多角化を進めての最高益
7月7日の日経新聞で、「イオンの3~5月、純利益最高193億円 総合スーパー復調」というタイトルの記事が掲載されました。イオンが6日に発表した2022年3~5月期連結決算で、3~5月期としては12年ぶりに過去最高を更新したということです。
同記事の一部を抜粋してみます。
売上高・営業利益ともに過去最高で、営業利益が18年、純利益が10年以来の水準ということで、コロナ禍前を上回る水準です。コロナ禍の影響を乗り越えていよいよ本格的な業績拡張フェーズに入ったようにも感じられますが、もう少し踏み込んで、ここでは2点考えてみたいと思います。
ひとつは、相当な企業努力をしているのではないかという点です。
イオンの2023 年2月期 第1四半期決算短信(3~5月四半期決算)を確認してみると、GMS事業の売上は7,890 億 22 百万円で、1年前の3~5月の8,051憶04百万円から約2%減っていることが分かります。つまりは、売上が減る一方で、経費を削減して黒字に転換させたということになります。
経費削減の要素としては、記事中にある、AIも活用した売値の適正化、廃棄ロス削減、人員削減による生産性向上などが想定されます。これらによって、売上が減り、コストが上昇する中でもコスト上昇分をまかなってのGMS事業黒字確保ということです。
このことからは、単なる「コロナ禍後の景気回復に乗っての黒字化」などではないこと、相応の取り組みを進めた結果であることが想像できます。よって、他社でも同様とは限りません。
全体的に復調の動きが見られる業界もある一方で、GMSなどは巣ごもり需要の反動もあり低調となっています。周辺領域の百貨店でも先日、北海道東部唯一の百貨店として知られる、帯広市の藤丸が来年1月に閉店することが発表されています。経済全体でもそうですし、業界によってはさらに予断を許さない状態が続いていると言えそうです。
もうひとつは、事業の使命を維持することの大変さです。
3~5月の部門別の営業利益は、金融156億円、不動産130億円、ドラッグストア74億円、食品スーパー33億円、サービス・専門店28億円、GMS 1億円、となっています。
GMSである総合スーパーのイオンは、売上が全体の36%を占める主力事業ですが、利益は全体の0.2%です。金融、不動産の2つを合わせた売上は、全体の10%ながら65%の利益を上げています。GMSは赤字から脱却したものの、コロナ禍前から既に赤字事業だったわけで、利益貢献はほとんどありません。サービス・専門店も、1年前は赤字だった事業です。
ドラッグストアは、一見相応の利益貢献をしているように見えますが、事業の利益率はわずか2.75%です(利益74億円/売上2690億円)。上記に挙げたような企業努力をしながらも、GMSや食品スーパーと共に、そもそも売っても売っても利益が出にくい構造になっていると言えそうです。
仮に儲けを最大化させようと思えば、金融や不動産などだけに特化するほうが効率的かもしれません。しかし、スーパーは社会的には必須の事業です。企業としての使命感がなければ、継続は難しい環境だと上記からは思います。いち消費者としては、改めて感謝したい取り組みです。加えて、そのような事業を支えるための収益源となる別の事業・顧客を確保しておく必要性も改めて認識します。
また、「9年ぶりの営業黒字」とあることからも、今の値付けでは長期的にはもたないのではないかと推察します。7月8日の日経新聞でも、「社長100人アンケート」で8割の社長が「価格転嫁は不十分」と答えていることを取り上げています。難しい問題ですが、社会的には一層の継続的な値上げ受け入れが求められてくるようにも感じます。
<まとめ>
複数の有力な収益源を確保する。