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AIはわたしたちのバディになる~富士通のAI戦略メッセージが意味するもの~

こんにちは、note編集部です!
富士通は2024年2月14日に、新しいAI戦略メッセージを打ち出しました。「AIはわたしたちのバディになる」―このメッセージの背景にある技術トレンドと当社のAI戦略について、当社執行役員CTOのヴィヴェック マハジャンと、同執行役員SEVPの高橋 美波に話を聞きました。


富士通 執行役員CTOのヴィヴェック マハジャン(左)、同 執行役員SEVPの高橋 美波

富士通の新しいAI戦略メッセージと、その背景を教えてください。

ヴィヴェック:
当社はこのたび、「AIはわたしたちのバディになる」とするAI戦略メッセージを発表しました。その背景には、生成AIの登場があります。
 
AI技術は、2022年から大きな話題となった生成AIの登場により、2つの側面で飛躍的に進化しました。1つ目は、人間が話す自然言語や非定型のデータを使ってAIと効率的にやり取りができるようになったことです。これによって、誰でもAIの恩恵を受けて生産性を上げることができるようになってきました。2つ目は、生成AIが膨大なデータの中から既存のアイデアをつなげることで生まれる創発性により、人間の創造性を補完できるようになったことです。
 
当社は、これらを「高い生産性を実現するAI」(AI to increase human productivity)、および「創造性を拡張するAI」(AI to increase human creativity)と呼びます。これらを信頼できるAI技術で実装し、AIリテラシーを習得して正しく使うことで、「AIはわたしたちのバディ」となって人間の生産性と創造性を拡張していくと考えます。バディはある時は人間の相棒、ある時は先生、ある時は助手のように適切なかたちで人間を支援します。

富士通は、どのようにお客様のビジネスの生産性と創造性を拡張していきますか?

高橋:
人間が組織の中で生産性や創造性を高めるには、毎日利用している業務システムの中で、誰もがAIのバディと協働できる必要があります。組織の中で求められるAIのバディは、特定の業務のエキスパートであり、言語情報の解釈に加えて画像動画グラフ音楽専門分野の知見などのマルチモーダルな情報を駆使して人間に提案し、人間の意思決定を支援します。いわば、特定業務の要求に応える「特化型バディ」です。
 
当社は、お客様のビジネスのサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)と社会課題解決を支援する事業モデル「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」を展開しており、今後、「Fujitsu Uvance」の様々なオファリングにAIを「特化型バディ」として組み込んで、お客様のビジネスの生産性と創造性を拡張していくことを目指します。

図1:富士通のAIビジョンと戦略

業務特化型のバディを実現するために、今回当社は、クラウドベースの意思決定支援プラットフォーム「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を「Fujitsu Uvance」のオファリングとしてサービス化しました。当社のテクノロジーコンサルティングサービスと共に、2024年3月末から順次提供していきます。
 
「Fujitsu Data Intelligence PaaS」は、組織内外に散在する膨大なデータを意味の理解できるかたちに統合して意思決定を支援するもので、(1)当社のAIブランド「Fujitsu Kozuchi」、(2)企業・業種を超えたデータ連携とトレーサビリティを実現するブロックチェーン技術「Fujitsu Track and Trust」、(3)Palantir/Microsoft Azure/Amazon Web Services(AWS)による統合マネジメント環境およびデータ分析サービスの3つで構成されます。
 
これにより、業種間で分断されたデータをつなぎ、企業間のクロスインダストリーを活性化させ、これまでにない解決策や知見を導出することでお客様のSXと社会課題解決を支援します。

図2:「Fujitsu Data Intelligence PaaS」の概要

富士通のAIブランド「Fujitsu Kozuchi」について教えてください。

ヴィヴェック:
今回当社は、これまで先端AIを試せるAIプラットフォームの名称として使用していた“Kozuchi”をリブランドし、新たに当社の技術を7つのAI領域で体系化した商品ブランド「Fujitsu Kozuchi」としました。

図3:「Fujitsu Kozuchi」と7つのAI領域

「Fujitsu Kozuchi」の7つのAI領域は、次の通りです。
 
Fujitsu Kozuchi Generative AI:生成AIはコンピュータシステムと人間との間で自然言語や非定型データのインターフェイスとなり人間の生産性と創造性を拡張します。情報漏洩のない企業向けの安全な環境でハルシネーション対策を施して提供されます。
 
Fujitsu Kozuchi AutoML:データサイエンティストでなくてもAIモデルの設計、構築、調整を自動で行えるようにします。当社独自のAutoML(Automated Machine Learning、自動機械学習)技術で、高精度な機械学習モデルを短時間で生成可能です。また業務課題を自然言語で入力すると適切な数式表現に自動変換し、顧客業務に特化したAIを自動生成する機能も提供します。
 
