第23回Book Fairレポート~積みは罪じゃない、むしろ愛~
♪積み上げた本、ぶっ壊さねえ!
三度目のオンライン開催となったBook Fair読書会、今回は7名の方にご参加いただきました!
主催者も含めた全員の積読(未読のまま家で待機している本)は、合計で驚異の1984冊でした…普通に古本屋ができる?
しかし、積読は積「徳」(byぱんださん)であり(それだけ沢山の本を買い、人と交流していますからね)、未来の自分への贈り物でもあります!
これからも、部屋にスキマがなくなるほどに、全力で蔵書を増やし続けましょう!
★紹介された本(引用ボックス内は、参加者による「帯」)
じゅんぺいさん(12)→片山杜秀『鬼子の歌:偏愛音楽的日本近現代史』講談社
音楽に国境は、ある!?
西洋とくらべ、あまり評価されていない日本人のクラシック作曲家たち。
そんな彼らの作品を考察していくと、音楽の「感じ方」にまつわる文化的な差異が明らかに…
音楽の趣味に理屈はないように思えますが、実は自分の環境・経験が大きく関わっている。
つまり「なぜかこの曲がエモい!」と感じたら、自分のルーツを知る好機かも。
感想タイムでは「音楽は言語化できないと思っていましたが、分析すると面白いですね」
「文化的にあわない、っていう意味で西洋音楽学んだ人はそれを伝えるのに苦しんだみたいですね。滝廉太郎とか」とのコメントも。
◆感想タイムに登場した本
◆じゅんぺいさんなど主催の『東京まんがたりお茶会』はこちら!
maitoさん(初)→佐藤雫『言の葉は、残りて』集英社
あなたは、言葉の力で、いつ、どこで、誰に、その想いを伝えますか。
主人公は鎌倉幕府三代将軍・源実朝。「武芸よりも文芸」で世を治めたいと願った、若き勇者の物語です。
彼の信念に影響を与え、心の支えとなった信子との、和歌を通したつながりも見逃せません。
争いの火種がくすぶる、殺伐とした武士の世とあって、実朝は厳しい声に晒されます。
私も読みましたが、思わず本と目を閉じて、しんみりしてしまうことも。
一方で、実朝が妻の信子に「みだい」(「御台」ではなくひらがななのが重要)と呼びかける場面は、性別関係なくキュンとくるはず。
◆maitoさんがスタッフを務める『伊東潤の読書会』はこちら!
ぱんださん(3)→真藤順丈『宝島 HERO’s ISLAND』講談社
生きろ。
第二次世界大戦後の沖縄を舞台に、圧倒的なスケールで展開する青春&歴史小説です。
ぱんださんはこの本から、「生きろ」というシンプルかつ熱いメッセージを受け取ったそう。
描かれるのは、生きるために「正しさ」が変わっていく世界。ぱんださんは「悪いことはダメ、って何でもかんでも言っちゃいけない。その時の状況とか、価値観を知る必要がある」と感じたとのこと。
感想タイムでは、戦時下での人心の動きを綴った本が多く紹介されました。
沖縄には、積み重なった歴史の上に「現在進行形」の問題があります。作品を楽しみつつ、考えるきっかけにしたいものです。
◆感想タイムに登場した本
パンさん(初)→獅子文六『コーヒーと恋愛』ちくま文庫
人生の突破口は意外と身近にある。コーヒーでも恋愛でもなく・・・
ネットプリントを活用したZINE(こんな創作活動があったとは!)で『ツンドク紀行』を執筆しているパンさん。途方もなく長い旅の途上で、Book Fairに立ち寄ってくださいました。
女優である主人公のモエ子は、年下の旦那さんに「生活革命」を宣言され、突然ひとりに。
しかし、日本可否(コーヒー)会の仲間たちとの出会いが、彼女の人生を変えていきます。
パンさん曰く、可否会は読書会にも通じる、素敵な雰囲気があるそうです。そして菅会長が主人公にかけた言葉は、自身にも響くものがあったとか。
感想タイムでは「本の中での出来事とかセリフが、自分の生活の中に入ってきたときの一体感はヤミツキ!」と、共感の声が上がりました。
柚葵さん(初)→リチャード・ロイド・パリ―(訳:濱野大道)『津波の霊たち 3・11死と生の物語』早川書房
その時、何が起こったか
「東日本大震災の被害について考えることは、いま自分が学生として取り組んでことに近かった」という柚葵さん。
津波からの避難において、宮城県石巻市立大川小で起きた事故を中心に書かれた、こちらの本を紹介してくださいました。
数多の関連本の中から選んだ理由としては、外国人記者の視点で取材されている点、また2018年刊行で、震災の新しい事実や情報が得られる点があるそうです。
事件や事故、災害など、大きな出来事は私たちの生活だけでなく「言葉」を変えると思います。
感想タイムでも「言葉が生きてるってそういうことですよね」「いろんな背景を持つ人が書くことに意味があるのでしょうね」というコメントがありました。
KENさん(5)→ちきりん『自分の時間を取り戻そう ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方』ダイヤモンド社
ブラジルと日本の農業の違いは。
広い土地に頼るのではなく、限られた資源を有効に使う…国によって農業のやり方が違うように、有効な時間の使い方も、人それぞれ違います。
「時間のリソースをどこに投資するか」で生産性が決まる、という本書は、働き方を見直したい人にうってつけかもしれません。
また、KENさんは「高校野球の選手たちは、時間や設備に制約がある中、工夫して練習している。そこは、環境に恵まれたプロ選手にも負けていない」と例を出し、本の趣旨を解説してくださいました。
感想タイムでは、「チームスポーツはプロになってからポジションが変わる選手も多く、その時に学生時代の姿勢(時間の使い方)が問われる」との話題でも盛り上がりました。
まふぃさん(初)→雪舟えま『ナニュークたちの星座』アリス館
星空が恋しくなったら、読む
まふぃさんのおすすめは、梅雨空でどんよりした心を、ホッとひと息つかせてくれるSFです。
ナニュークとは、地球外の惑星で活動するクローン人間たちのこと。彼らには名前がなく、「37922号」といったナンバーで呼び合います。
消えた相棒を探す主人公の旅を見守りながら、ゆったりとした読書を楽しめるそうです。おうち時間にも合いそうですね。
感想タイムでは、星の描写が印象的な本について語り合いました。そういえば、もうすぐ七夕ですね。
また、雪舟えまさんの作品では「トリィ&ニニギ輸送社とファナ・デザイン」という短編も、意欲作だという声が寄せられました。
◆感想タイムに登場した本
ふっかー(23)→田口久美子『増補 書店不屈宣言 わたしたちはへこたれない』ちくま文庫
書店員が語る書店員、書店員に語る書店員
書店員として45年以上現場に立ち続けてきた著者が、本屋の現状と未来について語る。
...こう紹介すると堅苦しそうですが、ベテランならではの軽妙な語り口に引き込まれ、ぐいぐいと読めてしまいます。
「リアル書店」が抱える課題をズバッと指摘しつつ、同僚の書店員さんたちと改善策を考えます。
「紙の雑誌の価値」「人文書の定義」「自治体の庁舎に書店は作れる?」など、本好きのツボが押されまくる話題が目白押しです。
個人的には、書店員同士の会話だからこそ垣間見える「本屋の本音」が興味深かったです。
インタビュー集であり、エッセイでもあり、業界論でもあるところが面白いので、ぜひ読んでみてください!
◆みなさんの感想
参加してくださった方々、本当にありがとうございました!!
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