ボディビルコンテスト
私のこと 筋肉パート2
ジムに通うことは、私にとっての日常になった。
その日も、当然のようにジムでトレーニングをしていた。すると、ヒソヒソと男性の声が聞こえてきた。いや、正確には、視線を感じただけなのだけれど、私にはその人の頭の中の声が聞こえた気がしたのだ。
(うーん、どうする?少しおばさんだけど・・・。よくジム来てるし、あれだけ鍛えているんだから、上位に入れるんじゃないか?)
と、頭の中で葛藤しているような様子で、一歩二歩と男性が近づいてくる。
そして、私に話かけてきた。
「8月に、ミス岐阜ボディビルコンテストがあるんだけど出てみませんか」
「あの~、私、ミスじゃないんですけど。子どももいるし・・・」
「ミセスでもいいんです。」
その人は笑みを浮かべて、でも力強く言った。
「何をするんでしょうか?」
「簡単なことですよ。筋肉をもう少し増やして、日焼けして脂肪を落とすだけです。」
「だけ?・・・・」
と、、、、なんだかわけがわからないけれど、私はボディビルのコンテストにスカウトされたのだ。
その日から、トレーニングにはより一層力が入るようになった。
ガシャーンッ。ガシャーンッ。BGM代わりに響き渡るウエイトのぶつかり合う音は、重量感を増していった。
ジム内では、私がボディビルの大会に出場することが噂になっていた。
だんだん、自分もその気になってきた。
鏡の前でポーズを取ってみたら、
「これはすごい!」
「きっと優勝できる!」
ジムに通っている筋肉隆々の人たちがおだててくれた。
「え、そうかしら?」
なんて、私もまんざらではない返事をする。
ただ、家に帰るとジムとは正反対。夫や子どもの前では、ボディビル大会に出ますと言い出すことができず、内緒にしていた。
「スポーツジムに通っていたらね、お友達に誘われてボディビル大会にでることにしたの」
「そうか、楽しそうだね、いっておいで。」
なんて、絶対にならない。ちょっとランチにいってくるわ、という話ではないのだ。夫や子どもに、何考えてるの!?と言われるに違いない。
そして、迎えた大会当日。最初の大会は家族に内緒で出場した。
結果は、なんと優勝!!!
私が大きなトロフィーを持って帰ったものだから、夫と子どもは目を丸くしていた。
それから、毎年、岐阜の大会では優勝。3年後には、中部日本大会で優勝した。全国大会は・・・さすがに壁が厚かったが。
数年前までは、お腹のぜい肉を気にしていた普通の主婦だったのだ。だれが大会で優勝するほどのボディビルダーになることが想像できただろうか。
この経験が私に教えてくれた
“小さなやってみたい気持ちを、行動に移せば人生は変えられる”
ということ
自分がこうなりたい・やってみたいと思ったことを、とりあえずやってみること。
気持ちさえセットできたら、多少のムチャなことでも人間はやり遂げることができる。スポーツという未知の領域で、目標を達成できたことが大きな自信になった。
まずは、行動してみること。その一歩が、人生を大きく変えていく。
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