アナロジー思考のトレーニングに特化したノート術
少し自慢話になりますが、「深井さんの書く文章って、着想が変わっていて面白いですね」と褒められることがあります。同時に、「どのように書いたらそのような文章になるのですか?」とも質問されます。
私の答えは、「文章の書き方にこだわっているうちは、着想の変わった文章は書けない」です。
文章は思考(考えたこと)を表出したものです。秀でた文章を書きたければ、人よりも秀でた思考をしなくてはいけません。書き方にこだわっているうちは、それはできません。つまり、鍛えるべきは文章力ではなく、思考力なのです。
では、どのようにしたら思考力を鍛えられるのか。私が実践していることの一つに「ノートを書く」があります。
かの天才レオナルド・ダ・ヴィンチはメモ魔で知られ、ノートが7200ページ残っています。発明王トーマス・エジソンもノートを3500冊残しています。優秀な人間がノートを大量に書いているのは単なる偶然ではありません。「書く」という行為が思考に影響を与えることを経験的に知っているからです。事実、科学的な裏付けがいくつも出てきています。
とはいえ、どのようにノートを書いたらいいのか。
私も同じような疑問にぶち当たりました。「最も思考力を鍛えられるノートの書き方とはどのようなものだ?」と。それから様々なノート・メモ術などを試し、試行錯誤を重ねていきました。そして独自のノート術『ジーニアスノート』の開発に至りました。
ジーニアスノートは、
アナロジー思考を中心に鍛える
ノート術『ジーニアスノート』は、アナロジー思考を中心に様々な思考力を鍛えることができます。
※アナロジー思考とは、二つの事物の間に本質的な類似点があることを根拠にして、一方の事物がある性質をもつ場合に他方の事物もそれと同じ性質を持つであろうと推察すること。
なぜ、アナロジー思考を中心に据えているのか。それは、アナロジー思考こそ、最強の思考法と確信しているからです。
書籍『アナロジー思考』(著 細谷功)の帯にもこう記されています。
戦略思考、仮説思考、フレームワーク思考、ラテラルシンキング…
すべての思考は、類推(アナロジー)から始まる。
アナロジー思考は、数ある思考法(力)の一つではありません。すべての思考法(力)の王様なのです。
仕事柄(コンサルタント)、様々な思考法を学んできたからこそ、アナロジー思考の凄さが分かります。そして私は魅せられたのです。世界の見え方がガラリと変わるアナロジー思考に。
私が魅せられたのは、5年以上前です。YouTubeにその痕跡が残っています。
https://youtu.be/raJ_lASom0E?t=1726
その後もブログで何度かアナロジー思考について言及しています。
■ 2016年1月8日「類推思考とハイブリッド思考を身に付けろ」
■ 2017年4月3日「抽象化思考力を鍛える3つの方法&類推思考力を鍛える4つの方法」
■ 2018年01月30日 「アナロジー思考を鍛えるブログ記事の書き方と事例」
■ 2018年12月10日「類推思考こそ、最強の思考法である」
このnoteでもアナロジーを扱った音声を配信しています。
※noteでお伝えしているのは、音声だけで理解できるアナロジーです。複雑なものも考えていますが、音声でそれを伝えるのは難しいと思い、ここでは公開していません。
おわかりになりますか? 如何に私がアナロジー思考に心酔しているかが。かれこれ5年以上、興味を持ち続けてきたのです。そしてアナロジー思考を中心に様々な思考力が鍛えられるノート術が生まれたのです。
アナロジー思考を鍛えるノート術『ジーニアスノート』はこちら。
もう少し、アナロジー思考について解説していきます。
アナロジー思考には、抽象化思考が欠かせない
アナロジー思考をするうえで欠かせない思考があります。それは「抽象化思考」です。実は、アナロジー思考は抽象化思考を内包した概念です。というのは、アナロジー(類推)をするには必ず抽象化というプロセスを踏む必要があるからです。私の感覚では、アナロジーの成否の7割近くは抽象化が占めている感じです。正しく抽象化できなければ、正しくアナロジーすることはできません。
抽象化思考を学ぶうちに、抽象化には二段階のレベルがあることに気づきました。それは、「表面の抽象化」と「構造の抽象化」です。たとえば「Aの考えは、水素よりも軽い」といった比喩は、「特徴」を一つだけ抽象化し、それに似たものを探して喩えているわけです。
しかしこれが「構造」となると難易度がぐっと上がります。抽象化する特徴(要素)が2つ以上になるからです。
2つ以上になると何が難しいかというと、
・2つ以上の特徴の抽象レベルを揃えること
・2つ以上の特徴の関係性も考慮に入れること
・抽象化するときも同レベルで抽象化すること
などです。これらを行わなくてはいけません。
また、難しいだけでなく、間違ったアナロジーをしてしまう恐れもあります。しかも、誰もその間違いを指摘してくれません。
しっかりと手順を踏んで抽象化思考、そしてアナロジー思考を鍛えていく必要があるのです。ほかにも留意点はいくつもありますが、横道にそれるのでここでは割愛します。ただ言えることは、いくつもの留意点を踏まえながら抽象化思考力とアナロジー思考力を鍛えていかなくてはいけない、ということです。だからこそ、ノートの力がいるのです。
