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BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム (スライド・シート付き)
富家(ふけ)と申します。
お世話なっているみなさん、いつもありがとうございます。
気がつけば、BtoBマーケターとして仕事をさせていただくようになって9年目を迎えました。大変ありがたいことに、実務を通じて学んだことや取り組んだことをイベントやセミナー等でお話したり、記事として取り上げていただいたりしています。
活動の内容はXのアカウントで発信していたり、こちらのNotionにもまとめています。また、個人事業主としてもマーケティング組織の支援にも携わり、たくさんの方と交流させてもらっています。
こうしたご縁をいただく中で、2024年6月に翔泳社さまより「最高の打ち手が見つかるマーケティングの実践ガイド」を出版させていただきました。
手にとっていただいたみなさん、本当にありがとうございます!
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そんな私が、ひとりのBtoBマーケターとしてチャレンジしていることは「BtoBマーケティング×マネジメント」で成果を出すことです。
なぜこの2つの掛け合わせが重要だと考えるようになったのかと言うと、BtoBマーケターが成果を出すためには、優れたマーケティング戦略や戦術を考えるだけでは足りず、それを組織で実行していく「マネジメント」の両輪が必要だと学んだからです。
BtoBマーケターが向き合うべき成果は2つしかないと思っています。
それは「事業の成果」と「組織の成長」です。
あらゆる施策や取り組みの目的は、このどちらかの成長に寄与するものか、あるいはこのどちらの成長にも寄与することが目的でなければなりません。
そうでなければ「意思決定」の際に、なにを優先すべきかの基準や方向性が曖昧になって判断がブレます。多様なステークホルダーと「合意形成」を図るシーンでは、もっとも重要な目的意識が共有されていないと議論は空中戦となり、調整が難航します。
BtoBマーケティングで成果を出すためには「意思決定×合意形成」はとても重要なアクションですが、その方法はまだまだ属人性が高く、苦労されている方が多いと思います。
もちろん私も苦労しているうちの一人ですが、このnoteでは、意思決定と合意形成を後押しし、「事業の成果」と「組織成長」の両立を実現するための『BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム』を、スライドやシート付きで紹介します。
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BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム
「これが正解です!」と言えるようなHowをお伝えすることはできません。ですが、「思考のシンプル化」をお手伝いすることでアクションへの着手や改善サイクルを早めることができ、結果として「正解に近い」と思えるアクションに辿り着くまでの時間を短くできるのでは?と思っています。
みなさんがこのフレームワークを活用いただくことで、より大きな成果を上げるお手伝いができればと思っています。
拙い文章なのはご容赦ください。
また、noteで解説している内容をまとめていますので、忙しい方は下記のスライド(全63スライド)をどうぞ。
実践用のスプレッドシートもお配りしております。
ダウンロードやコピーをして、活用ください。
それではさっそく本編です。
BtoBマーケティングって、とにかくむずかしい
続く内容にも関わるため、BtoBマーケターとして経験してきたことを少しだけ書かせていただきます。
3社目で入社したコニカミノルタジャパン株式会社で事業マーケの立ち上げや拡大(3人→34人)に携わった後、全社マーケティング組織の責任者として全社マーケの立ち上げを経験しました。
とにかく手探りで失敗もたくさん(本当にたくさん)ありましたが、BtoBマーケターとは何をする仕事なのかを学ばせていただきました。
その後、「BtoBマーケティング×マネジメント」で成果を出すためにマネジメントについて学ぼうと思い、「マネジメントの型」という独自のマネジメントナレッジを扱う株式会社EVeMというベンチャー・スタートアップ企業に、社員10人目のひとりマーケターとして入社しました。
2社での取り組みを簡単にふりかえると、下記の通りです。
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いわゆる「大企業からスタートアップへの転職」をしたわけなのですが、その環境の変化は想像をはるかに超える過酷さでした。
会社の制度や仕組みはまだまだ整えきれておらず、オフィスは底冷えするマンションの一室でした。いつだって時間も人手も予算も足りず、いつもギリギリの状態で、みんなと必死に事業を前に進めてきました。
ランウェイ(企業の資金が尽きるまでの期間)を眺めながら、「マーケター」なんて偉そうな肩書きが1円にもならない現実を突きつけられました。明日も自分たちが生き抜くためには、肩書きすら捨てて自分の役割を見直し、今日のアクションから変えていかないといけません。
生きるか死ぬかのビジネスにおいて、当然ともいえる厳しい過酷さを痛感する日々でした。
こうした状況だからこそ、自分たちが実行している施策や、これからやろうとしている施策を信じることが大事だと痛感しました。半信半疑で取り組めば、スピードも、クオリティも、成果も学びも半減してしまいます。
決めるときには徹底的に考え、迷い、疑って、そして一度やると決めたらまっすぐに突き進む。大企業やベンチャー・スタートアップに関わらず、この姿勢を個人と組織に実装できるかどうかが成果を大きく分けるポイントだと実感しました。
しかし、それを実現するのは決して簡単ではありません。
BtoBマーケティングの現場では、経営者、セールス、他部署、顧客など、それぞれ異なる正義や論理、感情を持った多様なステークホルダーが関与します。そんな中で、意思決定や合意形成が曖昧なまま進めば、上述の通り、同じ施策であっても成果に大きなばらつきが生じます。
マーケターは、提案や意見の正当性や効果を適切に伝えることに加えて、組織を動かすためのリーダーシップやスキルを持っているのかも問われます。
さらに難しいのは、プランニングや意思決定の目的が「事業の成果」と「組織の成長」の両方を満たす必要があることです。一方に偏るだけでは、持続可能な成果を実現することはできません。
例えば、短期的に事業の成果だけを追求すると、現場の負担が増大することにより組織が疲弊します。その結果、人材が定着しなかったり休職を余儀なくされるなどし、中長期的な視点での事業成長が損なわれるリスクが高まります。一方で、組織の成長だけを目的とすれば、やるべきことではなくやりたいことが優先されてしまいやすく、事業の成果から遠い施策を優先してしまう可能性があります。
短期的な成果がなければ事業が停滞し、一方で組織の成長が伴わなければ、成果を維持する基盤が失わます。このバランスが取れてはじめて、持続可能な成果が実現できます。
こうした学びや気づきは、事業内容も企業規模も組織も状況も…何もかも異なる環境の中で、BtoBマーケターとして成果に向き合ってきたからこそ見えた共通点でした。
重要なのは「両立」すること
これまで私は「売上に貢献できなければマーケティングの意味がない」と自分に言い聞かせてきました。しかし次第に、BtoBマーケターとして解決すべき本質的な課題は「事業の成果」と「組織の成長」の両立だと考えるようになりました。
ただし、この両立はとても難しいです。短期的な成果へのプレッシャーが高まると、即効性のある施策にリソースが集中してしまい、中長期的な成長のための施策に十分なリソースの配分ができなくなってしまいます。
この問題を解決するには、「マーケティング施策で成果を出すためのプランニング」と「マーケティング組織を成長させるためのプランニング」を分けて考え、それぞれに対して適切な意思決定と合意形成を行う必要があると考えました。
そして、それらを具体的なプロセスに落とし込み、実行可能な形に整理したのが今回解説する『BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム』です。
このフレームワークは、BtoBマーケティング組織の責任者やマーケターだけでなく、経営者や事業責任者の方々にもご活用いただけます。「自分たちがBtoBマーケティングによって成果を出すために、なにを実行すべきか」をディスカッションするきっかけになればうれしいです。
それでは『BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム』の中身と、その具体的な活用方法について解説します。
BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム
BtoBマーケティング組織は、リード数や商談数、受注見込み金額といった短期的成果を追いながら、同時に中長期的な組織基盤の強化にも取り組む必要があります。
そのためには、単に施策をプランニングするだけでなく、ステークホルダー全員でスムーズな意思決定と合意形成を図ることが不可欠です。
一方で、それぞれの間で認識が一致しない場合、以下のような問題が生じます。
ステークホルダーが期待する成果とのギャップを感じ、マーケティング活動への信頼を損なう
例えば、経営者が短期的な成果(リード数や商談数など)を重視しているにもかかわらず、マーケターが中長期的な組織基盤の整備を優先した場合、経営者・関係者の目線では「成果が出ていない」と捉えられることがある
認識のズレが解消されないままでは、施策の軌道修正が遅れたり、信頼を得にくくなって、さらなるリソース投下が難しくなる
マーケターはやりたいことができず、短期的な成果ばかりを求められて疲弊する
一方で、マーケターが中長期的な基盤強化(例えば、オペレーションの整備や人材育成)に注力したいと考えている場合でも、短期成果を優先する圧力が強ければ、短期的な施策の実行に追われ、基盤強化の取り組みが後回しになることがある
この状況が続けば、マーケティング組織やマーケター自身が疲弊し、組織全体の実行力やパフォーマンスが低下する要因となる
成果の軌道修正が困難になり、組織全体が非効率に陥る
リソース配分や優先度に対する認識が一致しないままでは、組織全体の方向性が揃わず、どの施策に注力すべきかが曖昧なまま進んでしまう
結果として、短期成果と中長期成長のいずれも達成できず、個々の努力が空回りしてしまう可能性が高まる
これらの課題を解消するためには、施策の優先順位やリソース配分を明確にし、全員が納得した上で進められる意思決定と合意形成が不可欠です。
では、どのようにしたら全員が納得した上で進められる意思決定と合意形成を実現できるのでしょうか?
