付箋紙による条件反射
先週、所属先である会社のチーム合宿に1泊2日で参加しました。本コラムでも何度か取り上げたことがありますが、対面(リアル)で直接会うことの意義を改めて感じました。その合宿中にmiroというツールを使う機会があったのですが、miroを使うことで気づきがありました。
最近、miroというツールを使う場面が出てきました。既に使ったことある方も、まだの方もいらっしゃると思います。
参照サイトによると、miroは「オンラインホワイトボードサービス」と説明があります。いつも使っているホワイトボードがそのままオンライン上で使える、というイメージです。書くこと・消すことに加えて、付箋紙や図を使った情報整理もできます。複数人同時作業で編集することも可能です。オンライン通信はZOOMなどが使われることが多いですが、こうした画面上での情報整理・加工の機能が充実していません。miroはそれを補う形のサービスと言えます。
実物のホワイトボードだとスペースに限界がありますが、miroは無限にスペースが使えて履歴も残せる点も長所でしょう。ある程度の利用範囲まで無料で十分ですが、例によって有料プランにすることで保存容量が増えたりプロジェクト管理機能がついたりする感じです。
合宿中の会議室には実物のホワイトボードもあり、付箋紙の準備もしていたのですが、PC上の画面を共有しながらのスタイルで進めていたこともあり、そのままPC上で行おうということになりました。その上で、せっかくだからmiroを使ってブレーンストーミングをみようということになりました。
最初は慣れなかったのですが、要領をつかむと実際の付箋紙を使ってアイデア出ししているのとほぼ同じような感覚を、画面上で感じることができました(まったく同じとまではいきませんでしたが)。そして、画面上の付箋紙に思いついたことを書き込んでいった結果、ある企画案を1つ思いつくに至りました(この企画は、今後実用レベルの検討に移ることになります)。miroを使うまではまったく浮かばなかったアイデアだったので、自分でもびっくりです。
この経験は、「条件反射」によるものと考えます。
条件反射については、パブロフの犬が有名です。
犬に餌をあげるときに鈴を鳴らすようにし、鈴を鳴らしたら餌をもらえると犬に覚えこませる。そうすると、犬は次第に鈴の合図がごはんの時間だと思い込み、最終的には鈴を鳴らすと(条件)、よだれをたらす(反射)ようになる。学習によって後天的に起こる反射的行動のことで、聞いたことある方もいると思います。
ちなみに、心理学用語では無条件反射という言葉もあります。これは、学習によらず先天的に起こる反射的行動のことです。刺激に対して頭や目を向けようとする反応や、食べ物に対する唾液分泌がその例です。
私自身の経験(自分の使い方)として、付箋紙の使い方は主に2つです。他者に渡す書類や回覧に注意点や一言メモをつける時と、アイデアを自由に出し合うブレーンストーミングの時です。ブレーンストーミングの時はほぼ例外なく付箋紙を使ってやっている自覚があります。
今回も、miroで付箋紙を見た途端、「アイデアをひねり出さなければ」「何か思いつくことはないか」と、数分間ほど頭がアイデア出しに全集中したような感じがしました。条件反射で何か思いつこうとするモードに切り替わったというわけです。その時に思いついたのが、上記の企画案です。
私はもともと、アイデアを思いつくことが苦手な自覚があります。過去の投稿でも時々取り上げた「ストレングスファインダー」では、全34の資質のうち「着想」は25位となっていて、アイデア出しが苦手なのを物語っています。複数人でブレーンストーミングをすると、たいてい付箋紙の数は私が最少になります。今回も、出てきたアイデアはごくわずかな数でした。おそらく、miroの付箋紙というツールがなければ、上記の企画が出てくることはなかったでしょう。
miroの他にも、合宿を行った場所が非日常空間であること、対面で行ったこと、などの要素が影響していたかもしれません。
また、重要な前提条件として、「実物の付箋紙の使用経験があるから」ということも想定できます。実物の付箋紙でブレーンストーミングに有効であるということを体感しているからこそ、類似のmiroの付箋紙を見た時に条件反射的に思考モードが切り替わったのかもしれません。これが、付箋紙というものに触れたことがなく、オンラインのmiroで初めて付箋紙を使う人であれば、同じような効果は期待できない可能性があります(そうしたツールに使い慣れている若手人材であれば、関係ないのかもしれませんが・・・)。
というわけで、環境設定・場の設定は思考の質・量に影響する、そんなことを改めて感じた出来事でした。
<まとめ>
環境設定・場の設定次第で、思考の質・量が変わる。