「ゆるブラック」と若手人材を考える
9月20日の日経新聞で、「「ゆるブラック」にご用心 残業や待遇を改善…若手なぜ辞める?」というタイトルの記事が掲載されました。待遇はいいが、仕事にやりがいがなくスキルアップできる環境が乏しいと感じてしまう「ゆるブラック企業」を辞めた若手人材との対話を取り上げた内容です。
同記事を抜粋してみます。
以前の投稿で、「衛生要因」「動機づけ要因」から考える離職対策についてテーマにしました。株式会社カイラボ様の提唱する「早期離職のタイプ別 ナインボックス」に沿って自社の現状、目指すべきポジショニング、そのための取り組みを考えてみるということでした。
そして、会社としては例えば、社員のために衛生要因を高めようと取り組んでいることが逆に社員の不安感を高めることになっている、動機づけ要因を高めようとして社員の疲弊を大きくしているなど、会社の取り組みと社員に対する効果の間のずれについても考えました。冒頭の記事は、それらのことに通じる内容だと感じます。
ここでは、改めて4点考えてみます。ひとつは、働きがいを求めている人材は多いだろうということです。
「働き方改革」というスローガンが出てきて以降、労働時間の短縮や労働環境の整備が進んできました。そのこと自体は必要であり、評価されるべき動きでもありますが、一方で「仕事で負荷をかけない」「成果に至ってなくても定時が来たら仕事を終えさせる」といった、仕事や労働の本質からややずれた指導や監督が見られるようにもなったのは、各所で指摘されているところです。
「若い時の苦労は買ってでもせよ」という言葉にはいろいろな見方や意見があります。明らかに意味のないことや、それをやることでの効果が何も得られないとわかりきっている苦労は、する必要がないだろうというのが、個人的な意見です。一方で、意味や効果を得る途上にある苦難のプロセスや、意味や効果があるかどうかやってみるまで分からない苦労は、必要ではないかと思います。
同記事のように、働きがいを求めて残業をいとわないという人材も、相応にいるものと想定されます(もちろん、はじめから残業ありきではなく、効率や健康状態と両立する働き方の維持は大切です)。
会社としては、そのことも念頭に置いて、例えば「現状が「ゆるブラック」と想定される自社において、さらに衛生要因を手当てするが動機づけ要因は手当しない」など、的を外した施策に走らないことが大切だと思います。
2つ目は、成長できそうにないと思える環境は、若手世代の危機感を高めてしまう大きな要因になり得るということです。この点は、ミドルやベテラン層の想像以上なのだろうと思いますが、これは自然なことです。
かつては、人が就職した時点から定年するまでの約40年間よりも、就職できた時点からの企業の平均余命のほうが長いと想定できた時代もありました。しかし、両者は既に逆転して久しいと言われます。また、個人のキャリア自律が叫ばれるようになって久しくもなりました。
企業より自分は長生きする。会社内外からキャリア自律も促されている。今の若手世代はかつての若手世代以上に、どんな環境になっても生き抜いていけるための自身の人材力を高めることに執着しようとするのは、当然のことです。
自社が良いと感じる人材ほど、一般的にはキャリア自律の欲求、自己成長欲求が高いはずです。こうした人材に魅力的な環境が提供できそうかどうかを、組織づくりを主導する立場の側は、自分たちが若手だった頃の感覚以上の視点から考える必要があるのだと思います。
続きは、次回取り上げてみます。
<まとめ>
若手世代は年々、キャリア自律と成長欲求を高めていると想定する。