食事はなぜ日に三度なのか
江戸時代初期まで日本人は一日に二回の食事が普通だったらしい。時代、場所、職業によってちがいはあるが、今のように灯りをつけて長時間働いたり、娯楽にふけるということがないので、当然活動時間が今より短く食事の回数も少なくて済んだ訳だ。
では、どんな経緯で三回になったのか。諸説あるが、江戸中期に、さまざまな産業がさかんになり、流通がさかんになったこと、そして菜種油が普及するようになって起きている時間が長くなったことが関係しているようだ。
海外ではどうだろう。ドイツには「一日二食は自分のため、残りの一食は医者のため」ということわざがあるそうだ。つまり、本来健康的な生活に必要なのは二食で、三食にすると肥満による病気のために医者にかかる必要が生じるということらしい。
こんな逸話もある。アメリカの発明家エジソン。蓄音機、白熱電球、そして電気トースター(1910年)などを開発、商品化している。あるとき、「どうしたらあなたのように頭が良くなるのですか」と尋ねられた。彼は「一日三食欠かさず食べることだ」と答えた。それまでトースターの売り上げは芳しくなかったが、朝食が必要なんだというキャンペーンは見事に成功し、トースターの売り上げも伸びたらしい。しかも当時エジソンは電力会社も経営しており、朝の電力消費も伸びた、と言われている。もしこのあたりで二食から三食になっていったとしたら、日本はアメリカよりも200年も早く三食に移行していたということになる。
ということはわたしたちもみんながみんな朝昼晩と規則正しく三度三度食事を取る必要はないのかもしれない。勤務時間や休憩時間が決まっている人ならともかく、おなかがすいたら食べる、あるいは仕事の前にがっちり食べる、はたまた仕事や授業の前に食べると集中力が落ちるから、一通りまとまりがついたらゆっくり食事を取るというようにそれぞれに自由があってもいいだろう。まあ実際多くの人はそうしているだろうし、一日一食にしているという人だって時にはいる。
俳優の窪塚洋介さんがインタビューで次のように述べている。
(以下https://news.yahoo.co.jp/articles/ac43bf2c3695b2a900d3eaf3d2433476ce09199f?page=2 より引用)
──具体的に食事で気をつけているポイントは?
「1日1.5食にしています。朝は野菜ジュースと自家製豆乳ヨーグルト。これが、0.25だとして、昼はとにかく好きなもの食べる。これが1。夜は腸に良い根菜類や発酵食品、海藻類を中心に、つまむ程度で0.25。合計で1.5食です。本当は1日1食にしたいところですけど、そこはあんまりストレスがないように」
──1.5食にしてから変化ありましたか。
「体が軽くなって、調子もいいですね。お酒もめちゃくちゃ吸収できるので、燃費が良くなりました。いいことだらけです」
──夜を0.25で抑えるのは、大変じゃありませんか?
「考え方次第ですよ。例えば、空腹をストレスだと感じるのは、“空腹→飢餓→死ぬ”という思考回路で脳が危険だと判断するから。でも、食べないことで、消化以外にエネルギーを回すという考え方もあるんです。例えば、病気だからと言って、治るようにたくさん食べると生命エネルギーが消化に回って、本当に必要なところに行き渡らない。だから、自然治癒力を高めるためのスイッチは、食べ過ぎないことなんです。空腹だとしても『俺の体は今、健康に向かっている』と思えばハッピーじゃないですか。空腹感は幸福感ですよ。これって、食費もかからないし、お金をかけずに健康になれるし良いことづくめ。ぜひみなさんも取り入れてください」
(引用ここまで)
食事の回数と量を減らすと消化以外にエネルギーを回せるというのは興味深い。たしかに一日三食ふつうの量を食べていると、かなりの時間とエネルギーを食事を摂ることと消化に費やしている訳で、消化器官も休む間があまりないだろう。しかもエネルギーを消費しないような生活をしていれば、どんどん肥満が進んでしまう。むしろ食事の回数と量を減らす方が多くの人にとって健康的にちがいない。
一日三食は当たり前のこと、健康的な生活のためには必須というのは必ずしも正解とは言えないのではないか。むしろ習慣として確立されていることであってもどんな経緯でそうなったのか、自分にとってはどんな意味をもっているのか、よく考えてみてよりよい習慣を確立していく方が賢いだろう。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。皆さんの参考になればうれしいです。
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