結論から言うと、 以下の4つを押さえることで実現できると考えています。
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BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム
次の4つの構成要素を設けています。
1)8つの視点
<概要>
「意思決定×合意形成」をスムーズに行うにあたって押さえるべき重要な8つの論点
<役割>
ステークホルダーとスムーズに対話するための土台
2)CABフレーム
<概要>
施策区分(Category)×達成度(Achievement)×比重(Balance) の3軸で施策を整理し、リソース配分を数値化するフレームワーク
<役割>
理想と現状との差分から課題を抽出し、リソース配分や優先順位を数値化することで関係者と合意を得る
3)3つのマップ
<概要>
組織の実行力や施策の実行状況からボトルネックを把握し、打ち手を決めるツール
<役割>
意思決定と合意形成時に具体的に何が不足しているか、どこを修正するかを話し合う
4)アウトプット
<概要>
マーケティング組織が取り組む施策と実行のための計画を合意するための成果物
<役割>
事業成果と組織成長を両立し、目標を達成するための具体的なプラン
そして、これは順番も重要です。
1)『8つの視点』で全体を抜け漏れなく考え、
2)『CABフレーム』で重点施策とリソース配分を合意形成し、
3)『3つのマップ』を使って組織や施策の現状を把握し課題を特定、
4)『アウトプット』としてマーケプラン/活動計画/アサインシートを作って実行する
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という一連のプロセスを進めるもらうことで、短期成果と中長期的な組織成長の両立を目指すため意思決定と合意形成が実現できます。
まずはじめに『8つの視点』について解説します。
これは、マーケティング組織が成果を出すために必要な、多様なステークホルダーと「意思決定×合意形成」をスムーズに行うにあたって押さえるべき重要な論点であり、対話における共通の土台となります。
8つの視点
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ステークホルダーとディスカッションをしていると「どの視点で議論しているのか」が曖昧なまま進んでしまうことってありますよね。
たとえば、目指すべき理想状態(基準)が曖昧なまま施策の詳細ばかりを話してしまったり、現状の課題(課題)を特定しないまま解決策(打ち手)を考えていたり……。また、どのような成果(アウトカム)を得たいかは話をしているものの、実現するための運用(オペレーション)が抜け落ちていたり……。
こうした状態では、議論が空回りし、せっかく準備した内容が伝わらず「準備不足」と指摘されるだけになり、結果として合意形成が遅れて施策の実行に悪影響を及ぼします。
私自身も「いまどの視点で話しているのか」をお互いに確認しなければ、良いディスカッションや合意形成は実現できないと痛感してきました。「そんなん指摘する側が絶対に有利やん!」と思うことが何度もありました。
実際に異なる視点で話していると、「何を気にしているのか」「どの詳細を確認したいのか」が不明確になり、認識のズレやフラストレーションが生じやすくなります。
こうした課題を解決するためには、8つの視点を軸に論点を整理し、指差し確認を行うことが効果的だと考えました。この視点を前提として共有することで、ステークホルダー間の認識合わせがスムーズになり、意思決定や合意形成を効率的に進められる“共通の土台”ができます。
『8つの視点』の構成要素
以下では、それぞれの視点が果たす役割を具体的に紹介します。議論や対話の中で「なにか噛み合っていないな?」と感じたら、どの視点が欠けているかをチェックしてみてください。
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それでは、(1)〜(8)をそれぞれ順番に解説していきます。
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1. 基準
<概要>
目指すべき「最高の状態」はなにか?を設定する視点
<役割>
組織や施策の方向性を定める起点となり、全員が目指すゴールを共有できる
私自身、理想が曖昧だと目指すべき水準が見えなくなると強く感じています。たとえば、経営者が野心的なゴールを掲げても、現場のマーケターが控えめな目標設定をしていれば、議論は噛み合いません。
また、「最高の状態」をどこまで追求し、そこに向かってどれだけのリソースや時間を投じられるかが合意できなければ、施策を詰める段階で「そんなに急には無理…」「もっと攻められるはず」といった摩擦も起こります。
一方で、理想を明確に「基準」として言語化しておけば、全員が「この理想を目指している」と納得し、迷いなく進められるようになります。高すぎるゴールを少し下げて現場の疲弊を防ぐのも、低すぎる目標を引き上げて成長を促すのも、「どの水準を狙うのかを合意するプロセス」があるからこそ可能だと思います。
組織や施策の方向性は、こうした『基準』の明確化がカギを握ります。ここをしっかり合意しておけば、課題や打ち手の検討時に目指すべき到達点がはっきりと見え、チーム全体が「これが最終ゴールだ」と腹落ちしやすくなります。
2. 課題
<概要>
現状と理想の間にある「できていないこと」を洗い出す視点
<役割>
解決すべき課題を明確化し、リソースを集中させる方向性を示す
「あれも課題だよね、これも課題だよね」と言われても、具体的にどれが最優先で解決すべき課題なのかが分からず、それに釣られて、あれもこれもと施策も散漫になりがちです。
たとえば、ブランド認知が足りないのか、営業との連携が弱いのか、商談化率の低さなのか、あるいは施策の企画に問題があるのか…。
もし、どこに不足があるのかをはっきりさせることができれば、「ここにリソースを集中的に投入しよう」と判断しやすくなり、やるべきこと・やらないことも決めやすくなるはずです。
また、課題は「理想状態と現状とのギャップ」にあります。そこを正確に見極めないと、単に「本人が気になっているだけ」のことを解決すべき課題に設定してしまいます。本質的には解決しなくてもいい問題にリソースを割いてしまうのは避けるべきですよね。
もし「それは本当に解決すべき課題なのか?」と疑問を感じたら、現場と認識をすり合わせ、実際にギャップが存在するかを再確認することが重要です。
3. 役割
<概要>
マーケティング組織や担当者が「なにの役割を担うのか」を明確にする視点
<役割>
組織間や担当者間で責任範囲を明確化し、施策の成功確度を高める
マーケティング組織や担当者の役割が曖昧だと、「これは自分たちの仕事ではありません!」と拒否しやすくなったり、他部署に対して「それはあなたたちの仕事でしょ」と責任を押し付けたり、互いに「お願いしてもやってくれない…」と不満が溜まる状況になりがちです。
さらに、役割の認識や合意ができていないと、会社や関係者が本当に期待している成果にも応えられなくなり、結果的に評価も得にくくなります。
こうした混乱を避けるには、自分たちの組織が何を担うのかを「自分たちの言葉」で明確に定義し、ステークホルダーとすり合わせる必要があります。特に、状況によって役割が変わりやすいマーケティング組織では、「指示を待つ」だけでは動きが遅くなります。
「私たちは○○という役割を担い、ここを責任を持ってやります」と、ミドルアップで提案していけるかどうかがカギを握ります。
4. 優先度
<概要>
限られた予算・人員・時間を「どこに集中させるか」を決める視点
<役割>
リソース配分を明確化し、施策実行時の迷いを防ぐ
「あれもこれもやるべきことばっかりだから全部やりましょう!と、言いたい気持ちはよく分かりますが、リソースには限りがありますよね。
やるべきことは山積みかもしれませんが、それぞれの優先度は異なるはずです。なにをいつまでに、どこまで目指すかによって最適なリソース配分は変わります。
もし重要そうなアクションをすべて実施しようとすれば、疲弊は待ったなしですし、どの施策も中途半端な結果に終わってしまう可能性も高まります。
一方で、優先度を明確にしておけば、ステークホルダーとの合意形成もスムーズになり、施策にメリハリも生まれます。
たとえば「まずは新規リード獲得に7割のリソースを割こう」と決めれば、みんながそこに注力しやすいですよね。逆に、リソースを割かない施策についても「なぜやらないのか」を話し合い、納得しておくことで、後からのトラブルを防げます。
もちろん、すべてにフルコミットが必要な局面もあるかもしれませんが、長期的に見ると、優先度を無視して走り続けると必ず無理が生じます。「なぜその順番なのか」「なぜそこを後回しにするのか」をしっかり議論し合意できると、全員が納得感を持って前へ進めるはずです。
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5. 打ち手
<概要>
「どんな施策を、いつ、どのように実行するか」を計画する視点
<役割>
施策を具体化し、計画的に実行できるようにする
言うまでもなく、どのような施策(打ち手)を実行するかが組織の成果に大きな影響を与えます。
ところがこの「打ち手」の検討には、本人が思っている以上に、その人の「好き・嫌い」や「得意・不得意」が無意識のうちに色濃く反映されがちです。
たとえば、イベントマーケティングが得意な人はセミナーやリアルイベント、展示会などを推しやすい一方、デジタルマーケティングが苦手だとSEOや広告運用、MAツール活用などを後回しにしてしまうかもしれません。
さらに、頭の中で無意識に「前提条件」や「制約」を考慮していることが多く、本来は無数に考えられる打ち手を「これは無理だろう」「やったことがないから不安だ」どとカットしがちです。
こうした無意識の取捨選択が続くと、気づかないうちに“選択肢を狭めた中”で一生懸命に打ち手を選んでしまい、最適解ではない施策に固執するリスクも高まります。
一方で、打ち手の話を一切せずに抽象度の高い会話ばかりになってしまうと、「理想や課題は分かったけど、具体的にどうするの?」という話が宙に浮いてしまいます。つまり、「打ち手」の話をする際は、個人の得手不得手や無意識の制限を取り払いつつ、抽象的な方向性とのバランスを取ることが重要です。
組織として適切な検討を行うには、社内外から幅広いアイデアを集め、やり慣れない施策でもメリットがありそうなら取り組む前提で考えることが必要です。逆に「やっぱり厳しい」となったら、その根拠を共有して納得感のある結論を出しましょう。
6. オペレーション
<概要>
決めた施策を継続・安定的に回す仕組み(ツール、体制、プロセス)を整える視点
<役割>
組織全体で成果を出すための仕組みを構築する
