詩を書きたいby南雲すみ

詩を書きたい

しかし言葉が浮かばない

濁った葡萄酒を眺めるように

ひたすら私の心にあるのは

空の薬莢

湖の空白に佇む音

詩を書きたい

雨の音をききながら

もう一度デバイスに立ち向かって

あるいは

まったく見たことのない赤色を手で掬って

カツ コツ キ タ タタ カツ

近づく足音に

恐れながら

詩を書きたい

あらゆるものの狭間で

例えば

瞳や

恍惚や

焚き火や

ジムノペディ

あらゆる美と誠実な狭間でもがくように

詩を書きたい

髪を梳き

鼻歌を歌って

クジラとフクロウの夢を見たあとで

笑わないサンタ

空を飛ばない龍

フィクションのないリアルに浸かり

ようやく動き出した手に逆らわず

私はいま

詩を書きたい