著者と語る朝渋「アイデアは明後日の方向からやってくる」 嶋浩一郎 レポート
朝渋のイベントに参加してきました!せっかくなのでレポートにします。
今回のゲストは、『アイデアはあさっての方向からやってくる』の著者、博報堂ケトル代表取締役社長・共同CEOの嶋 浩一郎さんです。
以下参加レポート---
アイデアをどうやって出しているのか?アイデアは思っても見ないところから引っ張ってきている。
例えば、新聞を毎日読んでいる(新聞はリファレンスもちゃんとしてるし、凄くいい資料だと思う)。新聞はいくつか購読していて、新聞毎の書き方の違いを感じている。ニューヨークタイムズの世界の情報欄を見るのが凄く好き。
マダガスカルでは、XXなため(聞き取れず)3階に住むのがステータスになってるとか。自販機は一気に押すと一番左のものが反応するとか。
もしあなたがAprica(ベビーカーなど販売)のマーケ担当だったとしたら、どうやって売る?
ベビーカーは女性に向けて売るもの、というイメージがあるかもしれないが、「イクメン」という言葉が流行っていたら、男性も興味を持ってくれるかもしれない。 ところで、イクメン、草食男子、港区女子という辞書には乗っていないけどみんな知ってるワードは どこから出てきたのだろう....?(そのメカニズムなどは著書に記載!)イクメン、草食男子、港区女子という辞書には乗っていないけどみんな知ってるワードは どこから出てきたのだろう....?
全てのイノベーションは辺境から生まれる。
例えば出版不況の状況をなんとかしようとして、出版の現状をGoogleなどで調べる。「本屋の本が売れなくなってる」といった情報などはすぐに出てくる。しかし、その知識は自分だけの知識ではなく、ライバル社の人も簡単に知ることができる知識だ。出版不況のときにそのワードを調べていてもいいアイデアは出てこない。それよりかは出版業界に全然関係ないような情報の方が意外と役に立つ。
例えば、バイオミミックス。新幹線のパンタグラフという部品は新幹線が一定以上のスピードではしると騒音問題がどうしてもおきてしまう。これを解決したのは、野鳥の観察会に所属している人だった。
「フクロウはすごく速く飛ぶのに、飛ぶ時に音がしない。なんでだ?」
フクロウの羽のギザギザをパンタグラフにつけると騒音問題が解決してしまった。普通の解決法を考えていると、絶対解決できなかっただろう。
**アイデアをどんどん生み出す人は、一見無駄な情報をたくさん溜めている。 **
回転寿司を作った人は、遊びでビール工場を見に行き、ベルトコンベアを流れるビールをみて「これが寿司がながれてきたらおもしろいだろうなぁ」という発想をした。アイデアは、仕事モードで考えている時より、どうでもいいものを見ている時に出てくる。日常にヒントはたくさんある。
Googleの10%ルール(自分の好きなことに仕事の10%を使って良い)、無駄の大事さを知ってるんだと思う。フクロウの情報や、ビール工場の話のように10%の異分子をいれることで新しいものが生まれることをわかってやっていると思う。
ポラロイド社は昔は空軍のためのサングラスを作っていたけが、最終的にポラロイドカメラを作る会社になった。「分類不可能研究所」という部門を会社内につくって、なにの役に立つかわからないけど研究しなさいという部署がある。分類できない事って大事。分類されてるものって、すでに価値がわかっているから。分類できてないものはまだ価値が見出されていないもの。
破壊的創造の著者は、イノベーションに関して論じている本で、「一見関係ないもの」でイノベーションを生み出すと言っている。Googleで検索されているものはすでにみんな価値を見出しているもの。そこに、異分子の話を持ち込むのが大事。
「インサイト」とは人が持っているけど、表面的には見えない欲望の事。
例えば、商品開発・もの作り・広告では、読んで欲しい人・見て欲しい人などがいる。その人のインサイトを掴んでいると、その商品は大ヒットする。
大体の本にそう書いてあるけど、そんな簡単なものではない。
なぜなら、インサイトは見えないから。ターゲット自身、何を望んでいるか言語化できないから。
全ての商品はインサイトを抑えないといけないが、それは言語化されてないので難しい。
日清食品は以前凄くうまいビジネスをした。マキタスポーツの人が10分どんべい(どんべいは10分間待つ方が美味しい)という食べ方を、Twitterで呟くと、すごくバスった。日清のどんべいの開発者はその食べ方を知らなかったが、10分どんべいを試して、それを逆手に広告を打った。
作っている人は一番自分自身が詳しいと思ってしまいがちだ。日清の人は「この商品の価値は早くできることだ」と思っている。しかし、この世の中で3分でカップラーメンが提供できることがどれほどの価値になるのか?