アナロジー思考を鍛える『ジーニアスノート』
あなたのアナロジー思考力をチェック
さてここで、あなたのアナロジー思考力のチェックをしてみたいと思います。これから出すお題に対して、アナロジーを用いて答えてください。
【お題】「学歴が高い人は、なぜ就職に有利なのか」
アナロジーすべきは、主柱となる「学歴」ですよね。ここをどう料理するかで腕が問われます。
正解というわけではないのですが、アナロジーを用いた私なりの答えを以下に載せておきます。私の回答を見る前に、一度考えてみてください。
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学歴が高い人は、なぜ就職に有利なのか。
学歴は、ビジネス能力と必ずしもイコールな関係ではありません。しかし、企業は学歴の高い人を求めます。なぜなのか。
理由の一つとして、学歴は基礎学力が高いことの証明だからです。それを前提にアナロジーをするなら、学歴(基礎学力の成績)は、陸上競技の成績に当たります。
陸上競技はスポーツの基礎となる動作・運動(走る・投げる・跳ぶ)を競う競技です。陸上競技の成績が良ければ、大抵のスポーツで活躍することができます。
あなたが、あるスポーツ選手をスカウト(または採用)する人間だとして、陸上競技がオールAの人とオールCの人、どちらを誘いたいですか? 当然、オールAの人ですよね。経験ゼロの人間をサッカーに誘うにしても、100メートルを10秒台で走る人と13秒台で走る人なら、10秒台で走る人に声をかけるはずです。
基礎能力が高ければ、多少の技術の差はカバーできます。漫画『スラムダンク』の桜木花道が、素人ながら高校生トップクラスの選手と渡り合えたように。漫画の世界を持ち出さなくても、運動能力の高い素人が、経験者を負かしてしまう例はいくらでもあります。
学歴も同様に、好成績を収めた人間を採用しておけば、業界に必要な知識や技術を教えた際に飲み込みがはやいのです。
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こんな感じでアナロジーをしてみました。
もちろん、これが絶対に正しい答えと言うつもりはありません。ほかにも、学歴を優先する理由はあるでしょうし、私とは違ったアナロジーがあるかもしれません。とはいえ、こういったアナロジーができれば、人に分かりやすく説明することができますよね。
もし子供から「なんで勉強しないといけないの?」「学歴ってなんで重要なの?」と聞かれたときに、「自分がスポーツ選手をスカウトする人間だったとして、陸上成績の高い人と低い人どっちに声をかける? 学歴ってのは、それと同じだよ」と言えば、納得させやすいのではないでしょうか。
アナロジー思考が与えてくれるものとは
世の中には種々様々な思考法や発想法があります。そのどれもが“問題を解決する”か“アイディアを出す”かのいずれかに帰結しているはずです。アナロジー思考があれば、この両方を得ることができます。
なぜなら、今自分が抱えている問題の構造が見えれば、似た構造を持つ別分野から答えを引っ張ってくることができますし、アイディアが欲しければ他業種のアイディアを持ってくることも可能だからです。
アナロジー思考が身に付くことによって日常的に体感する事象があります。それは、比喩や喩え話が出せるようになる点です。比喩や例え話を使って話せるようになれば、「分かりやすい」「上手い喩えだ」と言われるようになり、共感や納得が得られやすくなります。先ほど、学歴についてのアナロジーをしましたが、あのような喩え話がぱっと浮かぶようになるのです。
逆説的に言えば、アイディアがポンポンと出たり、喩え話が上手な人は、アナロジー思考が得意な人と言えるでしょう。たとえば、島田紳助さんと上田晋也さんがそうです。彼らは比喩や例え話を用いて笑いを誘います。お二人がもしビジネスの世界にいたらアイディアマンになっていたことでしょう。
最後に、書籍の引用を紹介して終わりにします。
書籍『アナロジー思考』(著 細谷 功)
単なる「雑学博士」と発想力が豊かな「アイデアマン」を分けるもの、それがアナロジー思考である。19世紀のアメリカを代表する哲学者・心理学者で、夏目漱石や西田幾太郎にも影響を与えたと言われているウィリアム・ジェームズは「才能の最良の指標はアナロジーに気づく能力である」という言葉を残している。(p1-2)
書籍『新版 これからの思考の教科書』(著 酒井 穣)
2つの異なるものごとの間に「結びつき(共通点)」を見つけ出すのは、発想法の原点です。一見なんの関連性もないような2つのものごとの間に強烈な結びつきを発見するような
「成功体験」が、脳を活性化させることもわかっています。
日常的には、何らかの複雑な事象を説明するために比喩を使うことが誰にでもありますが、
特に比喩に長けているということは、それ自体が異なるものごとの間に共通点を見つけられる力の証明でしょう。アリストテレスも、優れた比喩が使えることを才覚の証としていました。(p131)
アナロジー思考を高めるジーニアスノートにご興味があれば、こちらのページもご覧ください。アナロジー思考を鍛えるノート術
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