立憲民主・野田佳彦新代表選出の背後にあるもの
立憲民主党代表に野田元首相が復帰という意思決定の背後には二つの大きな要因がある。一つは次の総選挙が政権交代の最大のチャンスであり、その総選挙で勝ち、政権交代を実現させることが可能な代表が求められたという点である。タイミングと切迫性という要因である。立憲民主党に次世代のリーダーをじっくり丁寧に育てる時間的余裕がなくなった、かつその育成に失敗したという事態がこの結果をもたらす一因となった。
今回の自民党の失策を得たタイミングで、「まず政権交代ありき」が最優先され、本来そうあるべきように、ボトムアップ的に党としての理念や政策が積み上げられて、その実質的な政策論争の結果として、選ばれたわけではない、という印象が拭えない。その結果、経験豊富で認知度と人気の高いリーダーが選ばれることとなった。野田元首相の政策や理念が選ばれたという実感は伴わない。
もう一つの要因は、政権交代を実現させるために必要となる、維新や国民民主党、さらには自民の一部との連立を視野に入れたとき、保守勢力を巻き込めるスタンスや信念、人柄、リーダーシップを兼ね備えている必要があり、その点では野田元首相にその素養があったという点である。野田元首相の保守も巻き込める幅の広さや人間性は、連帯や連立を大きくするためには、強さでもあり弱さにもなる。
しかしながら、結局これは失敗した旧民主党政権が歩んできた「いつか来た道」であり、その焼き直しを結果的に選択した立憲民主党に、市民が本当に期待を持てるか、党員や支持者だけでなく、最大勢力の「支持政党なし」無党派層の判断にかかっている。
(※この記事は朝日新聞デジタルに日本大学危機管理学部・福田充研究室がコメントした原稿を転載したものです。)
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