茶師とは何か
はじめに
非茶業出身のsyawakoが、五代目本多茂兵衛へのヒアリングや辞書などを調べて記します。生まれつき茶業な五代目本多茂兵衛の言葉を、根が消費者の人間が翻訳して伝えることで、 皆様に寄り添えるのではないかと考えました。
「茶師とは何ですか」取材の機会などで聞かれることがあります。「焙じと焙煎」「合組」など聞かれるところは多くの疑問に思うところであり、関心のあることでしょう。
そして、まる茂茶園から見てもこだわり所です。考えを書くことでこだわりを伝えたいと思います。
第一回目は「茶師」です。
茶師とは何か
茶師とは何か。
辞書を調べると、茶の製造や販売に関わる立場の人、お茶を生業とする人、茶業者と書いてあります。
日本茶のバイブルである茶大百科を調べると、茶師は焙炉(ほいろ)師と書いてあります。焙炉師について解説はありませんでしたが、文字から察するに焙炉で手揉み茶を製造する人のことと推察します。
つまり、茶師は時代や地域によって意味合いが広義になったり狭義になったりする言葉なのです。現在でも、同じ茶師と名乗っていても、それぞれ意味合いが異なる場合があります。
茶師の要件
まる茂茶園の場合、茶師とは荒茶製造に携わる人を意味します。
「蒸し」「精柔」
この二点が茶師の技術の要件であり勘所、特に「精柔」ができない、精柔機の棹を引けない人は茶師ではないといいます。
本多家の家業は製茶業、つまり荒茶をつくることを生業としてきました。現在は7haほどの茶園を有し茶農の側面もありますが、五代目が子どもの頃は自園は少なく買い葉を製茶することが主だったそうです。
季節になると茶の摘み取りと製造のために日本各地から働きにくる方がいますが、茶園での摘み取りや運搬をする人は食子(しょっこ)と呼び、茶師とは呼びませんでした。
茶工場で精柔機の棹を引く人を茶師と呼びました。
精柔がなぜ大事かといえば、日本茶の特筆すべき特徴であるからです。葉に熱と力を加え、形を針のようにまっすぐ整えていく。この整形は、紅茶とも中国茶とも違い、日本茶独自です。
茶農、茶師、茶匠
畑の生産は茶農(家)、荒茶製造は茶師、仕上げ茶製造は茶匠とすると、五代目本多茂兵衛は全て携わっており、茶農であり茶師であり茶匠です。(お茶を淹れる茶人もいらっしゃいますが、また別の記事で書かせていただきます)
その中で茶師を名乗るのは、アイデンティティが製茶にあるからです。
「富士山地域の自製自園のお茶屋さんはみんな、茶農で茶師で茶匠だと思う。ほぼ全ての荒茶工場でその工場のお茶が買えるのはすごい事。」と五代目は言います。
一口に茶業者、お茶屋といってもいろいろで、どこにアイデンティティを置くかで変わります。また実態とアイデンティティも別の場合もあり、畑寄りの人は製茶していても茶農家を名乗るでしょう。
「茶師とは何ですか」
何を思い、なぜ名乗るのか、どんな背景や歴史がそこにあるのか、聞けることでしょう。
アイデンティティなのか、技術なのか、身分なのか、資格なのか、名乗りから見えて来るはずです。
お尋ねください。
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茶商(茶匠)さんの名乗る茶師については歴史を紐解く必要があり、勉強不足のため、茶審査技術十段(茶師十段)の大山泰成氏の記事をリンクさせていただきます。
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おわりに
使う人により意味合いが違うので、茶業界以外のみなさまに伝わりにくい言葉ではありますが、それぞれのこだわりが宿るところでもあります。
構造を紐解きながら記すことを心がけております。世界観を知ることや、疑問を晴らす一助になれば幸いです。次回は「合組」について記します。