オペレーションの設計は、短期的な成果を急いで出すのか、しっかりと準備を固めてから動くのかで意見が分かれます。前者は「走りながら整備すればいい」という考えですが、現場が混乱し疲弊するリスクがあります。一方、後者は「準備万端にしてから進むべき」とすると、時間をかけすぎて機会損失に繋がる恐れがあります。
さらに、「成果を重視する」のか「組織力を強化する」のかによって、属人的運用をどこまで許容するか、ツールやルールをどこまで厳密に整備するかなど、議論すべきポイントが変わります。例えば、「属人的な運用についての是非」も、あえて特定の担当者に偏らせることでスキルやナレッジを早く蓄積する戦略も有効なので、一概には言えないテーマです。
求める結果に見合ったオペレーションをいつ、どの程度まで作るのかをすり合わせし、必要に応じて求める設計することが大切です。
さらに、「なんでも自動化してツール連携すれば解決する」や「ルールやガイドラインを設けて徹底すれば運用できる」という考えに偏るのも危険です。現場の負荷や「本当に必要か」の視点を忘れると、過剰な仕組みづくりでチームが疲弊したり、逆に肝心な部分を見落としてしまいます。
こうした背景を踏まえると、オペレーションというテーマは、「短期成果 vs. しっかり整備」「成果重視 vs. 組織強化」「属人的運用 vs. 一律ルール」「オートメーション vs. 必要最小限」といった複数の軸が絡み、意思決定や合意形成が難しい領域と言えます。
だからこそ、議論の際はこれらの背景をしっかり共有し、共通認識を作ることが重要です。
7. アウトカム
<概要>
施策によって「どんな結果を得たいのか」を定量・定性で示す視点
<役割>
成果を明確化し、施策の成功基準や状態を定める
なにかを提案するたびに「で、ROIは?」と定量的な成果を求められることって、よくあることですよね。もちろん、数字で示せる目標はわかりやすいし、そこから逃げてはいけないものでもあります。
ただ、組織力の強化や顧客との関係性の構築など、ROIだけでは判断できない要素を無視してしまうと、本来の目標設定の意味を失うのではないしょうか。
重要なのは「どんなアウトカムを目指すのか」と「そのアウトカムを目指す理由」をしっかりと考え、言葉にして説明することです。定量目標だからOK、定性目標だからNGというわけでもありません。よそから借りてきたようなKGIやKPIをそのまま設定しているだけでは、本当の目的を果たせないと思います。
「自分たちはどういったアウトカムを狙うのか」を自分たちの言葉で定義し、認識を擦り合わせてはじめて自分たちの目標になります。また、それを上司や関係者が「何を期待しているか」とすり合わせることで、意思決定や合意形成がスムーズになり、成果につながる取り組みを進めやすくなるはずです。
定量だけに偏るとメンバーの「熱意」が生まれにくいし、定性だけだと組織として進捗を把握しにくくなります。結局は、両方のバランスを取りつつ、「なぜそのアウトカムを目指しているのか」を言葉にして共有することが、目標設定の重要なポイントなのだと思います。
8. 評価
<概要>
実施した施策や運用・組織体制を「ふりかえり、次に繋げる」ための視点
<役割>
施策の成功要因や改善点を明らかにし、次の意思決定に活かす
施策を実行したら、それで終わりにせず「どんなアウトカムを得られたのか」「もし目標に届かなかった場合、なぜそうなったのか」「基準に定めた理想状態に向かって進んでいるのか」を振り返り、そこから次のアクションのヒントを得るのが「評価」です。
例えば「ここを修正すれば次はもっと上手くいくかも」「この成功要因を生かせる施策はないか」といった議論ができれば、評価がより建設的な場となり、新たなアイデアや改善策が生まれやすくなります。
さらに、目標としたアウトカムを定量・定性の両面で把握できれば、ステークホルダーとの会話もスムーズに行えるはずです。たとえ目標に届かなかったとしても、別のプラス効果があったかもしれません。
こうして得た知見をもとに、次にどこへリソースを集中するか、何を強化し、何をやめるかを決めれば、意思決定のスピードやチーム全体の納得感が一気に高まります。
「評価」を単なる結果や数字の報告で終わらせるのはもったいないというのが私の実感です。事業や組織の未来をより良くするステップとして捉え、定量だけでなく定性面も見ながら「何が起きたか、なぜ起きたか、次はどうするか」を共有できれば、チームの実行力は着実にアップしていくはずです。
<まとめ>8つの視点を俯瞰して、BtoBマーケティングを“迷いなく”進める
この8つの視点を使って、「いまはどこの話をしているのか」をお互いに確認しながら議論すれば、認識のズレで話が噛み合わないケースを減らせます。
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もし「なんだか空回りしている」「対話が噛み合わない」と感じたら、この8つの問いかけを思い出し、指差し確認してみてください。
おそらく、抜け落ちていた視点が見つかるはずです!
続いて、『CABフレーム』について解説します。
ステークホルダーとBtoBマーケティングについて対話するむずかしさ
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BtoBマーケティングに携わっている方のお話しを聞くと、「上司がマーケティングに詳しくない」「他部署の人と話が噛み合わない」といった悩みをよく耳にします。私も例外ではなく、これまでの経験の中でこういった場面に何度も直面してきました。
「それ、効果あるの?」と施策を一蹴されてしまったり、「今はこの施策を注力すべきだ!」とプランを提案しても「いや、こっちをやってほしい」と却下されたこともありました。
一方で、上司の目線に立ってみると「そうなるのも仕方ないよな」と感じる部分もあります。
たとえば、突然「マーケティング組織を見てほしい」と言われても、そもそも「単語レベルで何を言っているのか分からない」という状況なら、方針を示すどころか現状の把握も困難です。
「BtoBマーケティングに注力しよう」という号令が出ていても、どこから手をつければいいか分からないし、現場から提案された施策をどんな観点で評価すればいいのか見当がつかない、といった混乱が生じやすい状況なはずです。
その結果、マーケターとステークホルダーはそれぞれ「マーケティングは重要だ!」という認識を持っていても、役割や目的、目標などをすり合わせる対話が十分に行われず、お互いに愚痴をこぼしたくなるような状況を招いてしまいます。
特にBtoBマーケティングは製品やサービスが複雑で、リード獲得から商談化、受注に至るまでのプロセスも長いため、ステークホルダーが「マーケティング組織が何をやっているのか分からない」「なぜこの施策が必要なのか見えない」と感じるのも当然です。
そんなこともあり、予算が十分に確保できず、社内の理解を得る前にプロジェクトが頓挫してしまうケースも少なくありません。
改めて、マーケターやステークホルダーそれぞれの視点で感じていることを整理しました。きっと、このnoteを読んでくださっているあなたにも思い当たる節があると思います。
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マーケティングへの理解不足
どうしてこの施策が必要かを伝えようとしても、前提知識が不足していればイメージを持ってもらえない。結果として予算やリソースを確保できず、施策の実行よりも調整に苦戦する場合が多い。また、先行投資の必要性を理解してもらえず、「短期的な売上」につながらない提案は却下されがち。
情報や指標をどこまで見せればいいか分からない
リード数や商談数などの定量指標だけでは十分に説明しきれないが、マーケティング知識を要する話は相手から敬遠されやすい。どこまでかみ砕いて説明すべきかに悩み、準備が重荷になることも。
理想と現状のギャップが曖昧
頭の中で描いているロードマップを客観化できていないため、「本当にやる意味があるのか」と軽んじられてしまう。合意を取れても途中で方針転換が起こり、成果を出す前に頓挫することも多い。
複数ステークホルダーとの調整が複雑
経営、営業、プロダクトなどそれぞれの立場や役割によって、優先したい施策や利害がそれぞれ違う。視点や基準がバラバラで、なにから取り組むべきか混乱してしまう。
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マーケティング用語が多く、何が重要か分からない
リードジェネレーション、ナーチャリング、MQL、SAL、CAC、LTV…。こうした専門用語や指標が乱立しているため、何を基準に評価や判断をすればよいか見当がつかない。
リソースがどの程度必要かイメージできない
「どのくらい時間やコストをかければ、どの程度の成果が見込めるのか」が不透明なままだと、投資判断を下しにくい。大きな費用を投じたのに成果が見えなければ、批判されるのは自分かもしれないという不安がある。
どんな成果が出ているのか分からない
数値報告だけでは「なぜそうなったのか」「次にどう動くのか」が見えにくい。結果として「分からないものは否定する」姿勢になりがちで、専門用語が多い説明を聞くほど頭が混乱してしまう。
優先度が分からず、判断や指示がしづらい
マーケから「いま何が最重要か」を明確に示してもらえないと、結局どこに力を入れていいか判断できない。他のことが優先され、マーケ施策は後回しになるケースも多い。
『CABフレーム』を考えた背景
こうした課題を解決するのには、両者の間を埋める「コミュニケーションツール」が必要であると考えました。
ステークホルダーにマーケティングの細かいロジックを理解してもらわなくても、「どんな成果を目指していて、現状はどのくらい達成できているのか。そこから導き出した課題に対して、どういったリソース配分でなにをしようとしているのか」を見せることができれば、意思決定や合意形成をぐっと進めやすくなるはずです。
そうした背景から考えたのが、『CABフレーム』です。
「Category(施策区分)×Achievement(達成度)×Balance(比重)」という3軸で施策を整理し、理想と現状のギャップを可視化するだけでなく、課題解決の方針とそれらに取り組むリソース配分を明らかにするフレームワークです。
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詳細は後述しますが、「どの施策(C.施策区分)がどれだけできていて(A.達成度)、それぞれの課題解決にどのくらい注力するのか(B.比重)」という視点で整理します。
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相手がマーケティングの知識をあまり持っていなくても「どの施策がどのくらい実行できていて、これからどこを強化するのか」を一枚のシートで把握することが可能になります。
ぜひ、こちらのシートで実際に書きながら読み進めていただけると理解が深まると思います。
それでは、『C.施策区分』『A.達成度』『B.比重』それぞれがどのような役割を果たすのか、次で詳しく見ていきましょう。
まずは『施策区分』からです!
