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富士通のデータドリブン経営を支える!DACとはどういう組織!?
こんにちは!今回の記事を担当するフジトラ探検隊の平石です。
富士通の全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」は、社外の方から「キラキラ」「特別」などのイメージがあると言われることがありますが、実際は実直に粘り強くチャレンジしている取り組みがほとんどです。今回はそんな取り組みの一つである富士通の「データドリブン経営」を支えるData Analytics Center(以下、DAC)という組織の挑戦についてお伝えしたいと思います。
私たちの取り組みが「全社のデータドリブン経営への変革を任された人」や、「データドリブン経営を実現しようにもどこから手を付けるべきか迷っている人」たちのお役に立てればうれしいです。ぜひお付き合いくださいませ!
1. 富士通が目指すデータドリブン経営への変革とは?
昨今、耳にすることも多い「データドリブン」というキーワード。富士通も2020年のフジトラ発足期より、変革の中心テーマに掲げて真っ向から挑戦しています。
過去の実績や経験値に基づく経営から、
データの活用による未来の予測に基づく経営へと転換し、
事業環境の変化への柔軟かつ迅速な対応と、
合理的な意思決定を可能とすること
(富士通統合レポート2023より)
富士通では、これを目指すべきデータドリブン経営の姿と定め、その実現に向けて社内変革を進めている真っ最中です。
そのために今私たちが何を進めているのか、すごくざっくり言うと、「質の高いデータを作る」「データを使い倒す」の2つです。
そしてここがポイント(!)なのですが、データを作ってデータを使える状態を作るために、「プラットフォーム」と「人・組織(スキル・カルチャー)」の両軸にアプローチしています。
図にするとこんな感じです。
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これまでの流れを説明すると、2020年のフジトラ発足とともにOneFujitsu プログラムが開始されました。OneFujitsu プログラムは、経営資源となるデータを統合、可視化し、それらのデータがリアルタイムで合理的な意思決定によるデータドリブン経営を支える礎を築きます。
そして、OneFujitsu プログラム開始の翌年、2021年にDACはフジトラの活動が起点となりデータドリブン経営を推進するチームとして組織化されました。
質の高いデータを作るOneFujitsu プログラムと密に連携しながら、データを使い倒し、全社に広め、ビジネス価値を生み出すというのがDACの役割となります。
2. データドリブン経営への変革のリーディングを担う組織の立ち上げ
では、データをどうやって使い倒すか、DACの取り組みを通してご紹介します。
DACは、「全社標準レポーティングを担う」、「新技術の習得と組織への展開を担う」、「変革のマインド・カルチャー・リテラシー醸成を担う」という機能に軸足を置いています。
実はもともとこの機能を持って立ち上ったわけではありません。One Fujitsuプログラムによるデータ整備の進捗に合わせ、データドリブン経営を組織に定着化させるべく、ミッションを明確化していきました。そして現在も社内からのDACに対する期待に応えるため、スライムのようにとどまることなく、変化し続けています。
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DAC発足から3年が経過した現在、社外の方へDACの取り組みについてご紹介する頂く機会も増えてきており、そこでよくいただく質問の1つに「何から始めたの?」があります。
ずばり!「ともかくやってみよう」から始めました(笑)
これはもちろん場当たり的なものではなく、フジトラマインドである「ともかくやってみよう」の精神で、まずはアジャイル的にデータ活用の文化を富士通に根付かせるため、様々な挑戦を試みたということです。
組織として新設後、最初は手探りの中で、実際に経営・事業の現場に入り込み、プロジェクト実践を重ねました。
具体的にやったこと
パイロット組織と連携した事業マネジメントレポーティング機能の立ち上げ
フジトラ活動データのダッシュボード可視化
部門ごとのデータ利活用課題の解決伴走支援 ・・・などなど
伴走した組織・プロジェクトでは、質の高いデータが作られ、作ったデータを使い倒していくという変化の兆しが見え始めていました。その一方で、次々に複数プロジェクトに参画したため、メンバーがまだ少なかった当時のDACは、組織体力的な限界が近づいていました。
データアナリティクス機能を持つ組織あるあるかもしれません。
このままでは“全社変革”というミッションに到底到達できない…。1やることで100の効果にスケールさせるような工夫を考える必要がありました。
皆さんも、活動を進める中で、「これって焼け石に水かも…」と思うこと、ありませんか?
