「他者」こそが、自分の可能性を拓いてくれる。《生き方見本市2018KOBE開催レポート》
生き方見本市。元々は、東京で開催していたイベント。友人が主催でやっていたこともあり、「関西でもやろうか」「やりたいな」という話になって、今回の開催だった。本当は、9月30日に開催予定だったが、大きな台風の影響があって、12月9日にリスケジュールした。それも、なにかの縁だったのかもしれない。
生き方見本市。その名の通り「生き方」の展示会のようなイベントだ。さまざまな生き方、暮らし方、働き方の実践者をゲストに招いて、話を聞きつつ、交流もするというイベント。神戸開催ではテーマをいくつかに分けて、セッションごとにトークを楽しめるという構成にした。
別に仕事じゃない。頼まれてやっていることじゃない。だから、自由に遊んだ。将来、一緒に仕事をしたいと思っているメンバーに声をかけ、今回は遊びかもしれないけど、一緒にやってほしいとお願いした。ぼくの独善的な判断でみんなに声をかけさせてもらった。仕事が忙しく、徹夜するタイミングもあったのに、一緒になって楽しんでくれたメンバーもいた。みんなには感謝しかない。
初めてのイベントだったので、下書きがない状態からスタートした。それぞれがそれぞれのスタイルで関わって、一緒にイベントをつくりあげてくれた。おかげさまでぼくの出会いも大きく広がったように思っている。当日は、ゲストも参加者も素敵なメンバーであふれていた。そして、本当にいろんな地域からみなさんがお越しくださっていた。
途中、リスケジュールをしたタイミングでは、チームの士気がかなり下がった場面もあったように思う。リーダーとしてみんなに楽しんでもらえる場を用意できていなかったことは、圧倒的な力量不足のためだと思っている。この部分は今後もっと力をつけていきたい。みんなには申し訳なかった。
それでも、開催一週間前くらいから参加申し込みもどんどんと増え、最終的には182名もの一般参加、ゲストと運営を含めると約250名のメンバーが、あの日kiitoに集まってくれた。とってもうれしかった。
ぼくはずっと、セッションのコーディネーターをしていた。ほかのセッションも聞きたかったのだけど、しかたない。でも、初めてコーディネーターにチャレンジしてくれた仲間たちがいた。安心してお任せしていた。いい経験になったと言ってくれた。よかった。
当日、素晴らしかった出会いがある。ふたつ。それも、みなさんに知っていただきたい。
ひとつめ。『つち式』の東くんとの出会い。「地方でつくる生業と暮らし」というテーマだった。そこで「人間との関係だけではなく、自分は、人間以外との関係づくりを考えていきたい」と彼は言った。
ぼくは、人と人のあいだづくりはたくさんやってきたが、それ以外はどうだったのか。彼から強烈な問いかけをいただいたように思った。彼とは、時間の使い方や思考の仕方がまったく異なるけれども、ゆえに大変魅力を感じた。ぼくに何ができるかはわからないけど、自分がこれからチャレンジしていく道がそこにあるようにも思った。なにか一緒にやりたいなと。
もうひとつ。「福祉と自分をつなげて生きる」というセッションがあった。そこで「障害のある人とどう仲良くなったらいいのか」という参加者からの問いに対して、また、会場にいた別の人(脳性麻痺のある人)にマイクを向けた。彼から「ぼくにしゃべりかけてくれたらいい」という返事があった。ゆっくりゆっくりと確かにそう話してくれた。
障害者ではなくて、ぼくがいる。そのぼくに普通に話してくれたら。それだけだった。そこで会場の雰囲気が変わったように感じた。ゲストだけが語るのではない。参加者からの投げかけによって、むしろ学びが深まっていくという瞬間を見た。これこそが「場づくり」なんだと思った。自分の力量を圧倒的に超えていく。そこに「場の力」がある。ぼくは半泣きになったが、コーディネーターは泣かないんだって思って、泣かなかった。終了後「一人だったら泣いていました」との声を参加者からもいただいた。
素敵な思い出がたくさんできた。生き方見本市に関わりたいです、という声も本当にたくさんいただいた。これからはもっとたくさんのみんなと一緒に、このイベントをつくっていきたいと思っている。
最後に。以下にクロージングのあいさつを書き起こしたい。ぼくの記憶から紐解いて書いたので、ちょっと異なる部分もあるかもしれない。その点については、ご了承いただきたい。
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今日お越しくださったみなさん、ありがとうございました。最後まで残ってくれて、主催者としてとてもうれしく思います。
こういう機会を設けることができて、よかったと思っています。みんなと一緒に場をつくることができて、ありがたかった。感謝しています。
