価格改定交渉を考える
先日、ある企業様への訪問時に、次のような問いかけがありました。
「商品・サービスを値上げするにあたって、「こういう流れでこうやって相手に迫ると、話がうまく流れやすい」のようなストーリー、手引きなどをまとめている事例があったら、ヒントになるかもしれないので、教えてもらえないか。うちの営業は、顧客の言うことを良く受け止めるスタイルが強く、値上げ交渉などはイメージが持てていない。」
まず、「値決めは経営」という観点からも、値上げに関しては社をあげて取り組む必要があるテーマだと考えます。得意先様には、社長自身が値上げのお願いをしてまわるのも大切な取り組みになってきます。
また、交渉術トークなどを体得すれば多少やりやすくなるかもしれませんが、「こうすれば必ずうまくいく」といった魔法のような方法はないと思います。中小企業庁や商工会議所の発信している情報等を探してみても、「根拠を明確にする」「誠意をもって説明しお願いする」といった当然のことが書かれています。それが王道なのだろうと考えます。
5月1日の日経新聞記事「〈小さくても勝てる〉大手、中小の価格転嫁のむ 難題の「労務費」10%超上げ合意も、原価データ交渉後押し」から一部抜粋してみます。
同記事で紹介されている価格交渉支援ツールを見てみましたが、価格交渉初心者にとっても比較的わかりやすく、ポイントを絞って必要事項がまとめられている印象です。参考にしやすい企業も多いのではないかと感じました。
冒頭の企業様も、原材料費や管理費等の物価が上がっていることは認識していながらも、同記事の企業が行っているような現状把握の取り組みまでは至っていませんでした。そのことも踏まえて、改めて3点申し上げた次第です。
・値段交渉を営業部門の取り組みに任せているようだが、経営者自らが関与して、対顧客対応も含め経営マターとして進めていくこと
・同記事で紹介されているような情報も参照し、現状把握を具体的に行うこと。どのような要因のコスト増がどれだけあるのかを把握し、だからいくら値上げをお願いする必要があるのかを、正当に、自信をもって話せるようにすること
・社員の給与が商品・サービスの値上げと紐づいているということを、社員に理解浸透させること。会社の財務・利益構造、労働分配率の考え方、従業員の待遇を上げたり採用を行ったりするための余力をつくるためには、売上・利益率を上げていくことが必要であるのを理解してもらうこと
上記の経緯もあり、同社様の今年度の事業目標、行動目標には、価格改定の具体的な数値目標と活動計画が項目として盛り込まれました。
日本の物価が他国と比較しても停滞しているために、いろいろなひずみが出ているのは昨今よく言われているとおりです。値下げ競争よりも、商品・サービスの付加価値力で競争する、それに伴う正当な価格上昇が必要であるのなら依頼する、という観点は、ますます重要になると考えます。
<まとめ>
価格改定交渉は、根拠を明確にしたうえで、社をあげて取り組む。