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第1回:データドリブン経営に向けたファイナンス部門の新たな挑戦

富士通が誕生して今年で90年。変化の激しい時代に、この先も挑戦・成長する会社であり続けるために必要なこと…
皆さんはどんなことを思い浮かべますか?
富士通では、他社に先んじて自社のDX化に取り組んできました。今回はその中で、データドリブン経営を支えるファイナンス部門の変革についてご紹介します。
私はこの連載企画を担当する財務経理本部長の益田です。全3回の構成でこれまで推し進めてきたこと、それによる成果や課題、今後の展望・思いなどをわかりやすく、熱く、お届けできればと思います!



ファイナンス部門の変革のきっかけ

富士通では、2020年にニューノーマルにおける新たな働き方のコンセプト「Work Life Shift」を発表して以来、社員が主体的に業務の目的に応じて最適な場所や時間を選択する働き方への取り組みを進めてきました。
グローバルに様々な拠点のメンバーが所属するファイナンス部門において、特に決算業務は、従来のオフィスワーク中心の働き方から、リモートワークでも迅速かつ正確な決算処理ができるよう、業務プロセスの抜本的な見直しとデジタル化を推進せざるを得ない状況に直面していました。さらに、データ利活用における課題が浮き彫りになりました。
従来のウォーターフォール型の業務プロセスでは、一箇所の遅れが全体に影響を与え、柔軟に対応できません。また、グローバルに分散する拠点間の情報共有も大きな障壁となりました。従来のように、グローバルでデータをエクセルで集約、パワーポイントに貼りつけて、改版を繰り返し、紙で印刷して報告するという流れでは経営のスピードがあがりません。
そこで、データドリブン経営に着目し、迅速かつ的確な意思決定を支援する組織として、ファイナンス部門の変革の必要性を認識し、単なる数字の集計・報告にとどまらず、経営戦略策定から実行、評価までをデータに基づいて支援する役割を担う組織へと変革するための挑戦が始まりました。

データドリブン経営におけるFP&Aの位置づけとデータ利活用に向けた環境整備

FP&Aという言葉を聞いたことはありますか?Financial Planning & Analysisの略で、財務だけでなく非財務データも含めて収集・分析し、将来予測や計画と実績のトラッキング、経営資源の集中と選択などビジネスパートナーとして現場をサポートします。
データドリブン経営において、FP&Aは中心的な役割を担います。様々なデータソースから情報を収集・分析し、経営層への的確な情報提供、戦略立案への貢献、そして、迅速な意思決定支援を行うことで、企業全体の価値向上に貢献します。富士通においても、FP&Aは、データドリブン経営を推進するための重要な機能として位置付けています。
2020年当時、ファイナンス部門もDX推進やデータドリブン経営の必要性を認識しつつも、従来の定型業務に追われ、データ分析や経営戦略への貢献にまで手が回らないという課題を抱えていました。
関係会社への業務の実態およびデータ利活用に向けた変革に関するアンケート調査でも、「数字を集めることに精一杯で、変革に時間をかける余裕がない」「変革には賛成だが、誰かがやってくれるだろう」といった変革に消極的な声に加え、「自分自身は変われないのではないか」「私たちは必要なくなるのではないか」といった不安の声も寄せられました。このような結果も踏まえて、データドリブン経営に向けた課題をあらためて整理し、解決策を導き出して実行に移しました。

👉調査結果からみえてきたデータ利活用に関する3つの課題
アンケート調査の結果から、データドリブン経営に向けた3つの主要な課題が明らかになりました。
 
オペレーションの非効率性: 複数のシステムが連携せず、データの収集・分析に多くの時間と労力が費やされている
データ分析スキルの不足: データ分析に必要なスキルを持つ人材が不足しており、データの活用が限定的
経営層との情報共有の不足: 経営層と現場間の情報共有が不足しており、データに基づく迅速な意思決定が困難
 
👉変革の内容(3つの課題に対する対策とその内容)
上記の課題を解決するため、以下の3つの対策を実施しました。
 
その1:データ利活用プロジェクトチームの発足およびデータ統合基盤の構築
富士通の全社変革プロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」の一環として、2021年4月に、ファイナンス部門において、グローバルに散在するデータを統合し、意思決定のスピード向上を図ることをミッションとしたデータ統合プロジェクトが始動しました。これは、後に紹介するFP&Aの組織が立ち上がる2年前のことになります。FP&Aの組織を作っても、意思決定を裏付けるだけの説得材料(武器)がなければ事業部門長や経営者をサポートすることはできません。そこで、よりたくさんの武器を準備することが必須と考えたのです。
プロジェクトチームを作るにあたり、社内外から、幅広くデータ利活用に精通した人材を募集しました。単にエージェントに頼るだけでなく、社外でのイベントなどを企画して、求職者との対話を通じて思いを同じくする人材を探し、結果、社内外から優秀なエンジニア2名を仲間に迎え入れることができました。
こうして、少数精鋭でスタートしたファイナンス部門のデータドリブン専任部隊では、既存システムにおけるCRM(パイプライン)や戦略重点施策(KPI)など先行指標のデータの統合に着手し、複数のデータレイクをあたかもひとつのデータベースかのように結合し、データの一元管理を可能とする仕組みを構築しました。もともと兼ね備えたエンジニアの専門スキルと新たに学びながら取得したファイナンスの業務知識を融合させることで、より効率的なデータ統合を実現する基盤の構築に成功し、高度なデータ分析によるデータ利活用を促進させるだけでなく、IT部門とファイナンス部門の連携強化にもつながりました。

