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デザインの誤解 XRと空間デザイン #01

2025年はバーチャル空間について少し掘り下げて考えていきたいと思い、
建築設計という立場からXRやバーチャルに飛び込んだ立場から、空間デザインについて触れていきたいと思います。


デザインの誤解

バーチャル空間を設計し始めた当初、「自由にデザインできるから面白いんですよね?」といった質問をよく受けました。

バーチャル空間を設計している理由については別の機会に触れますが、ここで少し立ち止まって考えたいのは、「デザイン」という言葉が果たして正しく理解されているのかという点です。

SNSや会話の中で「デザイン重視は使いにくい」という意見を目にします。同じ建築士の中にも「デザイン重視」という言葉を使う人がいますが、これには違和感を覚えます。

デザインとは、単なる装飾ではなく、「目的に適った計画」そのものだと考えています。言い換えれば、デザインは「課題を解決する行為」です。またデザインは一般的には「バランスを取ること」と表現されます。(多くの方が触れている内容でもあるので、ここでは割愛します。)

デザイナーズ物件という言葉の違和感

誤解の結果としての身近な例として、「デザイナーズ物件」という言葉があります。不動産広告でよく目にするこの言葉には、「デザイナーが関与していない物件がある」ような印象を与える誤解が含まれていると感じます。

しかし、現実にはすべての建築物にデザイン行為が存在します。建物の配置、法的制約や予算感を踏まえた工夫、施主の要望を形にする行為もすべてデザインの一部です。
このように、デザインは機能性や快適性も含む総合的なものであり、「見た目」だけを切り取るのは本質的ではありません。この誤解は、デザインを単なる「見た目」として捉える風潮に起因しているように思います。

ではそのような誤解があるとしてデザインを総合的なものとして考えたときに、バーチャルにおける空間デザインとは何が求められているのかを考えていきたいと思います。

バーチャル空間における空間デザインを考える

以前『メタバース空間を作る ≠ 建築の3DCGを作る』という話は下記の記事に書きました。同時にメタバース空間ってモデリングできても、ギミック作りや軽量化とかライティングとかUI・UXとか設計しないといけないし、けっこう難しいので、全部できる必要はないけど各分野を理解しておくことは大事だよね。という話です。


その上で、私が頭に置いているポイントをいくつか記載したいと思います。

空間として生み出したい体験は何か

バーチャル空間で、とあるギャラリーを見かけたことがあります。
未来的で洗練された外観を目指しているような建物だったのですが 内部は現実の博物館の簡易版の回遊型動線を再現したようなものでした。
さらにユーザーがスマホやPC画面を通してその空間を見るという点に配慮されておらず、作品が見づらく、移動も操作として煩わしいというものでした。

おそらくこのギャラリーは、「バーチャル空間にギャラリーを作る」ということが目的となってしまい、ではどんな見た目がいいのか?というようなフローで作られてしまったのだと思います。

実際にデザインを依頼された際に、要件や仕様をいただくことがありますが、私の場合、それを前提としつつ、そこでどんな体験を生み出したいか、なぜそこにそれを置く必要があるのか等、仕様書にはないような部分や見た目を越えたその先のお話をディレクターの方とさせていただくことのほうが多いです。 建物全体としてそのような体験を加味したデザインであれば、上記のような問題は避けられたはずです。


建築メタファーの活用

バーチャル空間においても、空間デザインの重要性は現実空間と変わりません。むしろ、ユーザーがどのように行動し、どのような体験を得るかを考慮する必要性は高まるとも思います。
何かしらの情報取得をサポートするために建築メタファーを取り入れることは、バーチャル空間設計の有効な手法の一つだと考えています。
自分が知っている空間であれば、ふるまいが想定できるため、ユーザーも行動しやすくなります。
逆に建築メタファーの常識を覆すことで新しい価値を創造することも可能です。既存の建築概念と新しい発想をトータルで考えることがポイントとなります。


建築をUI/UXとして捉える視点

バーチャル空間の建築デザインを「UI/UX」として捉える視点も重要です。 実際に現実の建物は、利用者の動線や視認性、空間配置が練られており、アプリやウェブサイトのナビゲーションのように、ユーザー体験を左右する要素が3次元的に考えられ、空間計画に統合されているため多くのヒントがあると思います。 建物をUI/UXとして空間を考えることで、何について配慮すべきかということが見えてくることもあります。


XR・メタバースと空間について考えていく

デザインとは、単なる「装飾」や「形状」を超えた、ユーザーの行動や感覚に影響を与える行為です。
バーチャル空間では、物理的制約がない分、より自由度の高い設計が可能です。しかし、自由度が高いからこそ、ユーザーが直感的に使いやすく、快適に感じる設計が必要なのだと思います。
色のついた箱に画像を並べただけでは、本当の意味で空間がデザインされているとは言えないと、私は思います。
XRやメタバースという新しいフィールドにおいて、既存の建築概念を活用しつつ、創造性を発揮することで新しい体験を提供することが求められていると思います。

このようなことをまた記事にしていきたいと思います。 それでは!

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Fujito
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