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#3【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】
【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。
クローゼットの中にはイチのこれまでが詰まっていて、小学校の時に使っていたリュックや習字道具の鞄まで出てきたので懐かしくなった。
「どれも思い出があるから、ショルダーだけ外すの、勿体無いな……」
手に取ると使っていた当時の記憶が蘇るから、バラすのが惜しくなってしまった。みんな一や祖父が買ってくれたものなのだし。
「よし。パーツだけ買うことにしよ」
イチはさっさと諦めると、引っ張り出した鞄達を元通りに仕舞った。部屋を出て階段を下りながら、手芸店ってどこにあったっけ、と考える。
けれども一昨日久しぶりに外出したばかりだし、バスに乗って遠くの店に行くのは無理だ。「どーしよっかな……」
駅前にも小さな手芸店があったのを思い出し、土曜日に未央が来る時に買って来て貰おうかな、と思いついた。
『未央様、お願いがあるのですが』
そんな風にふざけたラ◯ンメッセージを送ったら、すぐに既読になった。いつでも反応の速い弟である。
『なになにー?』
『土曜に来る時、駅前の手芸屋で鞄のショルダーベルトのパーツ買って来てくれへん?』
『手芸屋? そんなんあったっけ?』
『ア◯コの一階の、コーヒー豆売ってるとこの隣にあるんや』
実はT唯一のデパートSはア◯コビルという巨大商業ビルに入居しているテナントで、ビル全体の半分くらいの面積を使っているが、残り半分は直営の専門店街になっているのだ。その一角にコーヒー豆や輸入食料品を扱う店があって(有名チェーンのカ◯ディみたいなやつ)、その斜向かいに個人経営の手芸店がある。
場所を説明すると、『りょ』と返って来たのでよしよし、と満足した。フットワークの軽い弟を持つと本当に助かる。
「それじゃ何か書きますかあ〜」
イチはルンルン、とご機嫌でソファへ行き、ノートパソコンを広げた……。
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