オードリー・タン著「デジタルとAIの未来を語る」から考えるアナログとデジタルの未来〜クラウド働き方改革のススメ9〜
2021年1月、オードリー・タン著「デジタルとAIの未来を語る」から新鮮な考え方の切り口を受け取れました。その中で、アナログの象徴である本業の印刷と、同時にこれまで進めてきたデジタル化の目指す未来が見えてきたので、書いてみたいと思います。
AIと人間の関係
まず印象に残ったのは帯にもある、「AIと人間の関係は、ドラえもんとのび太のようなもの」という言葉です。
のび太はある意味で能力的ハンディキャップを持っていますが、何かをしたいという意思があります。ドラえもん=AIは、この意思をサポートするのであって、率先してのび太の行動を導く存在ではありません。また、のび太には家族や仲間がいて、そんな周囲のみんなとも協力して課題を解決していきます。
この本では一貫して、このようにテクノロジーは有効な補助機能の一つだが、社会を底上げするために使われるもので、そのための創造性を人が多視点的、かつ共創的に発揮することが大切だと述べられているように感じます。
そして、このような考え方は、タン氏のご両親からの教育の影響が大きいようです。著書では、父からクリティカルシンキングを、母からクリエイティブシンキングを教わり、「標準的な答え」が絶対でないという概念や、型にとらわれず自分の考えを明確な言葉にすること学んだと書かれていました。
イノベーションとインクルージョン
そういう意味で、タン氏のデジタルに対する姿勢も非常にクリティカルです。
「私はデジタルから遠い人たちがいつかいなくなるとは思っていません。「デジタルを学ばないと時代遅れになってしまうよ」という態度は絶対にとりたくなく、その姿勢をずっと堅持していました。(p.69)」
そして、多視点的であるから多くの人と共通の価値を共有でき、それを目標とすることで多くの人と協同的で革新的な課題解決が可能になる。つまり革新的な課題解決を行おうと思ったら、インクルーシブな視点を持つことが大切だという考え方のようです。
「自発性」「相互理解」「共好」
こうしたタン氏の考え方は、これからのデジタル社会を生きるための素養として3つの言葉にまとめられています。
それが「自発性」「相互理解」「共好」です。
驚いたのは、これら3つの順番が乳幼児の発達過程と同じであることです。(以下発達については加藤繁美先生の著書から筆者が解釈した内容)
人は生まれて、自分が心地良いと感じることとそうでないことに反応します。やがて、それを人に伝えることを覚え(自発性)、親以外の他者や物が思い通りにならないことも知るようになります。
そして、自分の希望を受け止めてもらったり、自分も受け止めたりする心地良さを覚える中で(相互理解)、周囲の仲間と一緒に協同的な創造力を発揮していきます(共好)。
これは大人のスキルとしては、まず自分が何に価値を置くかを知る「クリエイティブシンキング」から始まり、他者の考え方や視点を使って禅問答のように色んな角度から自分に問いかける「クリティカルシンキング」を身につけ、その中で見つかった多くの人と共通の課題に対して、大きな課題を小さく分けて、多くの人と分散協力して解決していく「プログラミング思考」を実践していくという流れになります。
デジタルとアナログの関係
タン氏はデジタルのメリットもデメリットも認識した上で、デジタルを使って社会を前進させる分野に注力しています。
そういう意味で、アナログの象徴である紙の印刷物にもメリットとデメリットがあり、アナログを使って社会を前進させることも可能なのではないでしょうか?
そのアイデアのヒントになったのは、「インクルージョン」です。
私たちの印刷物、特に紙の伝票を使ってくださっている方々は、デジタル化の視点からは時代遅れと認識されているかも知れません。しかし、年齢的にUI操作が難しかったり、電源や通信自体がない環境で作業することもあるでしょう。そんなときにはアナログの紙伝票はデジタル以上に役に立ちます。
また、タン氏が重要視する3つの素養を身につけるためには、人によってはアナログの教育ツールを使った方が良い場合もあるかもしれません。
つまり、社会全体としてデジタル化に向かっていても、取り残される人を最小限にする努力を続けなければ、参加できる人が限られた社会になってしまう。そういう課題を解決するための手段として、アナログも役に立てる可能性があるということです。
私たちは、"クラウド働き方改革"と"みんなゲーム化プロジェクト"を実践する中で、アナログとデジタルの両方のメリットとデメリットを知ることが出来ました。
その上で、アナログのペーパープロダクトを使って、社会を今より豊かにする分野に注力していきます。
2021年はGoogleサービスを活用した業務のクラウド化を進めつつ、デジタルとアナログの隙間をつなぐ製品やツール開発を進めていきます。
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