みなさんに、いくつか、お伝えしたいことがあります。
こうした企画をしているぼくたちですが、生き方に答えなんてない以上、ぼくたち自身も悩んでいます。企画者もゲストも。日々、試行錯誤をしながら、今の最良の解と思われることをやっていく。そして、更新していく。悩まないことなんてないです。チャレンジしていくことしかない、と思っています。 生きて、ちゃんと生きて、自分にしか生み出せない答えをつくっていけると素敵だと思っています。
ぼくは思うのですが。やりたいことは一人では見つけられない、と。だから仲間がいることは大切だと思っています。ぼくも一人ではできなかった。大切なことは他者と関わることだと思っています。やりたいことはあなたと自分のあいだにある。なにかと自分のあいだにある。そういうことだと思っています。問いを立ち上げよう。自分が問われる、揺さぶられる体験こそが、人生を豊かにしていくのではないでしょうか。だけど、やりたいことなんて本当はなくたっていいとぼくは思っています。
ウチにもインターンの学生が何名かいます。若い人たちと関わることも多い。この場にもたくさん来てくれていると思います。最近、まちづくりに関心があるとか、地域活性の仕事をしたいという若い人が増えてきました。そうしたことは、とても素晴らしいことだと思っています。そして、ぼくはそういう仕事をやっているように見えるかもしれません。だけど、ぼくがやっているのは「まちづくり」じゃないとも思っています。
社会とか地域とか、そういった抽象的なことはいいんです。結果だから。まちづくりや地域活性というのは、あくまでも結果なんです。具体的な◯◯さんの幸福度や楽しみがちょっぴり増えたり高まったりすることが、結果的にまちづくりになるんです。見えない遠くのなにかのためにやるのではなくて、目の前にいる人と楽しむこと、あるいは目の前にあるものや場所を面白がることができたほうがいいと思っています。具体的ななにかが大切だと思っています。
少し感じることがあります。だれかに貢献しないと価値がない、つまり「なにかの役に立たないと意味がない」という考え方は、現代の病なんじゃないかと。社会課題を解決しなくても、もっと言うと、だれかに喜んでもらえなかったとしても、それでもなおそれぞれの人は生きる価値があると思っています。
この企画をしていて、問い合わせをいただきました。おそらく、電話口から推測されるに、身体に麻痺のある方のように思われました。一言ひとことをゆっくりと伝えてくださいます。そしてその方はこう言いました。
「kiitoにはどうやって行ったらいいですか。」
みなさん、この会場に来るときに三宮駅から歩いてきましたよね。最後、陸橋を通ってきたと思うのですが。でも、車椅子は陸橋を通れないんです。ぼくも電話をいただいて初めてそうか、と思いました。ぐるっと遠回りしないと行けないんですよね。このことに気がついていた方は、そんなに多くないかもしれません。ぼくもそうだったように。障害のある方が、参加しやすい場っていうのはそれほど多くないんです。
生き方見本市、面白かったと思っています。でも正直、この企画はまだまだ狭いし、浅いです。生き方を語っているのに、まだ全然だと思っています。社会の中には可視化されにくい、あるいは可視化されていない「アウトサイダー」「マイノリティ」がいます。ぼくはそういう人たちともっと関係しながら、一緒に遊びたいと思っているんです。もっと幅広い「生き方」が可視化される場をつくりたい。
生き方と言いながら身内でやって、身内で終わるのは面白くない。本当に自分の世界観をぶち壊されるくらいの「他者」にぼくは会いたい。また、見本市を企画するから一緒にやりたい人は声をかけてほしいと思っています。
なにを持ち帰ってもらえるでしょうか。これで終わりではなくて、また会える関係性をつくることができると、ぼくはうれしく思います。前に立って偉そうな話をしているとすごそうに見えるかもしれないけれど、クズですよ。普通の人ですよ。だから、またこれからも一緒に遊んでほしいと思います。
今日はありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。
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この挨拶をさせていただいて、疲れがどっと出た。8時間弱、真剣に、全身で人の話に耳を傾け、場にいる人みんなとできるだけコミュニケーションした。そりゃ疲れるよ。藤本、お疲れさまでした、と思った。みんな、ありがとう。
Photo:其田 有輝也
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