Googleの課題解決をした広告。クリスピン ボガースカン?という会社が作った広告がとても秀逸だ。
21世紀になりたての頃、当時は優秀な学生はMicroSoftやYahoo!に行きたい人が多かった。普通は採用広告作りましょうだと思うが、改札口(マサチューセツ工科大学)の改札に張り紙をした。
「First 10digit prime found in consecutive digits of e.com」
(日本語訳:自然対数の底eの最初に連続する10桁の素数.com)
優秀な学生は「俺が最初に解くんだ...!」と問題を解いていく。そうすると、また難問が出てきくる。これを5回くらいくりかえすと、Googleの採用サイトに飛ぶようになっていた。このキャンペーンで1000人以上のエンジニアを採用した。採用通知を得た人でさえも、自分には難問をときたいという欲望がなかったはずだ。 それが、見えないことを見ようという事。優秀な学生は難問を解きたがっているはずだ、と見抜いた。
羊たちの沈黙で人間の欲望について喋っているとてもいいセリフがある。
**「欲望というのは自存するものではなく、叶えられた時に気づく」 **
人は都合がいいもので、目の前に欲しいものが出てくると平気でそれが欲しかったんだという。
何年か前に、美魔女というワードが爆発的に流行った。それまではそんな言葉がはなかったのに。目の前に現れた途端に、「ほしかった」と言い始める。人間の欲望は大半は水面下にある。
リアル本屋 (b&b)を作った時に「なんで本屋作るの?本なんて売れるわけじゃないじゃん」と言われた。でも自分は違うと思ってる。
Amazonでは知っているものをさがすことはできる。しかし、自分が認知していないものは買えない。いい本屋の定義とは、「買おうと思ってなかったのに欲しくなってしまうもの」だと思う。本屋で欲望が言語化され、気づく。背表紙を見ることで気づきを得ることができる
人は、顕在化してる情報には感謝しない。これを与えてくれるものにLOVEはうまれない。便利だなとおもうと思うが。
しかし、顕在化されてないものを教えてくれる人に感謝する。LOVEがうまれる。自分が**気づいてないことに気づかせてくれるものにファンになる。 **
ビックデータは、顕在化してるニーズを整理整頓しているだけだと思う。
実はあなたこれをしたかったよね?っていう仕事をしている方がセクシーだと思う。みんなが言語化できてない価値を言語化できる方がいいと僕は思っている。
以下質疑応答
Q.自分が手を出してみる領域を決めてたりする?習慣化してるものはある?
人は得意なことだけやってしまうけど、型にはまって同じことをしてしまうと、危ない。興味がない情報をあえて入れた方がいい。 今はねじ回しの本とか、宇宙の本とかをつねに読むとかしている。
みうらじゅんから教えてもらったんだが、絶対に自分が見ないものを必ず見に行く。宝塚のお茶会とか、昼ドラの映画化作品とか、絶対自分だと見ないもの、キンプリの上演とか。あえていっている。
社会記号を見逃さない事。最初の草食男子は絶対変なひとだったはず。
「おれ、恋愛とかいいや」とか「ネットだけでいいっす」って、当時は変な人だと思う。お一人様とかも。最初の違和感が結構大事。
日常で見た違和感を、じつは世の中にはこんなひとがいるのかもしれない...と考えてみるのが大事。(最近変だと思うのは犬や猫を散歩させてるのにバギーに乗せてる。おかしくない?)
そして、その違和感は全部メモを取ってる。大事な事は「なんでそういうことをするのか?」と考える事。
おひとりさまのワードの語源はとあるジャーナリストに、シェフの人が、「フレンチの店にひとりでくる女性の客がふえたんだよね〜。」とボソッと言ったことから生まれた。そこから、お一人様というワードが生まれた。**水面下の「実はあなたこれやりたかったでしょ?」という水面下の欲望を言語化すると、ビジネスが生まれる。 **
博報堂の新入社員の研修で、外に出てメモを取るというものがある
変わった人の行動をひたすらメモを取る。意外と色々見えてくる。企画をするというのは、違和感を感じる日常を取り出したもの。日常の違和感を大事にしよう。
「 集団的無意識」小説や映画は欲望をくみとるのが大事。半沢直樹はみんな思ってることをうまく言語化したのであそこまで流行った。雑誌とかは明示的にやっている。「30過ぎても可愛い」とか。 可愛いは昔はティーンだけだったけど、30歳にもいわれたいよね、で使われ始めた。
例えられる人は強い。抽象化できる人。抽象化▶︎具体化を繰り返すことが大事。 アーティストは無駄が大事ってわかってる。
経営者はなぜ無駄を大事にしないといけないのか ?経営者のおすすめ本の中に。ビジネス書も入ってるけど意外とフィクションがいっぱい入ってる。
未来に何が起きるのか、アーティストは感覚でそれを作品に落としていくことができる。世の中の人はこう思うだろうというものを、アーティストは水面下の心を抽象概念として取り出して表している。だから、経営者はアートを見ないといけない
ル・クルーゼという鍋の事例。あれが流行ったのは「マート」という雑誌がが流行らせたのだが、「あなたの台所のすてきなインテリア」というタイトルで売り出した。ル・クルーゼはきっとざわざわしただろう...。本当は鍋のふたがおもいからしっかり煮込めていい料理ができる!などの売り込みをしていたはず。インテリアをつくるぞーと思って鍋を作ってないはず。しかし、その売り込み文句のまま「美味しい煮物特集」などと売り出したら、多分売れてなかっただろう。作り手のこだわりは、そのまんまいっても売れないと思う。ル・クルーゼはまさにそれ。
平成は、皆を「コスパ野郎」の時代にしてしまった。 本を買うときに、「この本はどんな意味があるんですか?」とよく聞かれる。コンテンツ触れる前に、コンテンツの効能を求めている。なんの役に立つかなんで事前に知らないといけないんだろう?本なんて、役に立つかわからないものなのに....。
懇親会?で、このお店(嶋さんおすすめ)に行きましょう。と書いたら、
「この店、食べログで3.0だけど大丈夫ですか?」と言われたことがある。知らない人のつけた方の点数の方がいいと思ってる。 世の中が集合知野郎となってるとおもう。 複数のものさしをもてなくなった。
今、情報は好きなものしか出てこない。だから、辺境に行って情報をあつめてくるひとは価値がある。
Q.最近やろうとしている無駄なことってある?
A.今更日焼けサロンとか、ライザップとか。あえて極端な場所にいく。阪神応援団の副団長の前でみるとか。絶対に1人で行く。イベントにしないために。
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以上です!
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