好き短:「肺の壁トンと叩いてターンする夏を見送る深呼吸 夏至(相馬絵梨子)」

好きな短歌の感想を書くシリーズ、本日は相馬絵梨子さんの作品です。Twitterで相馬さんをフォローさせていただいているのですが、Twitterを眺めていたら突然飛び込んできました。

肺の壁トンと叩いてターンする夏を見送る深呼吸 夏至(相馬絵梨子)

夏至を肺という臓器で感じる。とても重いですよね。作者特有の感覚なのだろうなと思います。肺の壁を叩いていく夏を見ながらやっと深呼吸ができるわけですから、作者にとって夏はとても暑く息苦しいものなのでしょう。

まだ夏は続きどんどん暑くはなるのですが、長い季節の中で夏至はひとつの折り返し地点。作者からみると、夏がターンをして泳ぎ去る、そんな特別な日なのでしょう。なんとなく夏は背泳ぎでゆっくり去っていくイメージですね。私の勝手な解釈ですが。

この作品、作者にとっての夏のつらさを描いているはずなのですが、「とんとたたいてたーん」と澄んだタ行の音が続くところがあり、音をきいているとなんとも軽やか。そして泳いでいる人と「水」のイメージが重なって清涼感すら感じます。夏から一瞬離れた静寂な空間に飛ばされるような感覚もあり、なんとも不思議なうただなと思います。



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