喘息(ぜんそく)という病は、僕を強い男にしてくれた。 一話
ぜんそくに悩まされた青春時代。
スポーツができないやつは、弱いやつ。
そんな心のない言葉が横行していた時代が今となっては懐かしい。
今の時代には通用しなくなった言葉を懐かしく思うこと自体、現代は幸せな時代なのだと嬉しさを噛み締める。
ぜんそくが特にひどかった小学生の時は、登校は週2日が精一杯だった。
習い始めたそろばんも、夕方の冷たい空気に喉をやられっぱなしで、発作がひどく、一ヶ月も通うことなく辞めた。
発作の起きた時は、歩くこともしんどく、ヒーヒー!ヒーヒー!と呼吸困難がひどく、かかりつけ医の先生に、往診をお願いしていた。
発作を抑える薬を飲めど、洗面器に吐き出し、うっすら水を張った洗面器に、写った自分の顔を見て、情けなくなった。
そして、時おり、とっても悔しい感情が込み上げてくる。
「なんで、俺ばっかり」
「なんで、こんな苦しい思いをしなくてはいけないんだ」
溢れる怒りをぶつける相手もなく、枕に無駄なパンチを食らわすのが精一杯だった。
体の弱いやつなんだ。僕は。
しょうがないだろ、生まれつきなんだから。
仕方がないだろ。
第二話に続く
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