C.施策区分(Category)
『施策区分』とは、BtoBマーケティング組織が実行する施策の「目的」で分類したものです。多様な施策を大きな目的ごとに整理することで、施策の全体像を俯瞰して把握しやすくなります。
ここでは「ポジション形成」「リード獲得」「商談機会獲得」「オペレーション強化」の4つで分けました。
ぜひ、みなさんが実施している施策をひとつひとつ思い浮かべながら、どの区分に当てはまるかを考えてみてください。
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ポジション形成(Brand Positioning)
ブランドやサービスの認知拡大や、市場環境に応じた自社の位置づけを強化するとともに、事業の社会的意義を発信する
リード獲得(Lead Generation)
ターゲットに応じた施策やコンテンツ、アプローチ方法を組み合わせて見込み顧客を獲得する
商談機会獲得(Opportunity Creation)
顧客の課題を解決する提案やスムーズな購買支援を行い、良好な関係を築くことで商談機会を獲得する
オペレーション強化(Marketing OperationOptimization)
持続的かつ安定的に成果を生み出す仕組みを構築・強化し、運用効率を高めて施策の効果を最大化する
BtoBマーケティングの施策を4つの区分に分けることで、以下のようなメリットがあります。
BtoBマーケティング全体を網羅
ブランディングや認知(ポジション形成)、新規見込み顧客の獲得(リード獲得)、適切なコミュニケーションを経て商談機会をいただき(商談機会獲得)、施策を継続的に運用・改善する仕組みづくり(オペレーション強化)という流れで、BtoBマーケティングの主要な領域をひととおりカバーできます。包括的でシンプル
4つに絞り込むことで、複雑な施策群をシンプルに整理できます。自社のフェーズや戦略によっては変更が必要な場合もありますが、まずはこの4つに当てはめるだけで全体像を把握しやすくなります。ステークホルダーとイメージを共有しやすい
「どこに力を入れるか(リード獲得か、商談機会獲得か)」といった議論がしやすく、上司や他部署にとっても「いまなにを強化すべきか」がイメージしやすいため、意思決定や合意形成に役立ちます。短期成果と中長期成長を両立
リード獲得や商談機会獲得は短期から中期の観点、ポジション形成やオペレーション強化は中長期の観点を含むため、成果と成長の両面を意識して施策を検討しやすくなります。
BtoBマーケティングの施策は多種多様ですが、4つに分けてみると全体像を俯瞰しやすくなると思います。特に、BtoBマーケティングの施策に対して馴染みのない方にとっては、イメージしやすいのではないでしょうか。
また、一見すると同じ施策でも、その主目的によって施策区分は異なる場合があります。たとえば、同じ「展示会に出展する」という施策でも「リード獲得」を主目的とするケースもあれば、業界のリーダーとして権威や技術力を示す「ポジション形成」を主目的に出展するケースもあるはずです。
もちろん、複数の目的が混ざったり、複数の成果につながる施策もあると思いますが、まずは主目的で分類してみてください。多くの場合、どれか1つの区分に振り分けられるはずです。
『施策区分』を決めたら、次はCABフレームの『達成度』です。
施策の達成度を段階的に定義し、どの施策がどの程度できているかを把握することで、理想と現状の差が明確になることで、具体的な課題や優先順位を考えやすくなります。
A.達成度(Achievement)
では、CABフレームにおける『達成度』について解説します。
『達成度』は、施策区分で分けたBtoBマーケティング施策がどの程度実行できているかを、段階的に評価するための指標です。
具体的には、S・A・B・C・Dの5段階で表し、Sが理想的な状態、Dが必要最低限の状態を示します。それぞれの段階には「どんな状態であればSか」「どんな状態ならBか」といった定義をあらかじめ設定し、それを客観的な基準として判断できるようにしています。
それぞれの段階は、下記のようなイメージです。
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S:理想に近い状態
施策が一貫して実行されており、ほぼ理想に近い形で回せています。
A:かなり整っている状態
主要な部分は実行できていますが、一部に改良の余地が残ります。
B・C:途中段階で課題が見える状態
必要な要素のいくつかが不足しているため、まだまだ改善の余地があります。
D:最低限の状態
施策は部分的に行われているものの、大幅な改善が必要です。
施策区分ごとの『達成度』の詳細は次のとおりです。
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ポジション形成
ブランドやサービスの認知拡大や、市場環境に応じた自社の位置づけを強化するとともに、事業の社会的意義を発信する
達成度
S:施策が一貫して実行され、市場環境を反映した自社の位置づけが整理され、事業の社会的意義が計画的に発信されているという状態
A:施策が複数実行され、市場環境を考慮した自社の位置づけが部分的に整理され、事業の社会的意義が一部で行われているという状態
B:施策が一部実行されているが、市場環境を考慮した自社の位置づけが曖昧で、事業の社会的意義の発信が断続的であるという状態
C:施策が散発的で、市場環境が十分に考慮されておらず、自社の位置づけや事業の社会的意義の発信がほとんど行われていないという状態
D:施策が実行されているが、市場環境を考慮せず、自社の位置づけや事業の社会的意義の発信が不足しているという状態
リード獲得
ターゲットに応じた施策やコンテンツ、アプローチ方法を組み合わせて見込み顧客を獲得する
達成度
S:複数のチャネルで施策が幅広く実行され、ターゲットに応じた個別化されたアプローチが行われているという状態
A:複数のチャネルで施策が実行され、ターゲットごとの工夫が一部で行われているという状態
B:いくつかのチャネルで施策が実行されているが、ターゲットごとの工夫がなく、一部の施策に偏っているという状態
C:施策が限られたチャネルで散発的に行われており、ターゲットの特性が十分に考慮されていないという状態
D:施策が一部で実行されているが、チャネルやターゲットの特性があまり考慮されていないという状態
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商談機会獲得
顧客の課題を解決する提案やスムーズな購買支援を行い、良好な関係を築くことで商談機会を獲得する
達成度
S:施策が一貫して実行され、顧客の課題やニーズに合わせた個別提案が行われ、一人ひとりに対する積極的なアプローチが体系化されているという状態
A:施策が計画的に実行され、顧客の課題やニーズに対応した提案が一部の顧客に対して行われているという状態
B:施策が実行されており、顧客の課題やニーズを考慮した提案やアプローチが断続的に行われているという状態
C:施策が散発的で、顧客の課題やニーズを反映した提案やアプローチがほとんど行われていないという状態
D:施策が実行されているが、顧客の課題やニーズを考慮した提案やアプローチが不足しているという状態
オペレーション強化
持続的かつ安定的に成果を生み出す仕組みを構築・強化し、運用効率を高めて施策の効果を最大化する
達成度
S:施策実行のプロセス・ツール・データ活用が標準化され、継続的な効果測定と改善が一貫して行われているという状態
A:施策実行の基盤(ツール/データ/プロセス)が大枠で整備されており、効果測定や改善が一部の施策で計画的に行われているという状態
B:ツールや仕組みが部分的に導入されているが、データ活用やプロセス改善が断続的で属人的になっているという状態
C:施策実行の仕組みが十分に整備されておらず、一部で試行錯誤が行われている程度で、全体的な効率化が進んでいないという状態
D:オペレーション強化の取り組み自体はあるが、全社的にはほとんど共有・定着していないという状態
シートを見ながら、自分たちのマーケティング組織の現在の『達成度』を選んでみてください。はじめはあまり難しく考えず、おそらくこれくらいかな?で選んでいただけるといいと思います。迷ったら厳しく評価してください。
『達成度』がもたらすメリット
「なんとなくできている」「あまりできていない」などの曖昧な表現ではなく、客観的な段階表現を採用することで、主観的な「できている/できていない」から脱却でき、ステークホルダーとの間はもちろん、チーム内でも共通認識を持ちやすくなります。
たとえば、「ポジション形成はBだ」という認識を共有できれば、「ではBからAに上げるには何が不足しているのか?」という具体的なアクションを話し合えます。
さらに、定義に基づいて現状を比較すると「リード獲得はいまDだから、この部分を強化してCに近づけよう」といったように、次のアクションを具体的に考えやすくなります。
また、施策ごとに現状をS~Dで一覧化すれば、どこに改善や強化のポイントがあるのかが一目で把握できるため、施策間の優先順位を判断しやすくなります。ステークホルダーとの話し合いでも主観的になりにくく、「客観的に見ると現状はCなので改善が必要ですね」といったコミュニケーションが可能になります。
このように『施策区分』ごとに『達成度』の現状と、いつまでにどこまで目指すのかを考えることで、組織としてのあり方や、施策における理想状態を実現するためのロードマップを描きやすくなります。
参考例として、とあるマーケティングチームの状況を下記のように整理してみました。
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とあるマーケティングチームの現状と課題
ポジション形成:C → Bを目指す
現状:SNS発信はあるがブランドメッセージが統一されていない
次のアクション:認知されたい姿を言語化し、差別化ポイントを明確にする
リード獲得:B → Aを目指す
現状:複数チャネルで顧客を獲得できているが、チャネル最適化が不十分
次のアクション:各チャネルの訴求メッセージを最適化し、リードの質を高める
上記のように、全体を俯瞰で見てみると「次の達成度に引き上げるために何を実行すればいいか」が自然と見えてくると思います。
『施策区分』と『達成度』で見てみると、BtoBマーケティング施策の全体像が捉えやすくなったのではないでしょうか。
上記で示した「達成度」の定義や、「施策区分」の4分類は、あくまでも参考例です。たとえば「S」の基準をもっと高く設定したい場合や、「B〜C」の定義を細かく変えたいケースもあると思います。
ぜひ、自社の状況やステークホルダーの意見を踏まえつつ、柔軟に調整してみてください!
