オフィス設計を若手人材が発案するという事例
12月27日の日経新聞で、「YOUTH FINANCE(12)オフィス、若手が発案 住友・第一生命、幹部に直言」というタイトルの記事が掲載されました。これからのオフィスのあり方を検討し提案することをプロジェクトとし、若手社員にプロジェクトメンバーとして活動してもらい、形にする事例を取り上げた内容です。
同記事の抜粋です。
同記事からは、3つのことを考えました。ひとつは、オフィスの役割が変わっているという点です。
コロナ禍という出来事もあり、テレワークという就業形態が広がりました。テレワークという就業形態が可能な事業や職種とそうでないものとがありますが、以前はほぼ無条件に仕事=出社という概念だったのが、今では「出社は仕事の手段」という概念に変わったことは確かです。
そうであるなら、オフィスという要素に改めてどんな機能をもたせるべきなのか、再定義する必要もあります。どのように再定義するとよいかは、一般論から導き出される一定の要素もあると思いますが、各社の理念や価値観、ビジネスモデルなどで創造性豊かに設計してよい領域だと思います。
2つめは、若手社員に裁量権を与えて委ねることの意義です。
なんでもかんでも若手社員にアイデアの発案を委ねる、ボトムアップするのがよいとは限りませんが、本テーマは委ねるのが有効な領域かもしれないと感じます。
なぜなら、同記事中にある(おそらく新卒の)「入社10年前後の約30人」のような層は、働き始めてからの大半をコロナ禍の環境下で四苦八苦した方々で(マネジメント層はマネジメント層の四苦八苦ももちろんあったはずですが)、かつオンラインを含めた次世代インフラへの感度も高いと(ベテラン社員に比べて比較的)想定される層だからです。
長年、従来のオフィスという環境に慣れ親しんだ人材層は、コロナ禍も終わり、今後の就業形態・オフィスのあり方を考えようとすると、どうしても「従来型に戻す」イメージにとらわれかねません。そうした「従来型」の呪縛のない人材層が発案することが、より優位性を発揮しやすいかもしれません。テーマとキャスティングの合致の観点から、参考になりそうな組み合わせだと感じます。
3つ目は、小さなプロジェクトマネジメントを体得する経験になるという点です。
こうした小さなプロジェクトであっても、その成功のためには、オフィス設計の目的を明確にする、その目的を浸透させる、目的に合った目標の設定とPDCAを遂行する、関係者を巻き込む、利害関係を調整する、といった、プロジェクトマネジメントの諸要素を含んでいます。よって、オフィス設計というプロジェクトを通じて、プロジェクトマネジメントの素養を高める一助になるのではないかと思います。
また、プロジェクトがうまくいかなくても、お客さまには直接の迷惑がかかりません(仮にオフィスレイアウトの変更が大きなパフォーマンス低下を招いてしまうなどになれば、間接的に迷惑がかかる可能性があり、それは避けるべきですが)。うまくいかなければ、元に戻したり、再度リニューアルしたりして、社内ごとでやりかえればいいだけです。
将来的にマネジメントを担えるようになるうえで、案外こういう小さなプロジェクトの試行錯誤や成功体験の蓄積があるかないかは、気づくと大きな差を生み出していくのではないかと想定されます。
とれるリスクをとって任せてみるという観点から、参考になる事例ではないかと思います。
<まとめ>
テーマに合ったキャスティングで、小さなプロジェクトマネジメントを体得する機会をつくる。