3. 活動の起爆剤になったできごと
質の高いデータを作って、作ったデータを使い倒す、それを全社変革として推進するにはどうしたらいいか
このやり方は間違い、こちらのやり方が正解、という答えのある問いではないため、試行錯誤を続ける日々でしたが、これまでの活動を振り返った時、起爆剤となったと思えることがいくつかありました。
❶ OneFujitsuプログラムの全社標準基盤の立ち上がりを待たずに、はじめられるところからデータ活用実践を推進
当時、全社標準基盤が出来上がるまでに非常に長い時間がかかると言われていました。データ利活用が定着するまでにも多くの時間がかかるため、待っていては遅いと判断しました。基盤が整ってから活動を始めるより早く、簡易的なデータ活用環境を作れたことで、基盤立ち上げ後もタイムラグを発生させずに可視化基盤を移行することに成功しました。
基盤が立ち上がってから活動を開始していたら、作られたデータの使い倒しまで今より2年遅れの結果になっていたのでは、と思います。
❷ 役員と一緒にリアルタイムトラッキングを立ち上げ・型化
One Fujitsuプログラムによりデータが整備され始め、これまでより質の高いデータがリアルタイムで取得できるようになったことをきっかけに、役員が確認する・確認したいトラッキングデータのダッシュボード立ち上げを行いました。
ここでの大切な学びの1つは、”本当に見たい情報”をトラックできるよう利用者と制作者が密にコミュニケーションをとることです。コミュニケーション不足の中、“見た目が良くても見たいデータにしっかりアクセスできないダッシュボード”を作っても、それはほとんど使われることがありません。しっかりとヒアリング・伴走し、作ったものを業務に溶け込ませていくことが重要です。もう1つは、役員自身がリーダーシップをとってプロジェクトを推進することで、その周辺の行動も変化するということです。これは、フジトラ探検隊vol.1で記載したTOPFIRSTにも通じますが、「トップが変わる」というのは、やはり変革をぐっと推し進めるキーポイントだと感じました。
❸社員の新しい行動を生み出す機会「データ分析コンペ」
OneFujitsuプログラムの稼働が進む中、取り込まれたデータの活用は一部のメンバーに限られる状況でした。多くの社員は、データの登録はするがそのデータがどんな形をしており、そのデータがどんなふうに使われるのか、そのデータからどんなことが読み解けるのかは分からない、という状態です。その状況を打破するために、登録したデータを自身で触り分析することで、データ登録の重要性を体感してもらうことを狙い、全社イベントとして、OneFujitsu登録データを使ったデータ分析コンペを開催しました。
社長自らデータ分析で解きたいお題を出題したこともあり、普段データに触れる機会の少ない人から、お客様向けにデータサイエンティストとして活躍している人まで参加し、BIツールでの可視化や分析、データから導いたアクション提案にチャレンジしました。
社内の恒例イベントとして今年開催3年目を迎えた本年は、なんと670名を超える参加者がデータ分析にチャレンジします。さらに今年は社内データの枠を飛び越え、地域創生への貢献をめざし、富士通が本店を置く川崎市とコラボした部門枠を設けました。社員一人ひとりのデータを見る力・読み解く力の向上のきっかけづくりとして社内データ分析コンペの開催、おすすめです!
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なんと今回は初の社外コラボで開催!
市制100周年記念 川崎市オープンデータ分析コンペティション
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4. 3年前と今とで、変わったこと
一足飛びではいかないことが多いですが、 立ち上げから3年間のDACでの活動を通してデータを使い倒すために富士通が変わってきたと思うポイントは4点あります。
■ プラットフォームの変化
1点目は、共通的なモニタリング仕組みが整ってきたことです。現在、多数の経営・事業管理のダッシュボードが稼働しています。
2点目は、最新テクノロジーへの挑戦が形になってきたことです。AIによる受注予測、生成AIによるマネジメントサポート、プロセスマイニングの活用など日々実践を重ねています。
■ 人・組織の変化
3点目は、現場部門のテクノロジーの活用・自走が拡がってきていることです。協業パートナーの外部ツールなども積極に業務に活用しています。
4点目は、データドリブン経営変革に関する組織成熟度を可視化する仕組みを構築したことです。各組織のデータ活用度合い、課題感を可視化できるようになり、行動変容の物差しができました。
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DAC立ち上がり部分だけで、とてもボリューミーになってしまいました…。
何か一つでもヒントとなるような内容になっていたら嬉しいです。
そして他にもご紹介したい取り組みがたくさんあるのです…
ということでまた次回の記事でお会いできることを楽しみにしています!
【今回のフジトラ探検隊員】
平石 幸子(ひらいし さちこ):データアナリティクスセンター所属
データドリブン経営変革に向けた全社12.4万人のマインド・カルチャー・リテラシー醸成をミッションに奮闘3年目を迎える。会社が・自分が「変わっていく」ことのワクワクを届ける、エクスペリエンスデザイナーを目指している。