【SaaS営業】全部書きました!インサイドセールスの導入・失敗・定着・成果の12か月間!
はじめまして。アライドアーキテクツ株式会社で執行役員を務めている藤田佳佑です。
僕たちは、2018年1月からアポ獲得分業型インサイドセールスに取り組みました。成果を先にお伝えします。
営業効率を向上させる、という目的でインサイドセールスを導入して、成果が出ました。
僕たちが取り組んだインサイドセールスは、オンライン商談ではなく『アポ獲得分業型インサイドセールス』です。オンライン商談は既にある程度取り組んでいたので、Salesforce社で言う
・SDR(Sales Development Representive)
・BDR(Business Development Representive)
・フィールドセールス
の形を導入しました(そもそも僕がインサイドセールスはアポ獲得分業型だと思い込んでいて、オンライン商談のこともインサイドセールスと呼ぶことを後から知りました)。
「オンライン商談を導入して移動時間が削減されて営業効率が上がった!」みたいな話はよく聞くのですが、アポ獲得分業型インサイドセールスの失敗談とかは僕自身があまり見る機会が無いことと、僕たち自身の履歴を残す目的で記事を書きました。少しでも、これから取り組まれる方々のお役に立てたら嬉しいです。
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①2018年1~3月 導入。全然うまくいかない。
そもそもの発端は、会長の中村から、
と言われたことです。2017年12月に言われました。2017年の終わりごろから社内で『SaaS』という言葉が出始めて、正直僕はSaaSもよくわかってなかったし、インサイドセールスっていうものも全くわかりませんでした。
「絶対無茶なこと言ってきてるな」と思いましたが、やってみて無理だったら無理って言おうと思って、インサイドセールスに取り組み始めました。
2018年1月にインサイドセールスチームを作り、マネージャーが僕で、メンバー2名の合計3人でした。マーケ部門寄りの位置づけのチームです。
まず初めに、先人から知恵を得るために情報を探しました。Marketoのブログとか、hubspotのブログとかをたくさん読みました。あとはSalesforce社の公開資料とかも探して読みました。集めた情報の意味を理解したりしながら3週間くらいかけて、
・インサイドセールスは商談を獲得するまでがミッションで、商談を獲得したら営業に渡す。
・最低でも5回はコールする。
・商談して、受注しなかったリードはリサイクルする。
などなど書ききれないほどの先人のありがたい情報を整理して、僕たちなりの『インサイドセールのKPIとやること』を1回まとめました。
こんな感じでした。BANT条件での判定は以下です。
決済権(A)は無視しました。決裁者であることは重要だけど、これまで担当者レイヤーに提案して受注することが多かったので『決済権が無いから営業対象ではない』と判断することができなかったからです。『今後、ウチの営業手法が決裁者にアプローチして受注するようになったら取り入れよう。今は取り入れない』という判断でした。
『営業非注力銘柄』『Bad Data』は、本来リード管理としてやっておくべきことなのですが、弊社がずっとここに手を付けずに『Salesforceにはデータを突っ込んでいるだけ』状態だったので、この機会に取り入れました。
『リード』については、ちょっと反省しています。Salesforceや一般的な言葉として『リード』があり、インサイドセールスの社内用語として『リード』を使ってしまったことで、どっちのことを言っているのかわからない時があります。何かの記事を読んでマネした結果なのですが、社内用語の『リード』は今後修正する可能性大です。
こんな感じで決めて、よし!やるぞ!ってなって、メンバー2名にメール送付&架電をやってもらいました。1日のコール数・接続数・判定した結果・アポ獲得数をダッシュボードで見てました。
2018年1~3月の結果は以下です。
相当失敗しました。今、記事を書きながら数字を見て、アポ供給数こんなに少なかったかと驚いてます。
うまく行かなかったことの要点は以下二つです。
①シナリオとスクリプトにこだわりすぎた。
メンバー2名は、比較的社歴が長くて営業経験があるメンバーでした。なので、営業力が低いということはありません。
ただ、
「過去自社セミナーに参加したことある人向けにはこういうメールを送ろう」とか「ホワイトペーパーをダウンロードした人にはこういうスクリプトじゃないか」とか「接続して話した人にはこういうメールを送るのが良いんじゃないか」という、
接点の違いによるアプローチ方法の細分化に時間をかけてしまいました。はっきり言って、これは何の意味も無かったです。セミナーに参加してようが、ホワイトペーパーをダウンロードしていようが、興味度合いなんて話してみないとわからないので、架電してみないとわかりません。
②対象プロダクトの営業を最前線でやっているメンバーではなかった