Fujitsu Kozuchi Predictive Analytics:様々なデータを活用した将来予測をより正確に行うことができるようになります。動的アンサンブルモデルを使い、多様な商品の変化する特性に合わせた安定的で高精度な需要予測と人手を介さない自動チューニングを行います。
 
Fujitsu Kozuchi for Text:デジタルデータになっているテキストについて、自然言語処理技術を通じて加工、分析します。
 
Fujitsu Kozuchi for Vision:人間や物体の姿勢、形状、動き、文字認識など、光学機器から入力される情報をデジタルに変換し、分析・判断を行うことができるようになります。約100種の基本動作学習済みモデルと、ノーコードUI※で作成する行動認識ルールにより、複雑な人の行動を容易に認識可能です。
 
※ノーコードUI:コードを書かなくてもアプリケーション開発やWeb制作などができる画期的なUI
 
Fujitsu Kozuchi AI Trust:AIの学習データや判断の公平性を、Webブラウザから簡単な操作で検証できます。「AI倫理」「AI品質」「AIセキュリティ」のシステムへのAI実装、そして「正確性」「公平性」、「著作権侵害」「情報管理」「悪用」に対するユーザー側のAIリテラシー向上を支援します。
 
Fujitsu Kozuchi XAI:AIが出力した結果の因果関係を説明します。表データに対してあらゆる可能性を網羅的に検証し、判断結果の説明や現場改善アクションを提示したり、膨大なデータからあらゆる条件下の因果関係を網羅的に計算したりすることで、有用な因果関係を見逃さずに発見します。

富士通のAIの特長を教えてください

高橋:
当社のAIの特長の1つに、7,000件以上の豊富なAI導入実績があり、さらに富士通従業員約12万4,000人がAIを利用できる環境を整備し、そこで実証済みのソリューションを展開している点があります。業種別、機能別にチューニングされたすぐに利用できるベスト・オブ・ブリードソリューションとしてお客様に提供します。
 
例えば、生成AIについても、当社は早期からグローバルの全従業員が実業務でChatGPTベースの生成AIをセキュアに使用できる環境を整備し、様々なユースケースで活用しながら効果を実証してきました。以下は、生成AIの社内活用の効果の例です。
 
プログラミングコード開発:社内SE部門での検証の結果、生成AI活用によりコード生成の工数を平均約20%削減できることがわかりました。
 
社内FAQの自動生成:社内チャットボットの対応履歴を生成AIに投入し、履歴内容を要約、回答できなかった質問を分析してFAQを自動生成しています。人手を介さずにFAQを作成するフローを可能にしました。
 
商談情報分析と経営レポート作成:商談情報を分析して経営会議向けに週次レポートを作成する業務を、生成AIで自動化しました。従来は人手で毎月13人月の工数をかけていた作業が完全に自動化されました。
 
ヴィヴェック:
当社AIの技術的な強みの1つに、独自の「ナレッジグラフ技術」があります。組織の中でAIがわたしたちのバディになるとは、AIが組織のルールや法規制を守る信頼できる仕事仲間であるということです。当社が開発中のナレッジグラフ技術は、世界最大規模の10億ノードの事象の関係性を表現し、その根拠を説明できる仕組みを低コストで構築運用できる技術です。この技術と、データの確からしさを判別可能にするTrustable Internet技術を連携させることで、生成AIの出力を法規制や社内規定に準拠した出力に制御することを可能にします
 
また当社は、オープンLLM※をベースに日本語性能を追求したモデルを2023年12月に開発したことを発表しましたが、現在は画像やコード生成などの特定の分野や日本語などの特定の言語で高い性能を発揮する特化型生成AIを開発中です。さらに、これらの自社開発の生成AIモデルやパートナー各社の特化型生成AIモデルを束ねて性能を高める「生成AI混合技術」の開発を進めています。様々な特化型生成AIを組み合わせ、シーンに応じて各モデルの長所を引き出すことで生成AIの言語性能を高めることができます。
 
※LLM:大規模言語モデル。特定のタスク、特に言語に関連するタスクを高い精度で実行するための特化型のモデル。
 
これらのナレッジグラフ技術※や生成AI混合技術は、2024年4月から順次、当社の先端技術を無償で試せるFujitsu Research Portalを通じて提供していく予定です。
 
※ナレッジグラフ技術:さまざまな知識を体系的に連結し、グラフ構造で表した知識のネットワークの技術

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