「こども庁」が「こども家庭庁」になったからには政府には育児と介護は同レベルで取り組んでほしい
新年早々、書きたいことがあったのに、そっちは書けそうにないので、この話題から。
政府は昨年12月、子ども政策の司令塔となる新組織「こども家庭庁」に関する基本方針を閣議決定した。名称は当初案の「こども庁」から「こども家庭庁」に変わり、「2023年度のできる限り早い時期」に創設するとしている。新省庁発足で、日本の大きな課題である少子化は解決するのか。政府の経済財政諮問会議委員、規制改革推進会議委員などを歴任した八代尚宏・昭和女子大学副学長・現代ビジネス研究所長が3つのポイントを指摘する。
この中で、八代先生は重要な指摘をしていました。
第1は、縦割り行政の解消。でも、これは名称が「こども家庭庁」となり、幼稚園は文科省が手放さないという時点であまり期待できそうもない。
第2は、保育サービスの視点。ここは重点課題となりそう。
第3に、財源問題。子育て予算を特別に確保できるかどうか。
この財源について、八代先生は「こども保険」を提起している。
こども保険と言っても、郵貯で掛けるようなものではなく、「介護保険の子ども版」だというのだ。
介護保険は、40歳以上が支払っているので、その下の20歳から39歳までが、子ども保険を支払ってはどうかということだ。
給与天引きの保険が増えるだけとも言えるが、介護保険と子ども保険を同一視するという視点の転換は、いろいろなことを解決できそうな気がしてくる。
八代先生は既存の許認可保育園へのハードルの高さを生活保護並みと指摘する。
現行制度では、認可保育所に子どもを受け入れてもらうためには、その家族の状況について市町村の審査や認定を受ける、いわば生活保護と同様な仕組みである。これが子ども保険では、医療や介護保険と同様に、利用者と保育所が対等な契約関係になる。
それが介護保険でデイケアを受けるように子ども保険で保育を受けられるようになるのではないかというのだ。
幼稚園と保育所という文科省と厚労省の綱引きを解消するために「子ども園」という仕組みができたはずなのに、子ども家庭庁では幼稚園を扱わないとか、すでにグダグダの仕組みだから、このままでは大事な子供を任せられるのか心配だ。
介護だってまだまだ介護士の給料が安いとか、やっぱり家族が見るべきだとか、社会の中での位置付けが定着したわけではないけど、それでも、昔に比べれば多くの点で進歩したのではないだろうか。それはやっぱり介護保険という財源の後ろ盾は大きいと思う。
だとすれば、子供の保育というか「子育て」を社会に開放するためには、何らかの財源が必要で、そこに「子ども保険」という仕組みの導入は有効かもしれない。
子供の数が減り続ける中で、こども家庭庁は子供のために何ができるのか。八代先生は、こんなふうに記事をまとめている。
今後の保育所は、待機児童の解消という目先の目標を超えて、限られた層への福祉から、誰にでも開かれた公共性の高いサービスを応分の負担で提供する場へと転換する必要がある。そのためには、家族の就労の有無を問わずに利用できる介護保険のように、子ども保険という固有の財源が必要となる。
高齢者に向けた介護の充実は、政治家にとって票につながりやすいから、比較的熱心に陳情も聞いてくれそうだけど、子供は票にならないから勢いが削がれがちだし、自民党の古老たちは「保守」の名の下に家庭で子供を見ろという姿勢を崩さない。それが「こども家庭庁」という名前に現れている。
でも、子供を家庭から切り離して、社会が見る立場に立たない限り少子化は解消しないだろうと思う。それはフランスの政策を見ればわかることだし、何より、人間は子供を集団で育てる動物だったのに、今の日本はあまりにも子育てする母が孤立している。子殺しが増えるのも生き物として無理が生じているからなのだと思う。母に任せきりではいけないのだ。
そこを率先する組織が「こども庁」だったはずなのに、家庭を入れるからややこしい。
まあ、名称はともあれ、本当に子供に視線を当てて活動する気があるのならば、とにかく介護並みに育児を社会がサポートする仕組みを作ってほしい。
話はそこからだろう。