アライドは複数のSaaSプロダクトで事業をやっていて、インサイドセールスは『モニプラファンブログ』と『Letro』の2つのプロダクトで取り組みました。2名のメンバーは営業経験がありますが、直近2年くらいはどちらのプロダクトにも関わっていませんでした。
アポ獲得を目指すインサイドセールスは、最新の事例や最新の営業トークを持っておく必要がありますが、メンバーはどちらも持っていませんでした。そして、隣の島では営業部が事例をトークしているのにインサイドセールスメンバーが知らない、その事例を営業部に聞きに行って収集する、ということをしていました。
結果、架電トークが甘く、必要性(N)を満たしていると思ったら全然満たしていなくてアポ質がめちゃくちゃ低いという結果になりました。
複数プロダクトが対象だから社歴があってプロダクトのこともある程度わかっているメンバーが臨機応変にトークできるだろう、という判断でアサインした僕のミスでした。
一方、この時点でやっていてよかったということは以下二つです。
①最重要KPIを受注貢献数にしたこと。
営業と共通KPIにしないと目線がズレてしまうので、これは最初からやっていて良かったです。アポ質が低いこともリアルタイムで把握していました。
②先人のマネをした業務設計を徹底したこと
最初から自社オリジナルでやっていたら、うまく行かなかったときに、何が悪いのかよくわからないです。また、先人の知見を活かさないのは時間の無駄です。
「先人がやっていることは絶対に正しいからマネをする。それでうまく行かなかったらやり方が悪い」ということを最初に決めていたので、最初に収集できるだけ情報を収集しまくって、先人のマネを徹底しました。
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②2018年4~6月 大改修。3か月かけて型ができる。
3月までの結果を振り返って僕が結論を出したことが以下二つです。
ですので、4月から大改修をしました。
という二つです。
2017年4月に新卒入社した、当時2年目になりたてのトップセールスの亀田明日花(Twitterはコチラ)にリーダーを依頼しました。
亀田に、インサイドセールスがうまく行くと営業部の受注成果が絶対伸びること、亀田が成果を出せたアポ獲得までの創意工夫をインサイドセールスチームにインプットして欲しいこと、を伝えて、新しいチャレンジを引き受けてくれました。
このとき亀田が引き受けてくれなかったら、インサイドセールスは絶対失敗していたなあと思います。亀田ありがとう。
また、インサイドセールスチームのメンバーも総入れ替えしました。4月から配属された新卒社員6名をインサイドセールスチームのメンバーにしました。
Salesforce社がキャリアの初期にインサイドセールスを設定していること、アポ獲得までの分業制であれば習得が早いとイメージできたこと、新卒社員の受注貢献が増えることは会社にとってもプラスであること、新卒社員でもできる仕組みを創ってしまえば後は伸びしろしかないこと、が理由ですが、本音は、バリバリ営業やっているメンバーをアサインする人員の余力が無く、なんとかして新卒1年目だけでインサイドセールスをうまく行かせるしか選択肢がありませんでした。
亀田に、
・スクリプトの作成
・BANT条件を判定する基準の見直し
・インサイドセールスメンバーへのロープレ
を依頼し、改修してスタートしました。
特にトップセールスがやる意味が大きいのは、BANT条件を判定する基準とロープレです。「顧客になにを話して、なんと言っていたら受注見込みがあると言えるのか」は営業を散々やって身につけるものなので、トップセールスが感覚値で持っているこの部分を細かく言語化して、メンバーにインストールしてもらう日々を繰り返しました。ここの手を抜くと、あまりうまく行かないと思います。ロープレは、ほぼ毎日やりました。
亀田はフィールドセールスも兼務していたので、インサイドセールスメンバーのスキルアップをしながら供給されたアポをクローズしていました。
2018年4-6月の結果が以下です。
受注率は13.6%でまだそこまで高くないものの、受注貢献件数6件は期待値を超えていました。また、日々のロープレでメンバーのトークスキルがどんどん上がっていたので、これを継続するとかなり良さそうという手ごたえがありました。
この辺りで、僕が気にしていたことが二つあります。
一つ目は、メンバーのやる気です。新卒1年目なので元気いっぱい頑張ってくれていましたが、新規架電なのでハードな業務です。放っておくと「また架電か」となってほとんどの場合やる気が無くなっていくと思いました。
ですので、アポを受け取った営業メンバーには、絶対に丁寧なフィードバックと感謝をするように繰り返し伝えました。「アポやってみてこういう内容で良かったよ。次はこうするよ。また報告するね」とか「ちょっとニーズがズレてたから、次の架電からこういうトークをしよう」とかのフィードバックを必ずしてもらいました。
「フィードバックをしない人には、インサイドセールスが定着してアポ質が良くなった後も、絶対にアポを供給しません」とちょっと強めに言いました。めちゃくちゃ大切だと思っていたので。