その際、「S の状態は具体的にどんな状態か」をステークホルダーとの間やチーム内ですり合わせておくと、後々の合意形成が格段にスムーズになります。自分たちなりの「理想像」が明確になると、短期・中長期の目標設定やロードマップ作成がより実践的になり、組織全体が同じ方向を目指しやすくなります。
『達成度』についてのまとめ
長くなってしまったので、まとめます。
「達成度(Achievement)」を設けることで、主観に頼らず施策のレベル感を共有できる
S(理想)とのギャップが分かるため、具体的な改善アクションを考えやすくなる
施策間の優先順位もつけやすく、意思決定や合意形成がスムーズになる
定義や段階は、自社の状況やビジョンに合わせて柔軟にカスタマイズしてもよい
『達成度』から課題を導きだすアプローチを実践してもらうと、BtoBマーケティングの施策の実行度合いが「いまどれくらいのレベルでやれていて、ここからどこを目指すのか」をステークホルダーも含めて全員が腹落ちしやすくなると思います。
ぜひ一度、自社の施策をS~Dに当てはめてみて、どのように引き上げていくかを話し合ってみてください。
それでは次に、『比重』の解説です。
B.比重(Balance)
『比重』とは、組織が取り組む施策に対する注力度(予算・人員・時間)を示すための指標です。施策区分や達成度とあわせて考えることで、どの施策をどの程度優先するのかを数字を用いて共有できるようになります。
たとえば「リード獲得に30%、商談機会獲得に20%、オペレーション強化に40%」と割り振るだけで、いま何に注力するのかが直感的に伝わるはずです。
比重は「どこに力を入れたいのか」を表す「注力度」として使うのがポイントです。たとえば、「この時期は運用基盤の整備を最優先で進めよう」という組織の方針を「オペレーション強化に40%の比重を振る」と決めて示すイメージです。
もし「物理的なリソース配分」として使うと、施策のボリュームが大きい領域が高い数値になってしまいやすくなります。それでは本当の優先度や必要性を表現できず、本来の意図とは違った『比重』になってしまいます。
このように、優先度や必要性に応じて『比重』を割り振ることで、マーケティング組織の重点テーマを明確にできます。
たとえば、私が勤める株式会社EVeMのマーケティング組織でも時期によって『比重』は異なりました。
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マーケティング組織の比重の変遷イメージ
入社当初は「マーケティングの基礎環境の構築」をテーマに、Salesforceのキャンペーン設計やHubSpotの導入・活用を中心とした「オペレーション強化」の比重を高めようと思っていました。少ない人数で初期フェーズだからこそ良いオペレーションを作れるはずだ!と思っていたんです。
ですが、すぐに方針転換しました。端的にいうと、EVeM全体の状況を見た時にそういったことは経営からは求められていませんでした。「オペレーション強化」が大事ではない、という意味ではなく、大事なのは百も承知の上で、今はやらないという意思決定をした、という感じです。
そもそもEVeMのサービスはまだまだ立ち上げフェーズだったので、市場や顧客に対してどのようなメッセージで価値を伝えるのかも検証段階でした。事業理解と顧客理解を深めながら自分たちが提供している価値を言語化し、それを商談の現場でひとつひとつクイックに検証していく動きの方が求められていました。なので、『比重』を「ポジション形成」と「商談機会獲得」に寄せて施策を実行していました。
現在は、マーケティングチームもセールスチームも人数が拡大してきたので、「オペレーション強化」の重要性も高まってきましたし、そこにリソースを投下できるようになってきました。CRM/SFA・HubSpotの活用度を高め、マーケティング施策の結果を明らかにするためのキャンペーン設計やそれに付随するオペレーションの構築などに取り組んでいます。
ただ、それも今のこの瞬間は・・という感じで、明日には注力すべきテーマが変わるかもしませんし、それに応じて『比重』も変わりますし、変えないといけません。
このように、『施策区分』『達成度』『比重』を見直しつつ、フェーズに合わせて変えていけば、組織全体で合意を得やすくなると実感しています。
これを読んでくださっているみなさんも、「あの時は○○の比重が高かったな、今は○○の比重が高いな」などと思い浮かべられると思います。やるべきことをテーマとして掲げて、きちんと『比重』と連動させることができれば、その実現も果たしやすくなります。
一方で、『比重』の細かい数値にこだわりすぎる必要はありません。
たとえば「5%と10%では倍違うけれど、実際のリソース量の差がどれだけ大きいのか」という点に囚われてしまうと、『比重』で考えたいこと、明らかにしたいことの本質から外れてしまいます。
大切なのは、「どの施策区分に多くの注力度を置くか」という大きな方向性を示すことです。もし設定した比重がチームの理想とかけ離れているようなら、そこを議論の出発点にして合意形成を進めていけば大丈夫です。
組織として「どれだけそこに力を入れたいのか」を『比重』を通じて可視化できると、組織全体で“いま何を重視すべきか”を意思決定、合意形成がしやすくなるので、ぜひ試してみてください。
『CABフレーム』を使って「意思決定×合意形成」をよりスムーズに
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ここまで、CABフレームがどのようにBtoBマーケティングの施策を整理し、合意形成をスムーズにするのかを解説してきました。
改めてまとめます。
『C.施策区分(Category)』で「何をやるか」をシンプルに分類し、『A.達成度(Achievement)』で「どの程度できているか」を段階的に評価し、さらに『B.比重(Balance)』で「どこにどれだけ注力するか」を示す。
この3つの要素を組み合わせるだけで、複雑になりがちなBtoBマーケティングの全体像を俯瞰できるようになります。たとえば、リード獲得の達成度がAで順調なら、『比重』を高めずに現状維持にするかもしれません。
逆に、オペレーション強化の達成度がDで厳しい状況なら、「ここに注力しよう!」と比重を上げる形で合意を取るといったやり方ができます。あるいは「D」なので強化しないといけないことは十分に理解しつつ、あえてその他の施策に比重を寄せることもできますね。
そうやって『CABフレーム』全体を見ながら、優先度や施策の方針、重要なアクション、そして組織としてのロードマップを決めていってもらえるといいかな、と思います。
この『CABフレーム』を使うことで、マーケティング組織がなにを目指し、どのように動いているのかを誰もが把握しやすくなります。ステークホルダーとの対話で共通言語を持てるため、施策に対する納得感が高まり、意思決定や合意形成もスムーズに行えるようになります。
『3つのマップ』でBtoBマーケティングの全体像を掴む
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CABフレームを活用して、BtoBマーケティング施策の方針や優先度を整理してきました。
ただ、あくまでもCABフレームで決まるのは「なにを、どれくらい、どの優先度でやるか」という大枠です。実際に行動を起こし、成果につなげるには、もう一歩踏み込んで、改善すべきボトルネックを特定し、どう改善するか、どんな手順で施策を進めていくか、どのように役割分担し、いつまでに実行するかを、意思決定と合意形成を行いながら進めていく必要があります。
ここからは、CABフレームとの連動を意識しながら実行面を整理する『3つのマップ』とその活用方法をご紹介します。
この3つのマップで紐解くことによって、「なにを実行するか」「どのように実行するか」が明確になるはずです。
拙著『最高の打ち手が見つかるマーケティングの実践ガイド(翔泳社)』から引用しながら解説します。
プロセスマップ
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プロセスマップは、マーケティング組織の立ち上げから成果を創出するまでの具体的なプロセスを提示し、それぞれのフェーズ(「立ち上げ期・立て直し期/初動期/成長期」)ごとに必要なアクションをA〜Pなどの形で整理したものです。
マーケティング組織の「実行力」を効率的かつ効果的に増強し、最終的に成果を生み出す組織づくりを進めることを目的にしたもので、「組織全体が、いつ、どのアクションを重視すべきかを俯瞰できる」点がメリットです。
・いま自分たちの組織がどの段階にいるかを把握できる
・次に実行すべきアクション(A〜P)の優先度を決めやすい
・関係者と指差し確認をすることで、組織づくりのロードマップに対する合意を得やすい
マーケティング組織を立ち上げることになった、あるいは立ち上げたが「何から手をつけてよいかわからない」「次に何をすればよいのかわからない」といった悩みを持たれている場合は、参考にしていただけるのと思います。
『プロセスマップ』活用における重要なポイントを2つ解説します。
プロセスマップを活用するうえで重要なポイントが2つあります。
1つ目は、プロセスは一度通ったら終わりではなく、何度も何度も全体を塗り直すようにプロセスをなぞるイメージを持つことです。ここで提示しているプロセスは、それぞれを完ぺきに仕上げなければ次に進めないようなものではありません。むしろ、あらゆるものを同時並行で進めていかざるを得ない状況の中では、重要度の低いアクションにリソースを投しすぎてしまうことにもつながります。
環境や状況が変化するたびにプロセスマップを見ながら全体像を確認し、取り組みが足りていないところはどこか? 次に何をすべきか? 注力すべきアクションは何か? を見定めるのに活用していただければと思います。ただ、迷ったら番号が若い順に着手するようにしてください。
2つ目は、関係者と一緒に指差し確認をすることでプロセスそのものへの理解と、目的や方法の共通理解をつくることです。
現場でよく、マーケティング組織と関係者間でマーケティングに関する知識や経験にギャップがあることで、実行しようとしているアクションに理解や協力が得られないという問題が起きます。信ぴょう性や納得感という意味でいえば、とくに未経験者で構成されたマーケティング組織の場合は説明にかけるコストも膨らみがちです。説得材料の1つとしてこの「プロセスマップ」を活用することで、説明を含めた調整にかけるコストを圧縮しスムーズな合意形成を図ることが可能になります。
皆さんがイチから資料に起こす必要はないので、ぜひ有効活用してください。
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特に、組織が成長期のフェーズを迎えると組織の規模や解決すべき課題や
