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「平等」と「公平」(2)

前回の投稿では、「平等」と「公平」をテーマにしました。

前回取り上げた「1億円の壁」問題と対処の方針、あるいは最近叫ばれている「分配」や「新自由主義的政策からの転換」は、ざっくり言うと(少し乱暴かもしれませんが)、公平寄りの制度から平等寄りの制度へシフトする、という解釈もできると思います。これは、前回考えてみた「人は平等より公平のほうを望んでいるはずだ」という原則に合っていません。

そのうえで、(平等の観点を度外視した)「完全な公平状態を目指す制度」にも無理があるのだと思います。おそらくは、公平の実現を基本方針としつつ、平等の観点も一定程度考慮しながらの、折衷の落としどころを見出していくことが必要なのでしょう。

私は仕事上、いろいろな企業の経営計画や人事制度などの検討に参画することがあります。その際ほぼ例外なくお聞きするのは、「社員にとって公平な制度にしたい」という考え方です。つまりは、前回の例で言うところの「Aさん4、Bさん3、Cさん2、Dさん1の成果貢献に対して、Aさん4000円、Bさん3000円、Cさん2000円、Dさん1000円」の分配方式です。それは妥当なのですが、現実の組織活動ではこのように単純にもいきません。

例えば、10個中4個の製品を作ったけどチームの人間関係を悪くした人、逆に1個しか作ってないけど人間関係をよくした人、4個作ったけど品質の詰めが不十分で再チェックが必要な人、1個も自分では作れないが他の人が作ったものを検査するのが誰よりもうまくて検査で貢献する人、などがいて組織活動が成り立っています。これらをどう評価すれば公平になるかは、難しい問題です。

また、完全に公平に徹するのも難しいでしょう。身体の調子が悪く、今月はたまたまいつもより製造量が落ちてしまった人もいるでしょう。公平に徹するなら、その人の製造量が3割落ちれば給与も3割カットとなりますが、それが妥当なのかは難しいところです。ここで平等の観点の出番となります。

この問いに正解はなく(だからこそ、経営計画、組織活動計画、人事制度設計などは難しいのですが)、各社なりの妥当な結論を見出していくしかないと思います。そのうえで、

・基本は公平の実現を目指す
・一方で、公平に徹するのみではなく平等の観点も必要とみなす
・公平と平等とを分別・整理して考える

ことをするだけでも、議論・検討は進みやすくなると思います。

一例ですが、ある企業様では「夏・冬賞与は公平の観点、年度末の決算賞与は平等の観点」という支給ルールにしています。夏・冬の定期賞与は成果貢献の評価結果に応じて信賞必罰での分配に徹する、決算が会社計画以上の内容になって予定以上に社員に分配できる時には、細かいことは言わず全員で喜びを均等に分け合う、という考え方のようです。このような考え方が必ずしも妥当とは限りませんし、合う合わないも組織によって変わってくると思いますが、方針としては明確で整理されていると思います。

別の企業様では、「賞与は夏・冬の2回、固定部分として社員全員一律10万円ずつ支給、10万円を超える部分は変動部分として成果貢献に応じた分配で支給」としています。この場合は、10万円の分配が平等、残りが公平の観点です。もちろん、すべての支給分を公平の観点で支払う企業もあります。

ちなみに、前回取り上げた「1億円の壁」問題に関しては、税率だけが問題の本質ではないと考えます。本来なら、所得の少ない人ほど資産を増やすために積極的に資産を投資に回すことをするべきです。国全体で運用されず塩漬けになっている預貯金、不動産は多く、資産構成に占める預貯金の割合は上がり続けていて、諸外国とは雲泥の差です。

税金に関する施策であれば、新たな所得に対してではなく逆に滞留している預貯金に課税を始める、お金の教育をして投資の意識を喚起する、各社が魅力のある金融商品をもっと出せるよう規制緩和する、などのほうが、現状への対策としては本丸なのではないかと思われます。

<まとめ>
公平の実現を基本方針としつつ、平等の観点も一定程度考慮が必要だろう。


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