また、「アライドが今までやっていた営業を変える新しい取り組みをみんなで創ろう」という未来を伝えることを僕がやっていました。
二つ目は、インサイドセールスじゃなくてテレアポ部隊になってしまうという懸念です。架電してアポが取れるようになっても、それだとただのテレアポするだけだし焼き畑営業だなと感じていました。
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別件ですが、この時、旧インサイドセールスメンバーだった2名には、サイト訪問通知が来たリードへの架電をやってもらいました。弊社では『トリガー』と呼んでいます。2018年4月からpardotをいじってトリガーを使い始めました。これはめちゃくちゃ成果が出ました。
アライドのサイトに来てくれた人なので、結構な割合で「今ちょうどこういうの検討してるんですよ」という話が出て、十分な数の受注に繋がりました。もちろん情報収集で直近ニーズ無しもありますが、非常に有効な営業アプローチのきっかけになりました。
ある大企業の本部長の方のトリガーが飛んで、1分後に電話したら「やっぱりそういうの(アライドのサイトを見てること)ちゃんと見てるんですね!気持ちいいですね!営業来てくださいよ!普通だったら営業電話出ないですよ笑」という会話ができて、非常に大きな受注ができました。
営業貢献度の高い施策だったので、2018年上半期の全社アワードで表彰されました。嬉しいです。
トリガーもいろいろ試行錯誤したので、別のところで書きたいと思っています。
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③2018年7~9月 改善。テレアポ部隊化とCRMのチャレンジ。
亀田がリーダーを務めるインサイドセールスチームは、ロープレをたくさんしてトークスキルを上げてアポ質を上げることを継続しました。
そして、テレアポ部隊になってしまうことを避けるために、CRMをやり始めました。
「テレアポ部隊じゃなくて、種まき、温めをして、顧客にとっても適切な時期に商談をするのがインサイドセールスだ」という話を当時メンバーに説明していた図がこれです。
数は適当です。
これを繰り返し話して理解を深めながら、CRMを着手しました。
CRMは、Salesforceとpardotを使いました。
こんな感じで始めました。
『個人を信用してもらうこと』を特に大切にしていました。理由は、BANT条件の中でも特に『時期』のコントロールが困難だからです。
全然需要が無いときはどんなに営業されても発注しなくても、会社の方針や戦略が変わったから急に検討を始めるということはよくあります。
『顧客が今発注する理由』を作るのも営業の重要なスキルですが、どうしたって限界があるので、営業スキルを上げるとともに、営業スキルだけでは乗り越えられない『時期』の要素をカバーをするために、CRMで信用を創ってニーズ発生タイミングを逃さないようにしました。
信用を創ると言っても、難しいことはしていなくて「ああアライドの亀田さん」と名前を覚えてもらうとか、「亀田さんってこういう人なのか」って人となりを感じてもらうとかです。
▼メンバーが最近作成したCRM文面です。
冒頭に自己紹介を入れたり、ゴールデンウイークは自分はこう過ごしますという文章を入れたり、です。
『自分はこういう人間です』ということを知ってもらうことを目的にして、こういう内容を記載しています。現在も、メンバーがいろいろテストをして改善し続けています。
MAを使ったメール配信をしましたが、ステップメールはやっていないです。僕自身がステップメールで需要喚起されたことが無いことと、『開封したから少し興味ある』とか『クリックをしたから結構興味ある』というロジックを全く信用していないからです。
ナーチャリングという言葉は好きじゃないので使っていないです。顧客は『育成』するものでは無いと思っています。アライドのCRMは信頼してもらうことが目的なので、ナーチャリングというとズレてしまいます。
2018年7-9月の結果が以下です。
かなり良くなってきました。
ただ、CRMの成果はまだ出ませんでした。信頼をしてもらうというCRMの成果が出るのは取り組み始めてから3-5か月はかかって、早くても11月ごろだろうなと思っていました。
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④2018年10~12月 CRMが花開く。ひとまず完成。
この期間は、ロープレでひたすらスキルを向上することと、CRMを科学して『CRMを送ったあとの架電での会話が、人として信用されてきているか』をチェックして改善する日々でした。
CRMは少しずつ成果が出てきました。
という報告が聞こえてきました。
最終的に、12月頃には、
という受注も出ました。
コントロールしにくい『時期』をCRMで補完して、顧客の検討タイミングをトリガーで検知する、という、とても美しい流れができました。クールです。
2018年10-12月の結果が以下です。
めちゃくちゃ良くなりました!
