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#2【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村さむらと出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

「チョレギ〜、チョレギ〜、チョチョチョチョ、チョレギ〜」
 また月曜がやって来た。イチは実家のリビングへ出勤してから二時間くらいは執筆に集中していたが、小腹が空いたので最近ハマっているチョレギサラダ﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅を作ることにした。焼肉屋でお馴染みのあれ﹅﹅である。
 サニーレタスにわかめ、きゅうりに長ネギ、それから韓国海苔、糸唐辛子を使う。サニーレタスには葉酸がたっぷり含まれているから妊婦にぴったりだ。ネギは白髪ネギにして水にさらしてから、レタスを千切ってきゅうりも輪切りにする。それからごま油に醤油、酢と砂糖、すり下ろしニンニクを混ぜたものとワカメを加え、混ぜ混ぜ﹅﹅﹅﹅したら海苔と糸唐辛子を載せて完成だ。
「あー、シャキシャキしてうめえ! ごま油が堪りませんなあ」
 自画自賛しながらパクパク食べていると、聞いていた祖父がくすくす笑った。それに気付き、「じーちゃんも食う?」と聞いたら「もうすぐ昼飯だからな」と言って首を横に振った。
 昨日と打って変わって、今日はよく晴れていた。半袖のTシャツを着ていてもちょっと暑いから、久しぶりに扇風機でもつけようかな、と思ったくらいだ。
 まだ佐村も夏と同じ半袖のYシャツで出勤している。年によって衣替えの時期は区区まちまちだから、よく服装選びに失敗して汗だくになったり、寒くて困ったりする。
「ま、暫くは空調完備の部屋で引き籠もり生活ですから……」
 今はとにかく絶対安静だし、手術をしたらまた動けなくなるだろう。前途多難だが、こんな風に割と楽しく過ごしているのは、あれこれ悩んでも仕方が無いと諦めているからだ。
 たっぷり時間があったから、ムラケンに頼まれた仕事も早早はやばやと終えてしまった。もう一つくらい受けても良かったが、体調がどう変わるか分からないので遠慮した。
「マジで動かな過ぎだから、ストレッチでもするか……」
 仕事柄、長時間同じ姿勢でいるから、かなり筋肉が硬くなっている。幸い頭痛がしたり気分が悪くなったりしたことは無いが、肩を触るとガチガチである。
「うおっ」
 腕をぐるっと回してみたら、「バキッ」と結構大きな音がした。これはマズいな、と思いながら反対の腕も回してみたら同じ音がしたので苦笑する。
 そんな風にあちこち関節を鳴らしながらストレッチしていたら、フローリングの床に置いてあったスマホの通知音が鳴った。
 見ると佐村からのラ◯ンメッセージで、もうそんな時間か、と思い壁の時計を見る。丁度、針が天辺てっぺんに来たところだった。
『お疲れ! お昼食べた?』
『まだ。ストレッチしてた』
 今日の昼食は、昨日佐村が多めに作っておいたポテトドリアである。とても美味しかったから、また食べるのを楽しみにしていた。
『今日は夜、何食べたい?』
 そんなメッセージが送られて来て、イチはうーん、と唸ると『おさかな』と返信した。

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