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敵意帰属バイアスの発見:心理学的背景と攻撃行動との関連性

以前「敵意帰属バイアスとは?ビジネスシーンでの影響と対策ガイド」という記事を公開しました。

今回の記事では、敵意帰属バイアスのごく初期の研究を紹介し、最初にどのような文脈で敵意帰属バイアスという概念が作られたかをみていきます。



敵意帰属バイアスの発見と心理学的意義

敵意帰属バイアス(Hostile Attribution Bias)は、他者の行動や意図を解釈する際に、特に曖昧な状況で敵意があると判断してしまう認知バイアスです。このバイアスは、子供から大人まで幅広い年齢層に影響を与え、攻撃的な行動との関連性が示されています。しかし、最初に子供を対象とした研究で発見されたことから、その後も子供や少年を対象とした研究が多く続くことになりました。

Dodgeの研究: 攻撃的な子供は敵意的に解釈する

1980年にDodgeが発表した研究 (Dodge, 1980) で、攻撃性と敵意的解釈の関連を明らかにしました。この研究は、小学校の児童を対象に、他者の行動の意図をどのように解釈するかを実験しました。
研究結果から、相手の意図が曖昧な状況において、攻撃的な子供たちは相手の意図を敵意的に解釈しやすいことが明らかになりました。
この発見は、攻撃的な行動が認知的な誤解に根ざしている可能性を示唆し、後の多くの研究に影響を与えました。

Nasbyらの研究:感情的に不安定な少年における敵意帰属バイアス

同じく1980年に発表されたNasby他 (1980) では、感情的に不安定な少年を対象に、さまざまな写真を用い、彼らが他者の感情ををどのように推測するかを調べました。
この研究では、感情的に不安定な少年は他者の感情をネガティブで支配的、つまり敵意的に解釈しやすいという結果が得られました。

この論文では "the attributional bias to infer hostility" (敵意を推測する帰属バイアス)とくり返し述べられています。
この研究は、敵意帰属バイアスが攻撃的行動の背後にある重要な認知要因であることを示し、心理学における重要な知見となっています。


敵意帰属バイアスが社会的適応に及ぼす影響とその克服の必要性

敵意帰属バイアスは、個人の対人関係や社会的適応に深刻な影響を与える可能性があります。このバイアスがあると攻撃的行動が増え、社会的な調和を乱す要因となり得ます。現代の心理学では、このバイアスを軽減するための介入について研究されています。

このようなバイアスの理解は、ビジネスや教育の現場でも応用可能であり、適切な対応を取ることで、対人関係の改善や組織の調和を図ることができるでしょう。

敵意帰属バイアスの理解と対策:心理学が示す実践的アプローチ

敵意帰属バイアスは、心理学研究において重要なテーマであり、その理解は個人の行動や社会生活に深く関わります。
上記の研究が示すように、このバイアスは攻撃的行動と強く結びついているため、無用な対立や葛藤の原因となります。そのため、軽減の必要性が意識されています。
今後の研究の進展により、今以上に効果的な対策が開発されることが期待されます。



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文献

Dodge, K. A. (1980). Social cognition and children's aggressive behavior. Child Development, 51, 162-170. https://doi.org/10.2307/1129603

Nasby, W., Hayden, B., & DePaulo, B. M. (1980). Attributional bias among aggressive boys to interpret unambiguous social stimuli as displays of hostility. Journal of Abnormal Psychology, 89, 459-468. https://doi.org/10.1037/0021-843X.89.3.459


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