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【旅】2018年夏 地震から半年後の花蓮を訪れた

 本日2024年4月3日、台湾の花蓮県沖を震源とする地震が発生した。現在までに死者9人、負傷者963人、複数の建物倒壊が報じられている。この災害で亡くなった方々に哀悼の意を表するとともに、一日も早い復興をお祈りしたい。
 
 2018年夏に訪れた花蓮は、穏やかな南国の街だった。花蓮では2018年2月6日にもM6.4の地震が発生している。このときの被害は、市内を走る断層の上に集中し、複数の建物が倒壊した。
 そのとき花蓮ではどのように支援活動が行われたのか。震災後の対応について伺うため、筆者は2018年8月に神戸のNPOの方々とともに花蓮を訪れ、県政府や慈善団体を訪問した。その時の写真を紹介し、台湾の一日も早い復興をお祈り申し上げたい。

 立体的なデザインが美しい花蓮駅。観光都市花蓮に向かう列車は台湾でも予約が取りにくいことで有名で、そのときも満員だった。
 地震から半年を経た花蓮は、すでに復旧が進み、地震の痕跡を感じさせなかった。2018年の地震は今回に比べれば局所的だったこともあるが、8月の時点で、倒壊した建物はすでに解体されていた。

 花蓮市の人口は約10万人。花蓮県の人口は約30万人。中心部にも昔ながらの市場が残り、庶民の生活の息づかいが感じられるのどかな地方都市だ。

 街の中心部には、かつての酒造工場をリノベーションした「花蓮文化創意産業園区」がある。
 夜になると若者たちが音楽や歌を披露していた。ストリートミュージシャンのたちの自然体の演奏。都市の若さや活気を感じた。

 

 あらためて、震災当時のことを伺いに訪問先に向かう。まずは「花蓮県政府」。人口約30万人の花蓮県の県庁にあたる。こちらでは、地震発生時の支援活動や、ボランティア団体の活動についてお伺いした。

 県政府でも強調していたのは、炊き出しなど初動の支援にあたったボランティア、支援団体の活躍である。
 花蓮には仏教系の慈善団体「慈済会」の本部があり、2018年の地震でも積極的な支援活動を行った。「慈済会」は災害支援ばかりでなく、総合病院や医療系大学を運営し、国際的な慈善活動を展開している。

 本部にはこれまでの世界各地での活動を紹介する展示室があり、会の方に日本語で案内していただいた。支援物資や炊き出し、心のケアばかりでなく、被災者向けの住宅を提供するなど積極的な支援を行っているという。民間団体がこれだけの資金や人力を集められることに驚く。

 台湾を訪問して感じることは民間団体の活力であり、彼らは政府や役所に頼らず民間でできる支援を最大限行っている。
 台湾は日本で想像されている以上に多面的である。わたしの周囲の台湾人や台湾研究者も、それぞれ別の視点から台湾を見ている。こうした支援活動に関しても、様々な意見があると聞く。
 2018年の訪問では、台湾がなぜ災害時にあって強力な支援を展開できるのか一端を覗くことができた。今は一日も早い台湾の復興を祈りたい。


 さすがに6年前の旅なので、伺ったお話の詳細まで思い出せないことが残念だ。最後に花蓮周辺の自然環境を紹介したい。台湾も都市化が進み、台北や高雄の都心はすっかり人工的な都市であるが、花蓮は山と海に接した細長い地域に街が広がり、街中を一歩出れば豊かな自然が広がっている。近くには太魯閣(タロコ)渓谷という景勝地があり、水と岩山が作り出す絶景が広がっている。
 また、石材で有名なことから石の彫刻の博物館「花蓮県石彫博物館」がある。石の質感や模様を活かして別の何かに見立てた作品にはユーモアを感じる。

 水流が岩山を削ってできた地形、太魯閣(タロコ)渓谷。

少数民族タロコ族に関する展示
タロコ渓谷


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