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「他人のおにぎり問題」は何を突きつけるか

朝、Facebookで流れてきた記事に驚きました。

今年の2月にある医学部の小論文問題として出された問題が凄かった。

記事中では、若干の修正をしているようだけど、これを出されたらどう答えるだろうと考えてしまった。

まずは問題を見ていただこう。以下は、今年の2月に実施された2次試験の小論文の問題だが、出題の背景で問われている概念をさらに明確化するため、今回は問題文に少々手を加えさせていただいている。
【問題】
あなたは高校の教師である。ある日、授業の一環として稲刈りの体験作業があり、僻地の農家に田植えの体験授業に生徒を連れて出かけた。稲刈りの体験作業の後、農家のおばあさんがクラスの生徒全員におにぎりを握ってくれた。しかし、多くの生徒は他人の握ったおにぎりは食べられないと、たくさん残してしまった。

[問1]
あなたは、おにぎりを食べられない生徒に対しどのように指導しますか。[問2]
あなたはこの事実をおばあさんにどのように話しますか。

(2019年 横浜市立大学 医学部医学科小論文試験 改題)

この問題自体がいくつもの背景を含んでいるわけですが、これを医学部の小論文の問題とするという事実が、また一段シャープだなと思います。

筆者は、この問題が持つ側面を丁寧に説明しています。

私が本問に接しまず気付いたことは、医師という職業に従事した場合、将来遭遇するであろう3つの事項が、課題文の中にさりげなく盛り込まれているということである。
それは、(1)少数者の人権尊重・擁護に対する考え方、(2)高齢者に対する意識の度合い、(3)言いにくい事柄を他人に告白する際の話術の3点である。

医師と言う職業に付くためには医学部を卒業する必要があります。だから、医学部入試は、医師の素質があるかどうかを選抜するものでもあるわけです。それは、ものすごく多くのことを覚えることができるか、と言う意味で頭の良さを必要とするでしょう。だから、成績の良い子が受験するわけです。でも、それだけでは欠陥のあるいしを輩出しかねないと言うことなのでしょうか、こうした小論文や面接で、かなり人権意識や少数派への配慮が試されるようです。

この問題が判断しようとしている医師の素質とは、弱者への配慮ができる「コミュニケーション能力」と言うことになるでしょう。

筆者はこれを次のように説明しています。

ガン告知の現場も含め、医師は病を抱える患者と向き合う仕事であり、時には、患者に言いにくい内容を告げなければならないことがある。包み隠さずストレートに直球を投げることは簡単で清々しいかもしれない。しかし、美しい嘘、嘘も方便ということもあるのではないか。高齢者に言いにくいことをどのように告げるか、そのバランス感覚が問われているのだと思う。

こういう能力が必要であることを医学部側が認識していることは、私のように患者になる側としては嬉しいことだと感じました。

学生の回答例を示して、最後に、あなたならこの問いに、どう答えるだろうか、と結んでいるのですが、なかなか返事に詰まりますね。

お婆さんに失礼だろう!食べろ! とか言うような教師の姿しか浮かばない私は昭和の生徒だなあ、と思います。

平成から令和になり、他人のおにぎり食べられない問題を抱える子供は増えているようです。

鍋を一緒につつけない新人社員の歓迎会問題とか、手作りの持ち寄りとかマジ無理と言う地域自治会イベント問題とか、その範囲は広がっているだろうと想像できます。その時、相手にどう話すのか。また、その事実を宴会主催者の部長や、町内会の顔役にどう話すのか。

そう考えると、医師だけではなく、昭和生まれの企業の中堅社員が直面するかもしれない問題と考えることもできます。

実に優れた思考実験になっている問題ですよね。こうした問いを考える力が欲しいです。

私ならどう答えるだろう、そう考えてみましたが、今は答えはありません。




サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。