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漫才論| ¹⁰¹「今」おもしろい漫才を目指すべき❓「いつまでも」おもしろい漫才を目指すべき❓

「今」おもしろく,「いつまでも」おもしろい漫才ができればそれが一番いいに決まっていますが,「今」はおもしろくても,10年後にみると「全然おもしろくない」と感じるような漫才もたくさん存在していると思います

「今」売れるということを目的としているのであれば,「今」だけおもしろい漫才を追求するというのも一つの手段だと思いますが,「いつまでも」漫才師であり続けることを目指すのであれば,遅かれ早かれ,「正統派漫才」を極める方向に進むことになるはずです


「いつまでも」おもしろい漫才とは?

先日の「笑点」では,1998年の「夢路いとし・喜味こいし」のお二人の漫才が放送されました。20年以上も前の漫才です。お二人のさらに昔(50年以上も前)の漫才もそうですが,「今でもおもしろい」「今でも通用する」というコメントがたくさん寄せられます。いとこいさんの存在すら知らなかった漫才好きな学生さんにもいとこい漫才をみてもらうことがあるのですが,「おもしろい!」という反応が返ってくることがよくあります

50年以上も前の漫才が今でも十分すぎるほど「おもしろい」のであれば,50年後も,いとこいさんの漫才を「おもしろい」と感じる人は結構いるのではないかと思います

耐久性のある漫才

いとこいさんの漫才には耐久性があります。漫才の耐久性を決める要素は,次の3つではないかと思います

❶ネタの完成度(しっかりとしたストーリーとオチ)
❷確かな話芸(漫才のうまさ)
❸品のよさ(もしくは人柄)

❶の「完成度の高いネタ」というのは,ストーリーとオチがしっかりとしているネタのことです。先日の「笑点」でのいとこいさんのATMのネタでも,最近の漫才ではあまりない「落語のような綺麗なオチ」が注目を集めていました

❷の「話芸」というのは,最近増えているフリートークのような漫才ではなく,昔ながらの漫才独特の掛け合いのことです。いとこいさんは最後の最後まで,凄まじい掛け合いの漫才をみせてくれました

❸の品のよさは,「人柄」からくるものだと思います。いとこさんは漫才をしているときの表情が本当によくて,みていて気持ちがいいです。人柄が悪い人の顔はあまり見たくありませんが,品がよくて,人柄がよくて,しかもおもしろい二人の会話は,「いつまでも」みていたくなります

たぶん「本物」だけが残る

この条件を満たした「いつまでも」おもしろい漫才を目指すとなると,正統派漫才師としてひたすら話芸を磨き,人間性も磨く必要があります。この方向性で,M-1決勝にいけるようなネタを作れたら最高です

「『今』だけおもしろければいい」と考えて,奇抜なことや下品なことをしたいのであればそれは自由ですが,最終的にはたぶん,「本物」だけが残ります。いまだに老若男女に受け入れられているいとこいさんの漫才は,すでにそのことを証明しているような気がします

このテーマに関する質問・意見・反論などは
「みんなで作る漫才の教科書」にお寄せください

みんなで作る漫才の教科書とは,テーマ別に分類した「漫才論」にみなさんから「質問」「意見」「反論」などをいただいて,それに答えるという形式で教科書を作っていこうというプロジェクトです

THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」

フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔  出演: おせつときょうた

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藤澤俊輔 (漫才作家/小噺作家)
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】