仕事のコミュニケーションはまず客観性が大事
ハッピーホリデイズ!クリスマス前にブログを書くという習わしもすっかり定着しましたね。去年は「CTOが選ぶ、エンジニアのみなさんに個人的に読んでほしい本」ということでおすすめの本を書いたのでした。今年のSTORES Advent Calendarでは趣向を変えて、エンジニアならずとも身につけておきたいソフト・スキルの話をします。
ざっくりいうと仕事でのコミュニケーションは客観性がめちゃ大事、でも主観も大事なので用量用法を守りつつ、って感じの話です!コミュニケーションを客観・主観でいくつかの種類にわけて、重要なやつから説明していこうと思います。
ということでまずは一番客観的なやつから。
客観1:事実
一番わかりやすいやつです。起こった事象を評価を加えずにそのまま記述したもの。客観性という面ではトップです。
抽象的な議論のままうまく伝えられる自信がないので、例をもとに考えてみます。
例:電ドリINNのウェブサイトリニューアル案件
うるさそうなホテルですね!
事実だけ報告すると
となります。注目してもらいたいのは、「先月比120%」が良かったのか悪かったのか、という評価が入っていないところです。社長がこれだけ報告されても、良かったのか悪かったのかわからないですね。でも、評価は事実がないとできません。なので、評価をするにあたっても事実の正確な理解と記述はとても大事です。
客観2:定量的な評価
社長は「先月比120%」って言われても良いのか悪いのかわかりません。なのでなんらかの評価が欲しいです。できることなら定量的な評価が良いです。定義っぽく書くと、数字で測れて、測る基準と成果指標が共有されている主張でしょう。
いわゆる「エビデンス・ベースド」って呼ばれるやつですね。仕事していると全部こうはいかないんですが、これができるのがベストなのは概ねコンセンサスがあるのではないでしょうか。これに基づく主張は概ね異論なく「客観的」と呼べるはずです。
Bさんの社長への報告に定量的な評価を加えるとこう。
宿泊予約数は数字で測れます。基準は宿泊したかどうかで明確(記録してなかったら大変ですね)、110%が目標なので成功したという成果指標(とその結果)も明確です。あーうまくいったんだー、というのがわかります。
客観3:定性的な評価
Bさんがこう報告したとします。
「Aさんは難しいプロジェクトをうまく完遂してくれました」は定量的な評価ではないですね。完遂はともかく「難易度」「うまさ」は数字で測れるものではなさそうです(やればできるかもしれませんが)。しかし社長とBさんがAさんの能力について共通の見解をなんとなくもっており、プロジェクトの難易度についても同じように思っているとしたら、この記述は明らかに有益です。
人間は数字で測れないものの価値についてもコンセンサスが持てるんですよね。すごい。不思議。本当かよって思うかもしれませんが、仕事だと定量的ではないもの=定性の評価も大きな役割を果たしている、というのはみなさん実感あると思います。ということで、数字で測れないが基準が共有されている主張はそれはそれで重要なわけです。
まあこれが「客観」なのかは哲学プロパーの人に語らせると一時間くらい話してくれそうですが、ここでは定性的な評価も一定の客観性があるとしておきましょう。興味がある人は道徳実在論とかについて調べてもらえるとよいと思います。
主観1:主観的な評価
「数字で測れないが基準が共有されているもの」を定性的な評価としたわけですが、基準が共有されていないものはどうだろう。そういった評価もありそうです。たとえばBさんの報告がこうだったらどうでしょう。
「Aさんマジでヤバい」は「マジ」で度合い、「ヤバい」でどうやら評価に値する仕事ぶりがあったことを示唆しています。ですが、社長からすると「マジ」も「ヤバい」も基準がわからないのでどう評価するべきかわかりません。一方さきほどの例の「難しい」「うまく」だったらもっと基準が共有できますよね。難易度、うまさは何なら定量化されている可能性もあります。
こういう 数字で測れず、基準が共有されていない主張は主観的な評価と言えそうです。定性的な評価との差が明確じゃないな〜と思うかもしれませんがそのとおりで、間主観性なんてものは人と人の間をたゆたう儚いものなのでしょう。ですが、こういう主張がまったくもって無価値ってわけでもなさそうですね。良かったっぽい、ということは伝わります。
主観2:心象
今度はBさん、こう報告してきました。
さて「感動しました」は何を意味しているのでしょうか。まあBさんが感動したってことはわかります。Aさんの事実の評価については貢献度ゼロです。しかし、仕事で気持ちを伝えることに全く価値がない、ということはないでしょう。社長はBさんの心境を把握できますし、共感することで関係性を深めることができるかもしれません。Aさんへのねぎらいの言葉も気持ちがこもったものになるでしょう。
これだとどうですか。
「なんか不安なんですよね」は有益情報でしょう。Bさんのセンサーが働いていることが伝わります。社長はウェブサイトの今後への注意レベルが上がることでしょう。だいたいこういう予感って当たるんですね…。
意外にもこういった「感じたこと」、硬く言うと心象は仕事において大きな役割を果たしていそうです。
とはいえやっぱり客観性が大事
主観的な評価も心象も大事という気がしてきました。では、この報告がどうでしょうか?
何が起こったのか、どう評価するべきか、何もわかりません。やはり仕事におけるコミュニケーションの基礎は客観性、そのしっかりした基礎の上にあってこそ主観や心象が隠し味や潤滑油として効果を発揮するわけです。
ということで、デカい声で言っておきます。仕事でなにかを主張するときは、まず客観性が大事!!!
まとめ
ということでまとめです。みなさんの仕事に役に立つ、あるいは客観性という哲学的難問との素敵な出会いになれば幸いです。
仕事のコミュニケーションでは客観性が大事
客観
事実:起こった事象を評価を加えずにそのまま記述したもの
定量的な評価:数字で測れて、測る基準と成果指標が共有されている主張
定性的な評価:数字で測れないが基準が共有されている主張
主観
主観的な評価:数字で測れず、基準が共有されていない主張
心象:感じたこと
主観的な主張は価値がある。ただし、客観を前提に使うべし
では、良いお年を〜。
おまけ:書かなかったこと
クリティカル・シンキングとの関係
あると思うんですけど、考えきれていないです。一冊くらい本を読み直してから書けばよかった
そもそも何が客観的なのか
哲学的難問。概ねコンセンサスあるやろ、またこの記事の内容で外延的な定義を与えられているやろ、ということで省略
間主観性
定性的な評価は客観とは言えなくね?間主観性という客観とは違うやつじゃね?という異論もあろう。だが省略
抽象的な議論における客観/間主観性
仕事ではときに抽象的な議論も必要。抽象的な議論においても共通理解は必要。これは何なのか
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