改善すべき指標が広範になって行きます。施策の難易度があがり、量が増加するためマネジメントの重要性が増していきます。
施策の成果が頭打ちになってきた・・と感じるようになったら、マーケティングの戦略や戦術を見直すことも大事ですが、「マネジメント強化」の観点での施策も検討してください。
キーポイントマップ
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キーポイントマップは、リードジェネレーション(見込み顧客の創出)からLTV最大化(アップセル・クロスセルも含む)までの全体像を一連の“流れ”と“指標”で整理し、自社の現状を数値・指標ベースで構造的に捉えるためのマップです。
「キーポイントマップ」を左から右へ順に眺めながら、用語の意味や位置を確認するだけでマーケティング活動の全体像の把握が大きく進むと思います。また、それらに連動するように〝指標〟を整理していますので、それぞれの位置関係についても確認してください。一連の流れで構造を理解し、指標の位置関係も踏まえたうえで自社の状況を構造的に捉えられるようにできれば、改善すべきボトルネックを見つけやすくなります。
マーケターとして、その全体像を頭の中にイメージできるようにしておき、かつぞれぞれの言葉の意味もしっかりと理解しておくことが大切です。
ただ、言葉の意味や定義はとても大事なことですが、必要以上に気にしすぎたりこだわりすぎると目的を見失ってしまうこともあります。もっとも重要なのは自分たちの言葉の意味と使い方を定めて共通認識を作り、その上で「意思決定×合意形成」を行うことです。
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『キーポイントマップ』活用における注意ポイントをお伝えしておきます。
「キーポイントマップ」のような完ぺきな構造化は非常に難しいことも併せてお伝えしておきます。マーケティング組織として目指すべき理想像の1つではありますが、過度に構造化や分業体制の導入に固執したり、指標ごとに正確に数値を取ろうとするあまりに高負荷なオペレーションを組んだりすると、肝心の施策の実行が後手に回ってしまいます。
続いて「指標」の解説です。
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指標を扱ううえで重要なのは指標ごとに「定義」と「抽出条件」を明文化することです。人によってその指標の認識や定義が異なったり、抽出する人によって数字が違ったりすると、指標を利用した現状把握や仮説設定、アクションに悪影響を与えてしまいます。
「定義」と「抽出条件」は誰が見てもわかるように明文化し、必ず関係者との合意のうえで決定するようにしましょう。とくに、「ターゲットリード」や「フォローリード」「商談」「有効商談」などの定義は、後工程の人たちが前工程の人たちの仕事を評価する側面もある(リードや商談機会を受け取った人が渡した人にフィードバックする)からこそ、あいまいにならないよう注意してください。評価や振り返りに影響してしまいます。
KGI・KPI の設計に悩まれる方はまずは「キーポイントマップ」の指標に当てはめて考えてみてください。事業貢献(受注・売上・粗利)に責任を持つことを前提に、自分たちの組織の実行力を冷静に見極めたうえで、自分たちで管理できてかつ短期的に成果を上げやすいものを指標にすることをオススメします。
ただ、その一方で KGI・KPI はあくまでも自分たちが実行しようとしている戦略やアクションによって大きく変わることも忘れないでください。「キーポイントマップ」で整理した指標は参考にしつつも、「自分たちの取り組みの目標とその進捗を図るための指標はいったい何か?」を考え、取り組んでみて、そこから学びを得て改善していくことのほうが大切です。
定量的な目標の数字にとらわれて、その影響でアクションの優先順位がうまくつけられなくなったり、組織が疲弊してしまったりしては元も子もありません。
アクションマップ
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アクションマップは、組織全体の「実行力」を捉えて活用し、増強を図るにあたって注意すべきポイント(1~6)を整理したものであり、実際に施策を推し進める際に活用するためのマップです。
アクションマップで示したポイントは、組織の「実行力」を形成する要点です。画期的な企画を考えることができても、組織に「実行力」がなければ思い描いたような成果を出すことも難しいでしょう。もちろん、オペレーションやマネジメントが整っていない組織では、中長期的かつ持続可能性の高い成長や成果創出には期待できません。
テクノロジーの進化や競合の参入など、外部環境の変化がある中で、組織が成果を出すためには、内部の状況変化にも適応せねばなりません。より高い成果を目指す場合は、施策の幅を広げるためのチャレンジが常に求められ、課題を捉えて解決するためのアクションも次第に高度なものになっていきます。
具体的なアクションを検討する際も、実際に施策を推し進める際も、「アクションマップ」を見ながら実行力の礎となるポイントを俯瞰で捉えるだけで足りていないことやすべきことに気づけると思います。
『アクションマップ』を活用いただくことで、下記のメリットがあります。
・施策の企画や実行、関係者とのコミュニケーションにおいて注意すべきポイントがわかる
・成果創出や課題解決、組織や個人を成長させるために実行すべきマネジメントについて理解できる
「マネジメント」はとても広範な領域を指す言葉ですが、ここではマーケティング組織として施策を実行していくために必要なことだけを抜粋しています。成果の頭打ちや組織の疲弊を感じるようになったら、次の問いを立ててみて、組織の状態を見直してみてください。
・「メンバー」のスキルやWILL・CAN を把握し、適切な役割に人材をアサインし、「組織体制」を構築できているか?
・メンバー1人ひとりが持つ「感情」ともうまく向き合いながら、「ディレクション」することでアクションを実行と成功に導けているか?
・関係者への適切な「レポーティング」を行うことで、意思決定に必要な情報を報告・相談・共有できているか?
・メンバーの成長を促すための「期待と評価」を伝えているか?
・さらなる成果創出を目指した「改善活動」のサイクルを回せているか?
『プロセスマップ』『キーポイントマップ』『アクションマップ』それぞれを解説してきました。
次は『CABフレーム』と『3つのマップ』を連動させて、最高の打ち手を考えるためのワークを紹介したいと思います。
<ワーク>「思考のシンプル化」で最高の打ち手を見つける
ここでは、『CABフレーム』で設定した方針を具体的な実行計画に落とし込むための、5つのステップをご紹介します。なお、ここではすでに『CABフレーム』が作成されているものとし、ステップ(2)から詳しく解説します。
1)CABフレームで「施策区分、達成度、比重」を整理する
2)プロセスマップで組織フェーズを把握し、必要なアクションを確認する
3)キーポイントマップでボトルネックを特定する
4)テーマ別に事実を集める
5)アクションマップの「見直しポイント」を確認し、打ち手を見つける
こちらもシートをご用意しています。作成しながら読み進めていただけるとうれしいです。
2)プロセスマップで組織フェーズを把握し、必要なアクションを確認する
『プロセスマップ』は、「マーケティング組織を立ち上げから成果創出まで、どう成長させるか」を時系列で示しているため、組織フェーズの自己診断に使います。
立ち上げ期なら「自社理解や顧客理解をまず徹底しよう」、成長期なら「マネジメントや改善サイクルを強化しよう」といった形で、『CABフレーム』で決めた施策を実行する下地を固めるためのアクションを明確にします。
3)キーポイントマップでボトルネックを特定する
『キーポイントマップ』では、リードジェネレーションから商談化、LTV最大化までを一連の流れとして整理し、それぞれの指標を確認していきます。
数値データを活用しながら「いまどこに課題がありそうか」を探ります。例えば、『CABフレーム』で「リード獲得」の強化を決めたとしても、実際には複数のチャネルからの集客は順調で、商談化のステップに問題があるという根本原因に気づくことが可能です。
4)テーマ別に事実を集める
リードジェネレーションからLTV最大化まで、それぞれで実施できていること、実施できていないことの事実を集めていきます。数値だけでなく、定性的な情報も重要です。
まずはセルフワークでそれぞれが書き出して、その後、グループで発表するのをおすすめします。自分が書けないところがあることを自覚できたり、それぞれの主観だからこそ見えてくる課題があります(下記参照)。
発表後は持ち寄った事実を一つに集め、自分たちの現状を明らかにします。
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5)アクションマップの「見直しポイント」を確認し、打ち手を見つける
下図の『見直しポイント』を見ながら、集めた事実を元に事業の成果や組織を成長させるために取り組む打ち手を見つけます。その際は、自分たちの役割や機能に閉じずに「全体最適」の観点でやるべきことを考えることが重要です。
ひとつのテーマに絞り、そこから最大3つを✓するようにしてください。
例えば「リードナーチャリング」から「コンテンツの活用度」「フォロー対象の条件」「コミュニケーションログの収集、管理方法」などです。こうすることで、自分たちの思考をよりシンプル化し、自分たちのやるべき「もっとも重要なことはなにか?」を考えることができます。
このように打ち手を検討することで、『CABフレーム』のアクションの方向性や重要アクションが考えやすくなります。
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ここまで、『CABフレーム』と『3つのマップ』を連動させ、打ち手を考えるワークをご紹介しました。
BtoBマーケティング組織として「事業の成果」と「組織の成長」を両立させるには、多くの試行錯誤や学習が必要です。
「思考のシンプル化」によって意思決定や合意形成の土台を整えれば、試行錯誤のスピードが向上し、筋の良さそうな打ち手を数多く試すことができるようになります。こうした一連の取り組みを愚直に進めていくことが「最高の打ち手」を見つける唯一の近道だと考えています。
『3つのマップ』のより詳しい解説は、拙著『最高の打ち手が見つかるマーケティングの実践ガイド』をご覧いただけるとうれしいです。というか、買ってください!本当にお願いします!ぜひ、チームのみなさんで買ってください!お願いします!!!!!
