「ねじの豆知識」 リベット 第四回ブラインドリベット(Blind Rivet)
今回は、最近DIYでもよく活用されるブラインドリベットを詳しく取り上げます。ブラインドリベットのJIS規格を軸に詳しくみてみましょう。
ねじの豆知識 リベット
第一回 リベットとは
第二回 ソリッドリベット(ソリッドシャンクリベット)
第三回 中空リベット(チューブラリベット)
第四回 ブラインドリベット(Blind Rivet)
概要:ブラインドリベット(Blind Rivet)とは
ブラインドリベット(Blind Rivet)は、JIS B 0147:2004には「その挿入及び装着の作業が片側方向からだけしか行えなくても、一つの組立品を構成する部品を互いに締め付ける能力をもつ機械的な締結用部品」と定義されています。
ちなみにこのJIS規格は、2000年に第1版として発行されたISO 14588、Blind rivets−Terminology and definitionsを翻訳し、技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成したものです。
ブラインドリベットは定義の通り、一方の側からのみしかアクセスできない場合に多く使用されます。例えば、箱状の本体に、薄板鋼板やプラスチック板などでできた薄い部材を接合する際に使用されます。
ブラインドリベットの形状
ブラインドリベットは、本体(blind rivet body 頭部、胴部、端部及び心部から成る)と、リベットの本体に前もって組み込まれた、マンドレル(mandrel 通常は接合時に破断する破断領域を持ちます)と呼ぶ軸部によって構成されます。
ブラインドリベットの頭部は前もって成形され、常に接合箇所の挿入側(手前側)に位置します。装着時に、(マンドレルを引くか又は押して)リベット本体の頭部から遠い方(リベットの本体の端部)に成形されるかしめられた部分は「隠れ頭」と呼びます。末端は閉じていても開かれていても、又は割られていてもよいとされています。
頭部
頭部は①突出し頭 (リベット装着後に被締結部材の表面から突き出ている)と、②皿頭(装着後に被締結部材の表面と頂面が面一になる)の2種類が定義されています。
胴部
胴部の形状は5種類が定義されています。
①開放形胴部 全体が中空であって、後述のどの種類のマンドレルも用いることができます。
②延長開放形胴部 締結可能な厚さの範囲が広い開放形の胴部です。
③密閉形胴部 端部が密閉されており、装着後も密閉されたままです。
④割り形胴部 端部が二つ以上の部分になるように軸方向に分割された胴部です。
⑤溝付き形胴部 頭部の下側と端部との間に、胴部に軸方向の溝をもちます。
マンドレル
マンドレル(メーカーにより軸・シャンクとも呼ばれます)にもいくつかの種類があり、JISで定義されているのは次の6種類です。
①リベット装着後に完全に引き抜く「引抜きマンドレル」。本体は中空リベットとなります。
②リベット装着後、頭部及び軸部の一部がリベットの本体内に残留する「引張破断マンドレル」。マンドレルは、頭部から軸部への移行部又はその近くで破断します。
③リベット装着後、軸部及び頭部がともに排出される「頭部破断マンドレル」。マンドレルは頭部から軸部への移行部で破断し、断片がリベット端から排出され、中空リベットとなります。
④リベット装着後、破断しないでその場にとどまっている「引張非破断マンドレル」。装着後の追加作業によって、リベットの頭部から突き出たマンドレルの軸部を取り除くこともできます。
⑤リベット装着後、リベットの頭部頂面近くで破断する「心部を中実とするプラグ形引張破断マンドレル」。
⑥リベット装着時に、それ自身及び/又は本体の予測された変形によって、それ自身の抜け出しに対する抵抗を高める「心部を中実とする固着性強化形段付き引張破断マンドレル」。
同時にこのマンドレルは、リベット装着後にその軸部及びリベットの胴部がともに締結部のせん断面となるように、リベットの頭部頂面近傍で破断するようにデザインされます。こうすることで広範囲の部材厚さを締結する機能を持つことになります。
また、軸部を押し込み締結する「押込みピン」も、マンドレルを説明する文脈で定義されています。これはリベットの頭部から突き出した状態に組み込まれたピンで、被締結部材を貫通してリベットを挿入した後、リベットの頭部頂面と同じ高さになるまで押し込まれます。これによりリベットの端部を押し広げ、「隠れ頭」を成形します。
