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労働組合の今後の役割を考える(2)

10月17日の日経新聞で、「変わる労組(上)さらば「正社員クラブ」 パートや外国人も組合員に」というタイトルの記事が掲載されました。「正社員クラブ」とやゆされてきた労働組合が変わろうとしているとして、その動きを紹介した内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

「現場で働く短時間労働者が組合に加入しなければ、職場の課題解決はできない」。イオングループ労働組合連合会の門馬輝明副会長はこう力説する。組合員数は約31万人と20年前の6.5倍となった。

小売企業では店舗で働く従業員の多くがパートやアルバイトなど短時間労働者で、正社員は少ない。イオンもかつては正社員が組合員の中心だったが、組織拡大に向けて方針転換した。組合員に占めるパートなどの比率は、04年の35%から24年には81%まで高まった。

春季労使交渉では正社員の賃上げだけでなく、パート時給の引き上げも要求に盛りこむ。「会社側も組合の必要性を理解しており、パートの組合加入や、新組織の立ち上げに協力的だ」(門馬氏)。24年はグループ内の工場で、特定技能の在留資格で働く外国人労働者が入るなど組合員の幅はさらに広がる。

小売りや繊維業界の労働組合をまとめるUAゼンセンでは、傘下の労組にパートなどの加入を促してきた。24年時点の組合員数は10年前から25%多い約190万人となった。短時間労働者は6割を占める。直近1年間では加入した組合員の9割が短時間労働者だ。

通信工事を手掛けるエクシオグループではエクシオ関連労働組合協議会の組合員数が約4600人と10年前から3割増えた。正社員だけでなく、傘下の警備会社で警備員として働く契約社員も入っている。

「会社とは協調路線。各職場の従業員には『組合に協力しても会社に歯向かうことにはならない』と説明している」(エクシオグループ労働組合の原慎太郎中央執行委員長)。労働組合ができた企業では、賃上げに加えて手当の支給を勝ち取ったところもあるという。

フリーランスなど個人事業主の取り込みに動く組織もある。全日本建設交運一般労働組合(建交労)軽貨物ユニオンが対象とするのはヤマト運輸や米アマゾン・ドット・コムなどが委託する個人事業主の運送ドライバーだ。首都圏を中心に200人程度が加入している。

厚生労働省によると、全国の労働組合員数は23年時点で993万8000人。ピーク時(1994年)から2割以上少ない。雇用者数に占める組合員数の割合を示す「組織率」も2023年は16.3%にとどまる。

イオングループ労働組合で、組合員数が20年で6.5倍というのは驚きです。世間的には労働組合は下火の印象で、同記事中の厚生労働省によるデータでも、組合員数は減っているとあります。

そのような中でも、すべての労働組合が地盤沈下しているわけでもないというわけです。UAゼンセンも有力と言われる労働組合の一角ですが、組合員が増加しています。同記事の例からは、誰を組合員の対象と考えるか、メンバーの定義を拡大していることが見てとれます。

以前は、正社員以外の従業員が組合員となるニーズは高くなく、運営側も従業員の側も組合に加入するという意識や発想があまりなかったのではないかと想像します。それが今では、雇用形態や働き方も多様化する中で、組合員として取り込む必要性が高まったということなのでしょう。

10月18日の日経新聞記事「変わる労組(中) 交渉・要求力弱まる執行部 賃上げ、旗振り役は企業・政府に」からも一部抜粋してみます。

困った組合が門をたたく会社がある。組合向けにコンサルティングを行うj.union(東京・新宿)だ。2025年の春季労使交渉に向けた相談件数はインフレ局面に差し掛かる前の22年から2.5倍に増えた。

25年はインフレ下で3回目の交渉になる。インフレ率が落ち着く中で要求根拠の立て方に悩む組合が多いという。同社のコンサルタントは「生産性の向上など自分たちの努力を反映させて要求を組み立てないと行き詰まりますよ」と助言する。

組合幹部が経営者的になり、問題点を直言する力が弱まったとの見方がある。労使関係に詳しい立教大学の首藤若菜教授は「労働組合の意義が薄れているとの指摘もあるが、企業ときちんと交渉して労働条件を守るにはこれからも組合が必要だ」と主張する。

組合と経営者が突っ込んで話し合うテーマは増えている。人工知能(AI)活用は雇用に影響を及ぼし、働く人には「仕事がなくなる」という心配がある。

組合が現場から集めた不安や課題など生の声を経営トップにぶつけて交渉する働き手の代表者としての存在意義までは失われていない。

高度経済成長下などでは、単に賃上げ要求を叫ぶだけでもよかったのかもしれません。しかしながら、同記事によると今では、組合側としてもどんな努力をするのかを問われているということを示唆しています。

以前の投稿で、労働組合をテーマに取り上げたことがあります。その際、労働組合という組織の目的を更新することの大切さについて考えました。かつての組合は、賃金合意を主軸とした雇用条件の維持改善を主目的としていました。今は、人材開発やキャリア開発、働きがいを生みやすい職場環境づくりといった、新たな目的・存在意義を見出し始めている組合もあるという内容でした。

・だれが対象なのかを再定義する
・組織の目的・役割を再定義する

この2点は、労働組合に限らず、すべての組織に当てはまるはずです。

環境変化も踏まえながら、この2点を実現していくことが、組織が継続して社会的な意義・貢献を発揮できることにつながると、改めて認識した次第です。

そして、マーケティングにおいて、自社と顧客の関係を問いかける場面でも当てはまることだと思います。

<まとめ>
だれのために、どんなことで貢献するのか、定義を更新する。

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