文読む月日 1月12日
SEMENTOS Gt.Vo / NINE SPICES 店長の藤村です。
緊急事態宣言が漸く解除され、久方ぶりにライブハウスでお酒を飲みながらライブを見ることが出来ました。
普段酒を飲む方ではないので、酒が飲めないことはそんなに辛くなかったんですが、ライブを見ながら飲む酒の旨さたるや、ライブハウスで泥酔者が続出するのも無理ないですね。
とは言っても、コロナウィルスが消え去ったわけではないので、油断せず生活していきしやしょう。
今回読んだのは、「断片的なものの社会学」という本です。
著者は、日本の社会学者、小説家の岸政彦さんです。
珍しく近くの本屋に気になる本がなかったので、新宿の紀伊国屋に久しぶりに行ったんですが、流石紀伊国屋ですね、圧巻の量と質。
これは通うなぁ。
暇が出来ると本屋に向かう身体になってしまった。
本の内容は、タイトルのどおり断片的な話が羅列されていて、これまでこのコラムで紹介してきたような、問題提議→検証→答え、というものではなく、エッセイという感じですね。
著者の岸さんは、様々な人にその人の生活史を聞き取り調査をし、社会を研究されている方のようで、この本はその聞き取り調査の中でも、調査の本筋に関係ない話や、その場のたわいもない出来事を拾いあげてかき集めたりして出来ています。
序盤の方に出てくる話の終わりに「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない」語りが美しく、一つ一つの語りが無意味であることによって可能になっている。
という一節が、自分には凄く響きました。
それはただそこにある、ということでしょうか。
この本は、息苦しい世の中に順応するでもなく、抗うでもなく、ただただそれでいいんだということを沢山の語りを通じて教えてくれます。
「何も特別な価値のない自分というものと、ずっと付き合っていかなければならない」、「何者にもなれないことを嘆く必要はなく、そもそも私たちは何者でもない」など著者の名言もずらりです。
最近作った曲にも通ずる部分があったので、そこも良かったです。
肩の力を抜いて一息つけるような一冊、まごうことなくオススメです。
次回は「脇道にそれる」という本を読みたいと思います。
タイトルからして期待大。
ではまた来月、よろしくどうぞ。