それでは、最後に、『アウトプット』となる『マーケティングプラン』『活動計画』『アサインシート』について、解説します。
アウトプット(マーケティングプラン・活動計画・アサインシート)
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それでは『アウトプット』について、解説します。
ただ、申し訳ないのですが、このnoteでは『マーケティングプラン』には触れず、『活動計画』と『アサインシート』のみ解説します。あらかじめご容赦ください。
マーケターのみなさんは、日頃から定量目標を達成するための施策をまとめた『マーケティングプラン』(呼び方は組織によって様々ですが)を作成していると思います。半期や年間といった単位で、どの施策をどの程度実行し、どれくらいのリードや商談を生み出すのか、予算やスケジュールを明確にした計画が記載されているのが一般的です。
しかし、どんなに優れたマーケティングプランを考えることができても、それだけで事業の成果は出ません。なぜなら、プランを遂行し成果を出し続けるためには、実際に施策を動かす「組織の実行力」の確保と成長が欠かせないからです。
また、短期的に成果が上がっても、組織が成長していなければ、次の半期や来年度には成果が頭打ちになってしまうケースも多々あります。
そこで重要になるのが「定量目標を達成できる組織の状態」を明確にし、その状態へどう近づくかを考える『活動計画』です。
たとえば現場を見渡すと、施策は決まったのに「担当者に必要なスキルが足りない」「仕組みや基盤が整っていない」「リソースが足りない」など、組織的な課題がたくさん出てきます。これらを放置したままでは、マーケティングプランで掲げた目標を達成するのは非常に困難です。
こうした背景から、マーケティングの施策と目標を達成できている「組織の状態」は、あえて切り離して考えてみてほしいと思います。そうすることで、「今、自分たちの組織にどんな課題があるのか」「どのように組織を成長させればいいのか」が考えやすくなります。
改めて、『マーケティングプラン』と『活動計画』は、成果を出すための両輪のようなものです。それぞれが担う役割を整理することで、両者を分けて考える理由が見えてきます。
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まず、『マーケティングプラン』とは、基本的に以下のような内容で構成されます。
・目的/ゴール
期間内に○○件の商談を創出するなど、定量的な数値目標
・施策内容
施策一覧、予算、スケジュール
・KGI/KPI
リード獲得数、CPA、CTRなど、施策別にモニタリングする指標
・試算
必要な数値や転換率、施策ごとの成果シミュレーション
続いて、『活動計画』は、以下のような項目で構成されます。
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・実行力の成長目標
組織がどのような状態を目指すのか、つまり「~という状態」をBeで示します。Do(~する)ではなく、Be(~という状態)で表現しましょう。
・課題/GAP
理想的な状態と現状との間にあるギャップを洗い出し、何ができておらず、何が不足しているのかを明確にします。
・方針
抽出した課題に対して、解決に向けた大まかな方向性を示します。
・アクション
課題解決のための具体的なアクション項目を列挙します。ここでは、各アクションの担当者や期限を明確にすることが望ましいです。
下図は、立ち上げたばかりのマーケティング組織における1Qの活動計画例です。
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定量目標は「商談機会獲得30件」です。
それを達成するためのマーケティング施策とは別に、その目標を達成するために、組織の「実行力」はどういう状態に成長させる必要があるでしょうか。
参考例として挙げたのは次の3つです。
・商談機会獲得のための施策をイチから企画し、実行できている、という状態
・定量目標に対する進捗が明らかになっており、想定とのギャップに対するふりかえりが実施できている、という状態
・これからの目標達成に必要なノウハウとリソースを補うための段取りが組めている、という状態
もし仮に、「商談機会獲得30件」という定量目標に届かなかったとしても、上記のような「実行力の成長目標」を達成していれば、組織としては確実に成長していると言えます。そうなれば、いずれ目標を達成できるだけの実行力が身についていくはずです。
繰り返しになりますが、『マーケティングプラン』は定量目標を達成するための具体的なマーケティング施策を示す計画です。ただ、それだけでは成果を出すこと、成果を出し続けることは難しいです。そこで必要になるのが、「定量目標を達成できる組織の状態」を明確にし、現状とのギャップや必要なアクションを整理した『活動計画』です。
この両輪をうまく回すことで、短期的な成果だけでなく、中長期的な組織の成長を実現し、より大きな成果を生み出せるようになります。
活動計画の作り方
ここでは、活動計画を立案するための大まかなステップをご紹介します。
ぜひ、やってみてください!
1)「実行力の成長目標」を設定する(Beの形で示す「~という状態」)
活動計画を立てる最初のステップは、定量目標を達成できている「理想的な組織状態」を具体的に描くことです。
例えば「リード獲得施策を自分たちで計画し、実行し、成果を測定して次のアクションに結びつけられている状態」といった具合に、定量目標を達成できている組織の状態を明文化します。行動(Do)ではなく状態(Be)で示すことで、ゴール像が曖昧にならず、メンバー全体の共通認識が持てるようにすることがポイントです。
2)課題の抽出:優先度と影響度で絞り込む
次に、「実行力の成長目標」と現状を比べると、「ウェビナー運営の方法がわかっていない」「トスアップの基準が決まっていない」「MAツールを活用しきれていない」など、課題候補がいくつも浮かび上がるかと思います。
すべてに手を着けようとするとリソースが分散し、結局どれも中途半端になりがちです。優先順位や難易度、インパクトを考慮し、最大で3つくらいまでに絞り込むようにしましょう。
3)アクションの方針と具体的なアクションを整理する
抽出した課題に対して、それらを解決する方向性(方針)を示し、具体的なアクションを洗い出します。方針は抽象度が高めでも構いません。「ウェビナー運営のオペレーションを強化し誰でも運営できる仕組みをつくる、という方向性」という程度でもOKです。
あまりに具体的な方針だとタスクとなってしまうし、逆に抽象度が高すぎるとメンバーが戸惑ってしまいますので、程よい抽象度で方針を示すようにしましょう。
4)活動計画のサイクル:定期的な見直しでアップデートする
『活動計画』は一度作って終わりではありません。四半期や半期ごとなど、一定のサイクルで振り返って「目指す状態にどれだけ近づけたのか」「新たに浮上した課題はないか」を確認し、必要に応じて計画をアップデートします。
『マーケティングプラン』をリプランするタイミングと合わせると良いと思います。
続いて、施策やプロジェクトにメンバーをアサインするために作る『アサインシート』を解説します。
アサインシート
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マーケティングプランや活動計画で決まったアクションを、実際に「誰が、どの仕事を、どれだけのリソースで実行するのか」まで具体的に落とし込むのが『アサインシート』です。担当者やリソースの割り振りまで明確になっていなければ、せっかくの計画が絵に描いた餅になってしまいます。
誰がどの施策やプロジェクトを担当するのかが明確になるほど、「具体的にどのような体制で、いつまでに成果を出すのか」が社内外に説明しやすくなり、計画倒れを防ぎやすくなります。
こちらもシートを作成しながら読み進めていただけると、より理解が深まりますし、すぐに実践していただけると思います。
『アサインシート』には大きく分けて、次の7つの要素があります。
1)メンバーに関する情報(役割・スキル・WILLなど)
2)「期待している行動変容」や「期待している成長」
3)割り当てたい業務区分とその比重(どのくらいの工数や意識を割くか)
4)アクションの方針と重要アクション
5)アサインされる施策やプロジェクト
6)アサインタイプ
7)施策やプロジェクトの重要アクション
ここで重要になるのが、メンバーを理解度を上げるための「スキル」「CAN」「WILL」の3つの視点です。
スキル・CAN・WILL
メンバーが持っている得意領域や過去の経験を指します。何をどの程度できるのかを客観的に把握するために、同僚や上司からのフィードバックも活用して評価するとよいでしょう。たとえば「SEOに強い」「イベント運営経験が豊富」などが挙げられます。
スキルレベル をもう少し定量的に示すのがCANの評価です。
同じ「SEOが得意」でも、過去に軽く手がけたレベルと、専門家としてチームをリードできるレベルでは大きな違いがあります。CANの段階を自分や周囲からの評価で確認し、配置ミスマッチを防ぎましょう。
1.未経験
その分野やタスクに関する経験がないか、または浅く、基本的な知識や技能を身につける段階のレベル
2.経験
基本的な知識や技能は身についているが、実践経験が限定的なため、経験を積むことでスキルを向上できるレベル
3.専門化
特定の分野で深い知識と豊富な実践経験を持ち、他者を指導できるレベル
4.体系化
専門知識や経験を体系化し、組織に貢献できるレベル
WILLは、メンバー1人ひとりのキャリア志向や仕事への意欲です。「強みを生かしつつ新しい領域にも挑戦したい」「分析業務は好きだけど、営業連携の場は苦手」など、メンバーのモチベーションを把握し、適した役割をアサインする材料になります。ただし、WILLを尊重するあまり、組織の役割や必要とされる仕事がまったく担われなくなるのは本末転倒です。組織として何が必要かという視点と、メンバーのWILLを上手にすり合わせることが重要です。
期待と評価をテキストで伝える
メンバーに対して「期待している行動変容」や「期待している成長」を明確に伝え、評価の際は、その期待に対してどの程度達成されたかを「納得感」のある内容で伝えることが重要です。
なぜその行動が重要なのか、どのような成長を見込んでいるのか、またそれは組織がどのような成果を出すための成長なのかを具体的に説明したうえで、メンバーの意見や感想を聞いてお互いに合意することが大切です。
メンバーのことを普段からよく見て、よく会話し、誠実な態度で接するようにしていないと「評価」はうまく機能しません。組織のマネジメントにおいて「期待と評価」を伝えるプロセスは、メンバーの成長を促し組織全体の実行力を高めるために不可欠です。
『業務区分』とリソース配分の考え方
『業務区分』とは、マーケティングに関連する業務を大きな領域ごとに分類し、誰がどこにリソースを割くかを考えやすくするための枠組みです。
マーケティング組織ではさまざまな業務が存在しますが、それらを大きく5つの領域に分けることで、それぞれの役割と業務を連動させやすくしたり、リソース配分を把握しやすくなります。
『業務区分』は、下記の5つに分類しました。
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◼︎事業理解
事業モデル・収益構造・競合環境・市場動向などを深く把握し、自社がどんな価値を提供しているのかを明確に理解する活動
◼︎顧客理解
ターゲット顧客のニーズ・課題・行動・心理・購買プロセスなどを、一次情報収集や調査を通じて解像度高く把握する活動
◼︎戦略策定
事業理解・顧客理解を踏まえ、目標達成に向けたマーケティング戦略を描き、優先度や実行計画を明確にする活動
◼︎オペレーション構築・運用
