていきました。ただ、週末を迎えるので、彼を誘って飲みにいった。
これも、いつものコースなので、自分としても特に何も意識はしていなかった。
もちろん、最初はお決まりの「生ビール」で乾杯です。
ただ、いつも饒舌な彼がその日に限って、何もしゃべらない。どうも元気がない。どうしたのかと思い、意を決して聞いてみた。
「おまえ、どうしたんだ?元気がないじゃないか」
そしたら、彼は目に涙を浮かべて、上司から
「来年は契約しないって」
ということを前に誘った日にと言われたと・・・そこで、私は気が付いた。そうか、あの時飲みに行こうと言ったのは、そのことを言いたかったんだと。
ごめんよ。
本当にごめん。
一番の親友だと思っていたのに、そんなことも気が付かずに。
それからずっと一人で考え続けたんだね。
あの日に言いたかったんだね。ごめんよ。
それ後は、彼の気持ちを和らげるために、いつものように当たり障りのない話をしなが、過ごした。また、お互いの大好物であるビールを頼むたびに、「乾杯」ってしてしました。声に出さなくてもお互いのことが分かっているとの意思確認だった。
ただ、お互いにうっすらと目に涙を浮かべて・・・
そろそろ飲み会も終わりが近づいたころ、彼が突然口を開いた。
「俺、次の職場が決まるまでは、お前に連絡しない」
「次が決まったときに、また乾杯しよう」
って。その時に、私の頬にもツーと一筋の涙が流れていきました。
「よし、分かった。」
「決まったら連絡してくれ。その時は俺がおごるよ。乾杯しような。」
といって、その日の飲み会は終わりました。
毎日、彼と職場では会っていたが、転職活動のことは聞かずに、どちらかというと距離を取って過ごしていました。前回の飲み会から、3か月ほど経過したころ、職場の休憩室で彼から突然
「今夜、飲みに行こうぜ!」
と誘われました。これはきっと朗報に違いないと思い、
「もちろん」
と言って、いつもの生ビールのおいしい居酒屋に行きました。
頼んだビールが届くか届かないかの内に、お互いに待ちきれずに自分の方から、
「次の仕事見つかったの?」
って聞いてしまった。ただ、飲みに誘われているので、もちろん返事は
「もちろん、決まったよ」
でした。そのまま、2人で大好きな生ビールで乾杯をし、抱き合って彼に舞い込んだ幸運に酔いしれた。ついつい飲みすぎてしまったけど、人生で一番印象に残っている「乾杯」の経験。
そんな彼とは会社が変わった今でも定期的にあって、ビールを飲みつづけている。これからもよろしくな!
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