ブラインドリベットの心部
ブラインドリベット装着後の心部は次のような形状をとります。
①中実心部 リベット装着後、全体的にマンドレルの残留部分によってふさがれる心部。
②半中実心部 リベット装着後、一部だけがマンドレルの残留部分によってふさがれる心部。
③中空心部 リベット装着後、マンドレルは残留せず、中空のままになる心部。
これまで見てきた本体(頭部、胴部、端部及び心部)とマンドレルの組み合わせにより多様な用途に応えることのできるブラインドリベットが製造されています。
さらにフランジ幅の広いタイプや高荷重や耐振性を高めた高強度タイプなど、各社が工夫した製品が流通しています。
ブラインドリベットの使用方法
最初に、接合する材料にリベットを通すための下穴を開けます。この穴は通常、リベットの直径よりわずかに大きくなります。メーカーのカタログで確認できます。
次いで、リベットを穴に挿入し、リベットの頭部が接合している材料の表面に位置するようにします。
リベットガンやハンドリベットに、セットされているブラインドリベットのマンドレルを差し込み、リベットガンならトリガーを引く、ハンドリベッタならハンドルを握ると、リベットの本体が圧縮され、マンドレルは破断して抜け落ち、材料をしっかりと接合します。ハンドリベッタは握っていいたハンドルを開放するとマンドレルが排出されます。
ブラインドリベットの長所と短所
ブラインドリベットの長所と短所は次のようにまとめることができます。
長所:
簡単な取り付け: ブラインドリベットは、特別な訓練を必要とせず、比較的簡単に取り付けることができます。
一方向からの取り付け: 一方の側からのみアクセスできる場合でも使用できるため、多くの場面で利用されます。
迅速な取り付け: ブラインドリベットは一般的に取り付けが迅速で、生産性を向上させることができます。
短所:
一度取り付けると取り外しが面倒:一度ブラインドリベットを圧縮すると、リベットを破壊しない限り取り外すことができません。また、再び締結するにはリベッターのような専用工具が必要です。そのため、誤ってリベットを設置した場合や、後で修理が必要な場合には、問題が発生する可能性があります。
強度の制約:ブラインドリベットは他のリベットと比較して一般に強度が低いため、強度が求められるアプリケーションには適していません。
要約すると、ブラインドリベットは、簡単で迅速な取り付けが必要な場面で広く使用されていますが、その強度や取り外しの制約に注意する必要があります。
特徴のあるブラインドリベット
これまで見てきたようにブラインドリベットは、ワークの片側から迅速に半永久的な締結を行うことができる便利なファスナーです。その特徴をさらに伸ばした製品が、メーカーの工夫によって生み出されています。
ドライブリベット
なべ・トラス・ラージトラス・フラット・皿などの頭部の形状があり、ハンマー等で簡単に取り付け可能な高強度リベットです。振動にも強く、芯ピンを内部に落とし込むか、背面から押し出すことで簡単に取り外せます。
アルミハンドリベット
指でピン(頭部)を押し込んで取り付けが可能なアルミニウム製リベットです。狭い隙間や力の入りづらい所、指での締結が困難な所に使用する専用工具もあり、大量締結にも対応します。
樹脂リベット
材質はPOM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、導電性PP(ポリプロピレン+カーボン)等で、多種多様なカラーから選択可能です。廃棄する際に分別する必要が少なく、リサイクル推進に向いています。錆・薬品による腐食がなく絶縁体にもなり(導電性PPのような例外あり)、安全性にも寄与します。
連続リベット
マンドレルに多数のリベットをプリロードして、迅速な施工が可能です。折れマンドレルが出ず、適切なマンドレルを決定したり、マンドレルの摩耗をチェックしたりする必要がありません。
ブラインドリベットナット
ブラインドリベットの原理を応用したブラインドリベットナット。取付けをワークの片側から「ナッター」と呼ばれる道具を用いて施工できます。肉厚が薄く直タップできない金属板や溶接ナットの使えない樹脂素材等に、めねじを追加してねじ締結を可能にします。
新しい素材やテクノロジーの導入によりファスニング技術の革新も求められ、それにつれてリベットも進化しています。今後もさまざまな分野で、リベットは活用されていくことでしょう。