CRMからの成果も出て、刈り取り型の営業も脱却することができました。
完全に営業文化として定着させることができました。
新卒1年目のメンバーと、新卒2年目のリーダーで、インサイドセールスが定着するまで創意工夫を重ねて愚直に努力をしてくれたことにとても感謝しています。
2018年下半期の全社アワードで、このインサイドセールスの取り組み自体が表彰されたし、インサイドセールスチームリーダー&フィールドセールスを務めてくれた亀田は、Bestメンバー賞を受賞しました。全社の非管理職の中から1人の受賞です。おめでとう!
(右は社長の豊増です)
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⑤12か月間の振り返り
前提として、これが無かったらうまく行かなかったなと思うことが四つあります。
①インサイドセールス構築のための全権を委任してもらったこと
Salesforceをいじくるとか、メンバーのミッションを変えるとか、インサイドセールスを構築するために必要なことは、全て僕が決めて事後報告で「こうします」で進めることができました。
ここには書いていない細かい修正や判断を週3回くらいしていたので、もし、都度細かい報告や許可を取らなきゃいけないとかだったら、途中で心が折れていました。
「任せるって決めた人には任せる。いちいち許可取らなくていい」というアライドの文化が好きです。
②短期成果を求められなかったこと
隔週くらいで、現状・課題・次にチャレンジすること、を報告はしていましたが「3か月で目に見える成果が出てないからダメ」みたいな判断をされませんでした。
インサイドセールスの導入は、セールス文化を変えることです。組織文化を変える取り組みで短期で成果を出すことはとても難しいことだと思います。どんなにうまくいったとしても、定着まで6か月、受注成果向上が見えるまで7-8か月はかかるんじゃないかと思います。
アライドも10年営業やって作ってきた文化があり、それを変えるので、すぐにうまくいくということはありませんでした。
「インサイドセールスを構築します」という僕との約束を信じて、何か月も待ってくれた経営陣に感謝をしています。よくこれだけ待ってくれたなあ。。。
③営業部隊のマネージャーも僕だったこと
アライドは、最終的にインサイドセールス機能を営業部の中に置く判断をしました。複数プロダクト扱っていて、現状の自社にはこの形が最適だと思っています。この「営業部隊にインサイドセールス機能を持つ」という判断は、僕が営業部のマネージャーで無ければできませんでした。
また、インサイドセールス導入がうまくいった最大のポイントである営業部のトップセールスをインサイドセールスチームのリーダーにするという判断も、僕が営業部のマネージャーで無ければできませんでした。トップセールスのリソースを投資することですから、他部署からの打診では無理な判断だと思います。
もし、僕がマーケティング部のマネージャーで、営業部のマネージャーが別の人だったら、交渉や調整に多大な時間を使ったでしょうし、営業部のトップセールスをアサインすることは不可能だったし、きっと「マーケが供給するアポ質が低い」とかでギスギスして、お手本のようなマーケと営業の壁ができてうまくいかなかったと思います。
セールスとマーケの責任者は同一人物が務めて、「新規受注を増やす」という1つの目的に対して責任を持ち、マーケと営業の壁ができるたびに叩き壊すことが必要だと思います。
④信じて行動してくれるメンバーがいたこと
「インサイドセールスを導入した組織体制が構築できたら、営業組織全体で受注成果が伸びる!生みの苦しみはあるけど、改善し続けたら良い未来が得られるからやろう!」という、僕が言うことを信じて実行し続けてくれたメンバーたちがいなければ、失敗していました。インサイドセールスのメンバーも、フィールドセールスのメンバーも、全員です。
「上がなんか言ってるからとりあえずやるか」みたいな姿勢だったらきっと無理だと思います。フィールドセールスにとって『供給されるアポ質が低い』って最悪なことで、めちゃくちゃテンション下がります。そこで「自分たちのフィードバックでアポ質を良くしていくんだ」と情熱を持ってフィードバックをしてもらう必要があって、未来を信じていないとその情熱は持てないと思います。
メンバーが情熱を持って行動する環境を作るのはマネージャーの重要な仕事ではありますが、それに応えてくれたメンバーに深く感謝しています。
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⑥今後やりたいこと
インサイドセールスが定着したことで、リードを無駄にしない受け皿はかなり強固になったので、PRやマーケティングを強化して新規リードを創る部分を注力したいと思っています。
インサイドセールスの進化は、営業部長の亀田が引っ張っていろいろやっていきます。
新しい取り組みで失敗や成果が出たらまたnoteを書きます。