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私が動物園に展示されるときの紹介文を考えておく
世界中のいろんな動物が展示されている動物園だが、どの動物園に行っても見られない動物がいる。
ニンゲンだ。
奇遇にも私はその世にも奇妙な動物「ニンゲン」である。それ故いつか動物園に展示される機会が来るかもしれない。
そこで私が動物園に展示されたときの紹介文を今のうちに考えてみる。
ニンゲン(ningen)
ヒト属に現存する唯一の種。世界の陸地全域に生息しており、最も広く分布する生物種だ。国際自然保護連合が作成する絶滅危惧種のレッドリストでは「軽度懸念」とされている。
ここに展示されているのはニンゲンのメスでフジムラさんだ。体長は約160cm程で、ニンゲンのメスでは標準的な大きさである。
ニンゲンは自分たちが霊的・精神的に他の動物より優れており、他の生き物や動物とは一線を画す存在であると考えている節があるが、生物学的にそのような判断はされていない。
プライドが高く気難しいため懐きにくい動物である。
柵に指を入れても噛んでくることはないが、指をさす行為を異常に嫌う傾向がある。非常に繊細で、些細なことで体調を崩すため静かに見守っていただきたい。
ニンゲンは言葉と呼ばれる共通の鳴き声と、文字という記号を使って、仲間とコミュニケーションをとる。最近では、生息地域ごとに異なる鳴き声のパターンを持つことが明らかになってきている。
以前、野生のニンゲンが園に入り込んだことがあったが、フジムラさんの生息地域から離れた場所の個体であったため、コミュニケーションをとれない様子であった。
フジムラさんをよく見ると皮膚の上に「服」と呼ばれる薄い膜を身につけている。現在、地球上で確認されている動物の中で服を着るのはニンゲンだけだ。
ニンゲンはほぼ毛のない動物で、皮膚が丸出しの状態であるため、服は皮膚の保護や体温調節の役割を担っていると言われている。
また、時や場所に合わせてさまざまな服を身につけることも分かっている。その色や形は実に様々で同じ地域や住居に住むニンゲンでも1体1体違う服を着ている。
時間帯によっても服を変えており、日中用、夜間用などと分けているようだ。また、祝いや儀式の場で皆が揃えて同じ服を着ているところや、1日に何度も着替えをする個体も発見されており、服には何らかの意味合いが含まれていると推測されている。
フジムラさんのお部屋は1LDKで、寝床、広場、トイレ、水浴び場、火の出る装置や洗い場、刃物や食器などを揃えたスペースがある。
ニンゲンは布団と呼ばれる布に綿を詰めたものを寝床に敷く習慣があり、フジムラさんも寝室に布団を敷いて寝ている。フジムラさんは毎朝「オハヨ〜」と鳴いた後、布団を日光に当てて消毒している。たまに布団を棒で叩いていることがあるが、これは鳥から布団を守るために威嚇しているものと思われる。
広場では、パソコンと呼ばれるニンゲンが生み出した道具を使って作業するフジムラさんが見られる。カチカチと音を鳴らしながらパソコンを触る姿はなんとも可愛らしいので必見だ。
ニンゲンは便器と呼ばれる穴の空いた容器に腰掛け、用を足す。当園ではできるだけ野生に近づけるため、野生下でニンゲンが使う、TOTOのトイレを設置している。
用を足した後砂をかけて隠す動物が多いが、ニンゲンは水を流す。細い管をつたって便をどこかに集めているようだが、便が最終的にどこに流れつき、何に利用されているのかは未だ明らかにされていない。
ニンゲンは非常にキレイ好きで、用を足した後には体についた尿や便を木から作るペラペラの膜で拭い取る習性がある。また、1日1回は水浴びをする他、食事の後は毎回、毛の生えた棒で口の中を掃除している。非常に菌や汚れに弱い動物であり、こうした衛生面の管理はニンゲン飼育において必須の項目だ。
ニンゲンは雑食で、魚介類・肉類・野菜など何でも食べる。また、面白いことに食物を加工する習慣を持っており、その行動を「料理」と呼ぶ。
フジムラさんも食材を渡すと切ったり焼いたり味付けしたりして食べている。先日、ほうれん草を与えたところ、茹でて魚を削ったカスと黒っぽい汁で味付けして食べていた。この料理という行動はニンゲンのメスに特に多く見られ、それを家族に分け与えることでほぼ全てのニンゲンが料理した食物を食べている。
食事の様子も一風変わっており、食物は土を焼いて作った容器に入れ、鉄の道具を使って食べる。食事した後は「ゴチソウサマデシタ〜」と鳴き、使った食器を水で洗い巣穴に片付ける様子が見られる。
このようにニンゲンは非常に多くの魅力がある動物だ。このブースではそのニンゲンの生態をより自然に近い状態で観察していただけるよう様々な工夫をおこなっている。
毎日15時にはフジムラさんへの餌やり体験として乾かした草の汁を絞った番茶と砂糖と豆を練って作った茶菓子をあげられるイベントも開催中だ。
ぜひ参加していただきたい。