目的地と現在地の把握
前回の投稿では、間違った情報(土日限定の特急列車という盲点)を基にしたために、間違った解決策を導き出してしまったというお話でした。
https://note.com/fujimotomasao/n/n70f388f34420
私たちが意志決定・行動する時の流れを以下のように整理し、3.情報収集に関する注意について考えました。
1.目的地を決める(目指す駅)
2.現在地を確認する(最寄り駅)
3.現在地から目的地に至る方法に関する情報を集める
4.集めた方法をもとに思考する
5.思考した結果とるべき解決策を決める
6.決めた解決策を実行し目的地に到達する
私が普段いろいろな会社を見聞きする機会では、3.以外にも1.2.4.5.6.すべての工程でつまずく場面があります。中でも、1.「目的地の設定」、2.「現在地の確認」はすべての始まりでありながら、難しいものです。
まず、組織が、どこへ行くべきか・行きたいのか、目的地を的確に設定する必要があります。駅が決まらなければ、どの方向に向かって進めばよいのかわかりません。しかしながら、会社が将来的にどうなっているべきかのビジョンを明確に描けている会社は、実に少ないものです。
目的地の設定には、自社のミッション(使命)と外部環境の分析が欠かせません。自社は何によって社会に貢献することを存在意義とするのかを再確認すること、今後の社会経済や自社の業界、お客様はどのように変化していくのかを想定することです。
自社の使命でないことに手を出すのは企業活動として本質的ではありません。また、使命を大切にしていたつもりがいつの間にか外部環境の変化についていけず淘汰されてしまったという企業もたくさんあります。よって、これらを踏まえた上で、10年後どうなっていたいかという、進むべき目的地を的確に打ち立てる必要があります。目的地が大阪なのか札幌なのかで、進み方は全く異なります。
また、今自社がどの最寄り駅付近にいるのか、現在地を正確に把握する必要があります。「問題」とは、あるべき姿と現状のギャップと言われます。すなわち、目的地と現在地の差分です。つまりは、目的地に加えて現在地も把握できないと、何が自社の問題であるのかが定義されないということです。問題が定義されなければ、取り組むべきアクションも定義されません。
しかしながら、現在地が把握できている会社も多くはありません。ヒト・モノ・カネの経営資源がどのような状態になっているか、目的地にたどり着くために優先的に活用するべき強みは何なのか、明確にしなければ、効果的に目的地にたどり着くことができません。あるいは、目的地自体にたどり着くことも困難になります。
普段お会いする企業関係者の方に、「貴社の強みは何ですか?」と尋ねることがあります。そうすると、「強みは特にない」という回答が返ってくることが時々あります。しかし、強みがないということはあり得ません。なぜなら、強みが本当に何もなければ、お客様から選ばれることがないため、今存続できていないからです。
同業他社や代替品と比べて、どんな良さが選ばれているのか。製品の品質なのか、品質で差別化が困難であれば品質以外のどんな要素が選ばれる要因なのか。「消去法的にうちに依頼が来ているだけ」という認識の企業も時々見られますが、消去法で最後まで消えないことを可能にする何らかの理由があるからで、その理由が強みの源泉になるはずです。使える資産としてどんな強みを持てているのかを浮き彫りにするためには、徹底した振り返りが必要になります。
現在地の認識が間違っていると、目的地に近づけると思って進んだルートが、目的地から遠ざかる結果になることもあり得ます。大阪が目的地であっても、現在地が東京なのか福岡なのかで、進み方は全く異なります。コロナ禍によって、また一段と変化が速くなった外部環境の中で存在価値を発揮し続けていくためにも、自社の現在地の把握にはこれまで以上にこだわっていくべきでしょう。
<まとめ>
目的地と現在地を的確に把握しないと、進むべき道が見えてこない。