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嘘を付けない人


初夏、扉を開けるとそこは、ガラクタに埋もれている真っ暗な倉庫だった。廊下の光が倉庫に差し込み、正面の古びたソファの真上に飾ってある絵画を照らしていた。彼女は中へ忍び入り、それに手を伸ばす。そのキャンバスには無惨な色の絵の具が塗りたくられ、淡い色のビーズがその上に散りばめられていた。その絵は彼女に数年前の生活をありありと思い出させた。彼女はその時の自分がまだ好きになれなかった。彼女は初めて愛おしいという情けをかけてみようとした。それが本心ではないということを知っておきながら。

深い溜め息が埃を払う。まだ今の私には早かった、来年また会わなくてはならないと思った。彼女には愛がまだ分からないのだ。

彼女は扉をバタンと閉じて光の中に戻った。

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