マーケティング施策を円滑に実行するためのプロセス・ツール・スケジュール・リソース管理などを整え、継続的なPDCAサイクルを回す活動
◼︎施策実行
コンテンツの企画や制作、展示会への出展やイベント開催などの具体的な施策を行い、進捗・パフォーマンスを測定し改善を図る活動
『CABフレーム』と同様に、マーケティング業務の各区分ごとに「どの領域にどれだけ力を入れるか」を示すため、『比重』を設定しましょう。たとえば、「施策実行に50%」「顧客理解に20%」とすることで、どの領域をどれだけ重視するかが明確になります。
ただし、この『比重』は単なる工数の配分ではなく、現時点でどこに注力したいかという意思表示でもあります。短期的な成果を重視する場合は組織全体で「施策実行」の比重が高くなり、中長期的な視点で組織を成長させたい場合はリーダーや特定のメンバーの「戦略策定」や「顧客理解」の比重を高める必要があります。組織全体を俯瞰し、それぞれのメンバーごとに実行と成長のバランスを見極めながら、状況に応じて『比重』を調整することが大切です。
実際、日々の業務に追われるとどうしても「施策実行」にリソースが偏りがちです。たとえ「事業理解」や「顧客理解」が重要だと認識していても、具体的なアクションに結びつかず、タスクや期日が明確な「施策実行」に意識やリソースが奪われてしまいます。その結果、「事業理解、顧客理解は大事だ!」と言いつつも、実際には何も手を付けられていないという事態に陥ります。
したがって、『業務区分』の比重は、現状や今後の戦略に基づいて、マーケティング組織のリーダーが全体を俯瞰しながら意思を持って決定することがとても重要です。
施策・プロジェクトへアサインする
『アサインシート』を作成することで、各メンバーを具体的な施策やプロジェクトに割り当て、マーケティングプランで検討した施策の実行だけでなく、「実行力の成長目標」を実現するためのアクションも担当を割り当てられます。
アサインシートがしっかり整備されていると、以下のメリットがあります。
具体的な体制が明確になる
誰がどの業務をどの程度担当するのかが一目で分かるため、各メンバーは自分の役割と責任を明確に理解できます。また、経営者や他部署への説明も容易になります。合意形成がスムーズになる
施策やプロジェクトへのリソース配分の根拠が明文化されるため、ステークホルダー間での認識のずれが解消されやすくなります。組織全体の実行力が向上する
各メンバーの配置や育成計画が明確になることで、組織全体が一体となって短期的な成果と中長期的な成長を実現しやすくなります。
アサインを行う際には、どのアサインタイプにするか、またどの業務にどれだけのリソースを割くかを十分に検討し、注意点やフォロー体制も整えておくことが重要です。これにより、組織全体で一貫した実行力の向上と各メンバーの成長が期待できます。
アサインタイプは以下の3つのタイプがあります。
◼︎ポテンシャルアサイン(WILL重視)
・メンバーの意欲や興味を優先して役割を割り当てる
・モチベーションが高く、自発性と学習意欲を期待できる
・スキルが不足している場合はサポート体制や学習の場を用意する必要あり
◼︎堅実アサイン(CAN重視)
・メンバーの経験や能力に見合った役割へ配属する
・リスクが少なく、短期的な成果や生産性向上が期待できる
・ただし興味やWILLが低いと、モチベーション維持に課題が発生することも
◼︎ベストアサイン(スキル×意欲の両面)
・スキルレベルも高く、本人のWILLも強い領域に配置する
・高いパフォーマンスを発揮しやすく、組織・個人ともにメリット大
・ただし、メンバーの正確な把握と、チームバランスへの配慮が必要
常に「ベストアサイン」ばかりになるわけではありません。むしろ、できることからアサインを考えると「堅実アサイン」が多くなってしまう場合もあります。
どのタイプを選ぶかは、組織の短期目標、中長期の人材育成、そして本人の熱量を総合的に考慮することが大切です。ポテンシャルアサインをうまく活用して新たなチャレンジを促すことで、計画的な成長を促すこともできます。
最後に、『アサインシート』は、『マーケティングプラン』で計画した施策や『活動計画』で描いた「定量目標を達成できる組織の姿」を実現するための最終アウトプットです。人の配置や育成計画まで具体的に落とし込むことで、計画倒れを防ぎ、「事業の成果」と「組織の成長」の両立を実現していきましょう。
BtoBマーケターの心構え
ご紹介してきた『BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム』は、あくまでもツールでしかありません。それを扱うBtoBマーケターの心構えが伴っていなければ、やはり成果を出すことは難しいと思います。
そこで、約8年間BtoBマーケターとして仕事をさせていただいて、「これは大切だな」と感じている心構えを2つお伝えして終わりにしたいと思います。
1つ目: 組織全体の方向性と連携を重視して動きを変える
BtoBマーケターは、単に自分の好きな施策や得意分野に固執するのではなく、事業や組織の方向性や経営戦略、そしてステークホルダーとの連携を常に意識し、その動向に合わせてその動きを柔軟に変えることが求められます。
私も偉そうにBtoBマーケターと名乗らせていただいてますが、経験を積めば積むほど「BtoBマーケターとは何をする人なのか」がどんどんわからなくなっています。ただ、あえて言うなら「BtoBマーケティングとはすなわち商売そのものであり、BtoBマーケターとは商売人である」ということなんだろう、と今は解釈しています。
「これってマーケの仕事なの?」と思わず渋い顔をしたくなることも多々ありますが、BtoBマーケターの役割を「商売人として自分たちの商いで稼ぎを産むこと」と定義するなら、それらは全て「自分がやるべき仕事」になるのだと思います。そんな心構えを持てると、あらゆる仕事に自分なりの「なぜこの仕事をやるのか」という意義や意味を見出せるのではないかな、と思います。
もしかしたら、BtoBマーケターとしての平常運転状態は「やりたいことが全くできていない状態」かつ「解決しないといけない課題が山のようにある状態」なのかもしれませんね。
2つ目:「Disagree But Commit」の精神を持つ
さまざまな施策やプロジェクトに巻き込まれることも多いとおもいますが、目的も内容も段取りもまとまっていないものが多いですよね。「ざっくりすぎるやろ」とか「いやいや、やるってこと以外なにも決まってないやん」と、思わず愚痴をこぼしたくなる時もあります。というかほとんどの仕事ってそんなもんですよね。やれって言われたから取り組みを進めていったのに「これ意味ある?」とか言われたら「知らんがな。じゃあお前が考えろよ。」くらいは言いたいですよね。
そんな状況の時は、まず「それを形にするのが自分の仕事である」と覚悟を決めましょう。うだうだ言わない。言ったとしてもできるだけ早く切り替える(深く反省)。
もし意見を求められる機会があれば、相手のために自分の考えや疑問、反対意見、改善案をしっかり伝えましょう。絶対に避けるべきは、なんとなく同調することです。曖昧に「いいんじゃないですかね」と言っても、相手の思考は深まらず、事業や組織の進展にはつながりません。
ただのポーズで反対意見を言う必要はないと思いますが、もしも肯定的な意見を持っていたとしても、相手のために反対意見を述べることには価値があると思っています。
そしてなにより大切なのは「Disagree But Commit」の精神です。
たとえ意見が対立しても、最終的に決定された内容には全力で従い、実行に移す覚悟が求められます。自分の考えと違うことに対して文句ばかり言ったり、「わかってない」と批判するだけでは、ただの評論家になってしまい、扱いづらい存在になるだけです。
目的を持って反論し、ディスカッションを通じてお互いの理解を深めた上で、決定されたことには覚悟を持って全力コミットする、そんな心構えが大切だと思っています。
おわりに
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『BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム』をご紹介してきました。
このフレームワークは、私がこれまでの約8年間、BtoBマーケティングの現場で実践してきた経験に基づき、戦略の策定から実行、そして組織の成長までを一貫して捉えるために作成しました。
その核となるのは、全体を俯瞰してどこに注力すべきかを明確にし、その上で具体的なアクションプランと人材のアサインメントを策定するという一連のアプローチです。
特に『CABフレーム』については、EVeMが提供しているマネジメントナレッジから絶大なるインスピレーションを受けています。
EVeMは「マネジメントができている状態」という曖昧なものを「執行・活用・伸長・連携」という独立した目的とその理想状態を『基準』として明確にすることで、現状とのGAPから課題をあぶり出し、解決していくというアプローチを提唱しています。
『基準』を知った時から「これはBtoBマーケティングでも全く同じアプローチができるかも知れない」と感じていましたし、大袈裟かも知れないのですが、自分がEVeMに来た理由の大きなひとつなのだと確信しました。
残念ながら書籍には入れることができなかったのですが、今回のnoteでようやく実現できました。
マネジメントができている状態を定義する『基準』は次のとおりです。
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ベンチャーマネージャーには執行・活用・伸張・連携の4つの独立した目的があり、それぞれに資する活動が求められます。
そして、その活動の総和が「全社の中長期的な成長に貢献するマネジメント」であります。
つまり、マネジメントができている基準とは何なのか?と問われると、スライドにある「4つのBe」になります。
執行であれば、チームの成果を出すための重要な業務を見極め、それを執り行い(Do)、その結果、チームの成果を出すための重要な業務が見極められ、執り行われている”状態”(Be)になり、その状態が実現できれば、チーム*成果につながる(アウトカム)という構造です。
以下、活用・伸張・連携も同様に、DoをすればBeになり、それがアウトカムに繋がります。
4つのBeが実現できれば、求めるアウトカムにつながるという構造です。
『基準』については、上記のnoteでその詳細を解説しています。33Pにわたって解説しているホワイトペーパーも出しているので、よかったらダウンロードしてみてください(唐突の告知)
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改めまして、『BtoBマーケティングにおける「思考のシンプル化」フレーム』は、ステークホルダーとの対話や意思決定、合意形成を円滑にするコミュニケーションツールであり、マーケティング組織が「最高の打ち手」を見出すための思考ツールとして考えました。
ご紹介したフレームは全てを使う必要も、全部の項目を埋める必要もありません。必要な部分だけでいいですし、すでに何らかのアイデアが生まれてやる気満々になっていただいたなら作成する必要すらないと思っています。
作ること、埋めることが目的になって肝心のアクションが遅くなってしまわないように気をつけてもらえればと思います。
みなさんが成果を上げるための日々のお仕事に、このフレームがお役に立てることを願っています。
最後までお読みいただいた方はもちろん、一部分だけでも読んでいただいた方、本当にありがとうございました。少しでもお役に立てたのであれば、スキやシェアをいただけるととてもうれしいです。
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改めまして、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!