還暦になるとお墓が気になり出す
正月3が日が明けるとすぐに誕生日が来て、私は還暦になった。
だからというわけではないが、ここ数年、お墓が気になっている。
自分はどこの墓に入るのだろうか?
実は、ついこの間まで、墓のことなど考えたことはなかった。
小さい頃から虚弱ではあったものの大病することもなく生きてきたし、自分の親もまだ健在である。ただ、周りで親世代が亡くなっていく。
大学時代からの友人のお母さんが亡くなったのが数年前の1月25日だった。
結婚式でお仲人さんもお願いしたほどお世話になった方だった。
3回忌にお墓参りに行った。
お葬式は港区の江戸時代から続く古刹で行ったのだけど、そこに墓はない。
友人が子供の頃にお父さんが朝の情報番組を見ていて気に入って、その日のうちに買ったというお墓は、秩父にあった。
最近はムーミンで話題の駅で私鉄を降りて、そこからバスに乗ってしばらく進んだ山裾に、その墓はあった。
遠いところに墓があるのは、亡くなった方にも残された家族でも負担が大きいなあと思った。安かったそうだけど。行きにくいよなあ。
妻の部下が癌で亡くなったのは、もう少し前だったろうか。
ある時、妻が墓参りに行きたいというので一緒に行った。
武蔵五日市でおりてから、さらにバスに乗れば良いのに歩いたので、1時間くらいかかった。
樹木葬というのも良いものだなと思ったけれど、やはり遠いのはかなわないなあ、と思った。
両親が三男と三女なので、我が家には代々の墓が無い。
妻は実家からママチャリで行ける範囲に墓があり、子供の頃から墓掃除にも親しんでいるそうだけど、私は、墓参りも満足にしたことがない。
父方は樺太からの引き上げで定住地がなく、夕張の炭鉱に長くいた。大夕張という場所にあった寺の中に仏壇が何百と並んでいる場所があり、その一つ一つが炭鉱で亡くなった方を中心にした、その土地での墓なのだ。まるで墓場の団地だった。後年、一番上の叔父が札幌の霊園に墓を買って、そこには、父の兄弟5人のうち、父と静岡の叔父以外の3人が入っている。でも父がそこに入ることはないだろうと思う。
母方は農家なので土着の墓があるだろうけど、これも行ったことはない。
墓に縁がない育ちなのだ。
東京に住んでいて帰ることはないだろうと思っているので、このまま東京で朽ちていきたいと思っている。
でも、別に墓は要らないかなあ、と思っていたのだけど、還暦になり、どう考えても、その日が近づいてくるのを意識することになる。
周りでも墓の話が出てくる。
親が亡くなった人もいるし、田舎にあった墓が遠いので、墓仕舞いをしたという人もいる。
中には、死んでもペットと一緒に居たいから、ペットと一緒に埋めてくれる墓を買ったという知人まで出てきた。
しかも樹木葬だという。
うちにはペットはいないけど、都内で樹木葬もいいなあ。
そう思って調べてみると、結構たくさんある。
休日の朝にテレビを見ていると、草刈正雄が墓の宣伝に出ていたりする程度には、都内の墓の需要はあるのだろう。
昔ながらの御影石の墓石が立っているような墓だと都内の土地代を考えれば目が飛び出るような値段になるだろうが、永代供養墓というものならばそう高くは無い。一軒家とマンションのような話だ。
さらに都内でも樹木葬の墓というのが増えているそうだ。
何より宗派を問わないとか、宗教色が弱いのが、信心を持たない現代人にはあっているのだろう。墓の世話をしてくれる人がないという人にも向いている。
私もこういうのがいいなあと思い始めた。
子供がいないわけだから、墓の守りをしてくれる人がいないどころか、自分の墓を自分で用意しないと、入る場所もないわけだからねえ。
こんなことを考える歳になったということでしょうかねえ。