見出し画像

赤ちゃんの顔(ひなてこ)

赤ちゃんが生まれた時「どっち似か問題」は定番の会話だと思う。

私はこれがとても苦手だった。まず私は大人同士の顔でも似てる似てないというのが分からない。そもそも人の顔を覚えるのが苦手だし、髪型とかで簡単に分からなくなってしまうのに、それが赤ちゃんと大人を比べるとなるとお手上げだ。大体夫婦で付き合いがあるならともかく、結婚式で見ただけの友達のパートナーの顔なんてぼんやりしてるし。更には赤ちゃんが「ママ似だね」と言われないと気がすまない人が一定数いることを知ってからは、もう余計なこと言わんとこという一心で「ママ似だね♡」と言ってやり過ごして来た。

ところがお姉ちゃんに子供が生まれた時に、はっきりと「この子はお姉ちゃんに似てる!」と分かった。一番見慣れた顔に似た赤ちゃんを見たせいだろうか、この時を境に突然「赤ちゃんの顔の見方」とでもいうべきものが分かったのである。具体的に何がどう分かったのかは自分でも説明できないんだけど、今では友達の赤ちゃんを見たら「色白なとこと口元の感じがそっくりだね♡目元はパパ似かな?」くらいのことはスラスラ言えるようになった。

「男の子は母親似、女の子は父親似が多い」というのは生物学的にも説明のいくことらしい。私は父親似だし、甥っ子もお姉ちゃんにそっくりなので、お腹の赤ちゃんが女の子だと分かった時から「どんなぱっちり二重の赤ちゃんが生まれてくるだろう」ととても楽しみにしていた。なんせ私の夫はものすごいクッキリした二重の持ち主。本人は立川志らくと西川きよしを足して2で割ったような顔をしているが、夫そっくりの義母は可愛らしい顔立ちなので、女の子だったらこの二重は嬉しいんじゃないかと思ったのだ。私は本来さっぱりとした塩顔が好きなのに涙袋が2㎤くらいある人と結婚してしまったが、赤ちゃんに遺伝するとなればこれもまた美点。まぶたの裏側が見えるほどアイプチで必死に重たいまぶたを貼り付けていた身としては二重を願わずにはいられない。そもそも自分に似て欲しい部分なんて顔だけじゃなく何一つないものだから、毎日お腹を撫でては「お父さんの頭脳と二重をもらうんだよ〜」と話しかけていた。

さて生まれて来た赤ちゃんは、生後2日目くらいのまだむくんでる時からどっちに似てるかはっきりしていた。もうめちゃめちゃ私なんである。はっきり言って生まれてすぐは夫要素を見つけられず、「指が……ちょっと長めかな……?」とむりくり似てるところを探し出す始末。それも不思議なことに、赤ちゃんの時の私にはさほど似ていなくて、今現在の私によく似ている。そんなことってあるんだ……?

なのでもちろん赤ちゃんのことは世界一可愛いと思っているし、毎朝起きたら「今日もウルトラかわいいプレシャスシャイニーふわふわ焼きたてコッペパンちゃん♡♡♡」と思ってるし、ベビーカーで揺れるほっぺを見ながら「ぷるぷるモチモチわらび餅選手権ギネスレコード保持赤ちゃん♡♡♡」と思ってるし、お風呂上がりは「今日も1日おりこう元気元気の世界で一つだけの花やったな???ねんねの時間にちゃんと眠たくなっておててホカホカの天才すべすべゆでたて水餃子ちゃんやな♡♡♡」とか言いながら寝かしつけてるけど、なんせ自分に似てるので「仕上がりはお察し」という気分で冷静である。出産前に恐れていた「赤ちゃん可愛さに目が眩んでベビーモデルとかに応募しだす」みたいなことにはならなそうだ。

5ヶ月経った今も、夫に似てる部分は髪質と福耳なところくらいしかまだ見つかっていない。ぱっちり二重の友達が一歳まで一重だったというので僅かな希望を残しながら、せめて性格だけでもお父さんに似てね……と願うばかりである。

Author:ひなてこ
タツノオトシゴが好き。赤ちゃんには自分の好きな色の服を着せるんだいと思っていたが、似合わないもんは似合わないな……とパステルグリーンを着せるのを諦めた。
Twitter @Hinatic
ブログ「海を走る氷の馬」https://www.hinatic.club/

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集