定住する前提に立つ
10月25日の日経新聞で、「ノーベル経済学賞にアセモグル氏ら 国の豊かさ 制度の影響解明」というタイトルの記事が掲載されました。記事の内容は国がテーマではありますが、私たちの組織活動に置き換えて考えることもできる、示唆的な内容だと思います。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事の内容は、大きな原理原則を示唆しているのでないかと感じます。それは、「自分自身が、相手のコミュニティに身を置き続けるつもりでなければ、物事はうまくいかない」です。
同記事の示唆を、私なりの言葉でまとめてみます。
・人々に経済活動のインセンティブを与える制度(所有権を保護する制度)が経済活動を活発化させ、経済発展をもたらす。そして、治安を維持し契約執行が守られることの保障が必要。
・植民者が定住を前提とせず、植民地で短期的搾取を前提に略奪的な制度を導入した国は、経済発展度合いが高まらない。植民者も長期的な利益を享受し続けることはできない。
・植民地で定住を前提とし、所有権の保護や政治権力のけん制が機能する制度を導入した国は、経済発展度合いが高まる。植民者は長期的な利益を享受できる可能性がある。
・そうした制度の影響は長く続く。
植民者が出身国をモデルとする制度を適用し自らも定住を前提としたほうが、定住先の国の経済発展につながったというわけです。(植民地化するという行動自体を肯定する意図はありません。また、植民者側が考える制度を相手に適用させたほうがいいとも限らないと思います)
同記事は国同士の事象について取り上げています。
私は研究の細部まで理解できていませんし、やや飛躍するかもしれませんが、この視点は組織同士の合併、あるいは個人が新しい組織に入っていくケースに置き換えても共通するのではないかと推察します。すなわち下記です。
・組織に入っていく人材やチームが定住を前提とせず、入っていく先の組織から短期的搾取を前提とした戦略の実行に走ってもその組織は発展せず、入っていった側の人材やチームも長期的に豊かにならない。
・組織に入っていく人材やチームが定住を前提とし、入っていく先の組織で自らと共に、構成メンバーにインセンティブを与えたり、成果によって得た報酬を認めたりすることを約束する仕組みが、事業を活性化させ組織の発展をもたらす。入っていった側の人材やチームも長期的に豊かになる。
・そうした制度の影響は長く続く。
「定住」といっても必ずしも永住ではないでしょうし、どのぐらいの時間軸で見るのが適切かはわかりません。そのうえで、少なくとも「近視眼的な腰かけのつもりでは、入っていった先の組織でうまくいかない。一定期間以上定住するつもりで入っていき、自身が定住先の一員としても納得できる制度を構築しようとすることが、うまくいくことの必要条件(十分条件ではないが)である」と言えるのではないでしょうか。
上記は、私たちが普段行動したりいろいろな事例を目にしたりすることで、感覚的にわかることではあります。
そのうえで、類似の事象に関して学術的な研究で裏付けされたということ、そのことが2024年のノーベル経済学賞の理由の一角をしめているということは、日々の活動を考える際の参考になり、知っておくことで有益だと考えます。
<まとめ>
定住する前提に立たないと、うまくいかない。