その2:カルチャー変革とデータドリブン人材へのスキル向上の強化
データ統合基盤の構築やデジタルツール活用など、テクノロジー的な側面のみの変革で、たとえデータが一元管理できるような環境が整ったとしても、これまで脈々と受け継がれてきたお作法やそこに関わってきたメンバーのマインドが変わらなければ、変革はなかなか進みません。そこで、全社的な意識改革、つまりカルチャー変革が必要でした。DXの必要性を理解してもらうだけでなく、個々のメンバーが「自分ごと」として捉え、主体的に取り組めるよう、ファイナンス部門のパーパス(存在意義・役割)を明確化し、自部門サイトや社内報などでの継続的な情報発信を通じて、私自身の変革に対する本気度や熱意を示すことで、プロジェクトへの積極的な参加につなげていきました。従来のファイナンス業務に慣れた既存メンバーの中には、新しいツールや手法への抵抗感を持つ人も少なくありませんでした。そこで、継続的なコミュニケーション、丁寧な説明を粘り強く行い、賛同するメンバーを徐々に増やしていきました。
また、ファイナンス部門のデータリテラシーを向上させるべく、既存メンバーへの社内研修や外部研修、データ分析ツールの導入支援などを通して、データ分析スキルを持つ人材育成に力を入れています。

その3:経営層とのコミュニケーションの高度化
データ統合基盤と可視化ツールの活用により、経営層への定期的な報告会やミーティングなどの場で、ダッシュボードを取り入れながらデータに基づく情報の見せ方にシフトし、容易に経営状況を把握できるようにしました。経験や勘では経営者には敵いません。しかし、私たちFP&Aは、データに基づいてファクトを明らかにし、変化する経営状況を常にウォッチし続け、問題があればデータを読み解くことで、課題解決に向けた施策を経営層へ即座に提案できます。ファイナンス部門は、このような一連のアクションをスピーディーに行い、月次・四半期・年次ではなく、常に経営判断に対する責任を果たせるような根拠をデータに基づいて「線」で示していくことが求められています。

データ利活用の推進における成果と反省

社内に散在する無数のデータをつなぎ、それを利活用することで、従来の定型的な業務から解放することが可能です。例えば、データ統合基盤上の集計レポートを共有することで、これまでのような報告資料の作成作業そのものが不要になります。集計に時間がかかる報告資料を自動化・省力化することでより短時間で資料作成が完了するため、結果として、より高度な仕事に取り組み、新しいことにチャレンジできるようになります。
ファイナンス部門でのこういった変革は、現在段階的に進めています。まず、パイロットプロジェクトとして、特定の事業部門でデータ統合基盤を構築して、効果検証し、その結果を踏まえて、全社展開を進めていきます。当初は懐疑的な意見も多くありましたが、パイロットプロジェクトによる成果や、経営層からの強い支持、そして、具体的な効果を実感するにつれて、周囲の理解と協力を得ることができました。「最初は戸惑ったが、今ではデータ分析が業務に役立っている」「新しいツールを使うことで、業務効率が大幅に向上した」といった声が聞かれるようになりました。
 このような成果が出始めている一方で、振り返ってみると反省もあります。それは着手しやすいところから始めてしまったことです。紙での報告をダッシュボード化することから始めましたが、それを実現したからといって真の変革ではないわけです。経営者にとっては、紙であろうが、ダッシュボードであろうが、これまで四半期・月次単位で行ってきた過去の実績中心の決算報告から脱却し、未来を予測して非財務情報も同時に見ることができるような内容を求めているのであって、ダッシュボードで効率的かつスピーディーに報告されるだけではあまり価値はないのです。
そこで、改めて解決すべき課題は何か、まずは根底にある組織やカルチャー、メンバーのマインド変革の必要性に気が付き、軌道修正を図りました。

さいごに、私益田のマイパーパスは、「日本を元気に!次の世代により良い社会を!」です。
この自身のパーパス実現に向けて、ファイナンス部門のデジタル変革に取り組んでいます!

Profile: 益田 良夫(ますだ よしお)
富士通 財務経理本部長。事業部門及び海外関係会社の経理、グループ経営管理部長、本社経理部長などを経て、2024年4月から現職。富士通のDXプロジェクトにも関わり、現在、データドリブン経営の実践に向けて、経営データの統合・分析基盤をつくりデータに基づく経営陣の意思決定を支援するなど、グローバルなファイナンス部門のデジタル変革をリードし、FP&Aの組織や人材育成の強化を推進している。


初回は、データドリブン経営に向けたFP&A導入の前哨戦として、ファイナンス部門の改革とデータ利活用の推進についてお伝えしました。
第2回は、いよいよFP&A組織発足の裏話に迫ります。


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