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体験レポート「ぶんしんするし しんぶんするし展」


みなさま、はじめまして。
松本に来て4年目、信州大学にて経済学を学んでいる浅川雄介と申します。アルバイトスタッフとして働く松本の本屋兼喫茶店<栞日>を通じて、藤原印刷の藤原隆充さんに出会い、以来なにかとお世話になり続けております。今日は開催中のイベントのレポーターとして、その一部をお伝えしたいと思います。


北アルプスの雪は次第に融け、田んぼには水がはられる美しい時期。緑豊かな時期を迎える安曇野で「ぶんしんするし しんぶんするし」という小さなイベント展示が始まりました。

松本に本社を構え「心刷」というビジョンのもと、印刷の可能性を信じ、挑戦し続ける藤原印刷は、2020年から「いんさつはたのしい」という企画をスタートさせました。これは、展示やトークイベントを通して、沢山の人々に紙や印刷をより身近に感じてもらおうという企画です。

第2弾となる今回のイベントは、安曇野の詩人であり、グラフィック・デザイナーのウチダゴウ氏らとともに、詩・建築・印刷などのアナログ媒体を、リアルに体感する展示会を設けました。

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 [水がはられた田んぼと北アルプス。雨が降っていたため稜線が歪んで反射している]


森の深くに佇むギャラリー「してきなしごと」の扉を開くと現れる、四方が銀色に光ったなんとも奇妙な空間。

入るのに少しためらいさえする部屋に入ると、鏡のように自分が写る。けれどもちょっと歪んで見える。なんだか目が回るような壁に囲まれます。

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[中に入ると、この壁に囲まれる]


そこでこれまた奇妙な新聞紙を受け取る。インクの匂いを漂わせるその紙には、鏡文字でひらがなの文章が記されていて、それだけでは何が書いてあるのか検討もつかない。

鏡文字ならば、身体の周りを取り囲む「鏡のような壁」に写してみると、初めてその詩は本当の姿を見せてくれます。

詩を読み終わる頃には、この空間にだんだん慣れてきて、壁が本物の鏡のように平らではなく、歪んでいることに気づきます。壁には変な形をした自分の身体が写ります。ちょっと楽しくなってきて、部屋を動き回りながら、手を伸ばしてみたり、しゃがんでみたり。手が長くなった僕、頭が3つになって見える私、そんな姿を見ていると、本来の自分はどんな形だったのかよくわからなくなってきます。まぁ、それもいいかと、身体を動かし続けると、展示室はいつの間にかダンスホールになったようです。


話を少しだけ寄り道させて下さい。してきなしごとを訪れた後、僕は大学の講義をオンラインで受講しました。オンラインツールは便利で、大学に行かなくたって講義が聞けます。ですが、みんな対面の講義に戻って欲しいと言います。どうしてなのでしょうか。

オンライン講義では、全員が先生の画面を見て同じ資料を見ます。対面の講義では、とても興味がそそられる講義なら最前列で熱心に聞きたいですし、話がつまらない講義は後ろの方で「今先生なんて言ってた?」なんて話をひそひそとしながら講義を受けたいです。それはつまり、対面には同じ教室内でも「いろんな目線/立場」があり、それを選択できるという良さがあります。

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[へのへのもへじも優しい笑顔に]


今回の展示は、同じ部屋の中でも場所によって、鏡のような壁に写る姿が異なります。自分にとって心地よい場所を見つけるには、実際に訪れること、触れることが必要です。


世の中の活動がオンライン中心に移行して1年以上が経過した今、自分が大切にしたいことを考えるキッカケになるかもしれません。

みなさんも「いろんな目線」で自分自身を覗き込んでみませんか。



(浅川 雄介)


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【開催概要】
藤原印刷×してきなしごと ぶんしんするし しんぶんするし

会期:2021年5月8日(土)〜 5月23日(日)
時間:平日13:00〜17:00 土日祝11:00〜17:00(23日15:00迄)
料金:500円(ウチダゴウ執筆制作監修によるタブロイド判詩集付)
休廊:2021年5月13・21日

https://shitekinashigoto.com/gallery/


皆さま思い思いに楽しんでいただけている様子です。



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