ここではないどこか 韓国ドラマの世界 第五回「リメイクされた日本のドラマ」(せともも)
前回触れた韓国映画のリメイクである「未満警察」のように、最近日本でリメイクされた韓国の作品は、「サイン」「シグナル」「TWO WEEKS」「ボイス」など・・・サスペンス要素の強いものが多いように感じます。韓国のサスペンスは、日本に比べて怖いです。
映画・ドラマ好きとして致命的なのですが、私はあらゆる暴力シーン、虫、など少し病的だと思うくらいに見られないものが多いのです。そういう意味での安全確認が必要で、面白そうでも気配を感じたらやめます。怖さが勝ってしまい・・・
昔の映画はそれでもまだどうにか見れたのですが、多分技術が上がってリアルな表現が可能になっているのだと思います。年々断念している作品が増えている気がします。
なのでとても見たいのにほとんど見れてないものにタランティーノと韓国映画があります。韓国映画はとにかく暴力シーンが多いのでもう諦めていて、ホン・サンスくらいしか観れていません。パラサイトもかなり危ないと予想していたのですが、後半は目を瞑る、前を見ながら視線を逸らし画面を見ないようにする、などしてギリギリでした。
映画よりは少し軽い気がしますが、そんな理由から、韓国ドラマもサスペンス色の強いものは、見れてないものも多いですが、きっとそこの怖さプラス、それがあるからこその緊張感のある面白さが、日本でリメイクされる理由として大きいのだと思います。
今回は、韓国でリメイクされた日本のラブストーリーを紹介します。
ラブストーリーが日本よりたくさん作られている韓国でリメイクされるのには、どんな特徴があるのかを考察してみました。
「空から降る一億の星」(2018)
木村拓哉と明石家さんまが共演したこのドラマ。最初韓国でリメイクされると聞いた時、2003年の日本の作品が、15年後の今なぜ?と思いました。でもちょっと考えてみれば、キムタク主演というイメージばかりで忘れていましたが、このドラマは、謎めいた過去、幼い頃のトラウマ(実は共有していた)という何度も紹介している、まさに韓国ドラマの大好きな設定!
リメイクされたのも頷けます。
韓国版で、キムタクの役を演じているソ・イングクは「応答せよ1997」で一躍人気になりましたが、二面性があり本性がなかなかわからないキャラクターをさらっと演じていて、これまでと違う魅力が出た作品になったと思います。
「リッチマン、プアウーマン」(2018)
タイトル通りの設定は、韓国の王道であるためリメイクしやすかったのでは、と思いますが、特にポイントになったのは、主人公の失顔症という症状ではないかと考えます。
本来脳の障害であるものを、ドラマの中では過去のトラウマからくる心因性のものと設定しているそうですが、韓国ドラマには、この失顔症の設定がよく見られるからです。
「100日の郎君様」(2018)
主人公は記憶喪失、そのライバルでヒロインを取り合う相手が失顔症。
「匂いをみる少女」(2015)
主人公は匂いが感じられない無感覚症、ヒロインは記憶喪失、ヒロインを狙う犯人が失顔症。
「ビューティーインサイド(ドラマ版)」(2018)
主人公が失顔症。ヒロインは月に1週間だけ、別人の姿になってしまう。
というように、記憶喪失や、他の症状と併せて設定されていることが多いようです。
設定された謎が視聴者に可視化されわかりやすくなる、また、心因性とすることで、いつとけるのか、その時どうなるのか、という緊張が生まれるからでしょうか。
そして第三回のテーマだった「信じる力」の裏付けとして存在しているように思います。記憶喪失や失顔症を通じて、それでも信じる、という力を表現しやすいのではないでしょうか。
「花より男子」(2009)
前回「韓国ドラマになりそうな漫画」と題して紹介しましたが、これはまさにその元祖!
格差社会や、どん底の主人公パターンの王道です。
正直、昔初めて漫画を読んだ時、「日本のどこにこんな学校が??」とちょっと思ったのですが、韓国でやると逆にその違和感がなくなっているのかもしれません。
ここで主演したイ・ミンホは、その後新しい四天王、と呼ばれるまでになりました。現在Netflixで配信されている「ザ・キング」も話題ですが、同じく彼が主演し、脚本も同じキム・ウンスク作家の「相続者たち」(2013)は、韓国の超金持ち高校を舞台に、韓国的な要素をドバドバつめこんで、こっちが本当の意味でのリメイクなのかも、と思います。
次回は、何度も触れていますが「Netflixで観れる韓国ドラマ」について書きたいと思います。
せともも
ラジオを中心に、脚本などを書いています。
韓国ドラマを、できるだけ、俳優以外の視点で紹介します。
http://www.setomomo.net