そのサービス、無料で妥当なのか?
7月13日の日経新聞で、「サイゼリヤ、9~5月営業益3.4倍 値上げせず、粉チーズ無料→100円」というタイトルの記事が掲載されました。飲食店では、調味料をはじめ無料で利用できるものがいろいろありますが、限界もでてきたということなのでしょう。
同記事の一部を抜粋してみます。
以前、ある飲食チェーンがある国に出店する際、当初無料にしていたショウガについて、出店後に慌てて無料提供をやめたと聞いたことがあります。理由は、無料だということで、1人のお客さんが日本では考えられないぐらいの量を次々にとってしまったからだそうです。辛い味付けの料理が多い国ということもあり、ショウガに辛さを感じなかったのだろうとも言っていました。
サイゼリヤで無料の粉チーズはどれぐらい消費されているのでしょうか。見当がつきづらいですが、そのことについて試算している記事がありました。(以下、「ビジネスジャーナル」関連記事サイトから一部引用)
1か月で約9000万円ということは、年間で約10.8億円です。9か月間なら約8.1億円です。冒頭の記事で、「2022年9月~23年5月期の連結決算で、営業利益が前年同期の3.4倍となる35億円だった」とあります。この9か月間の連結決算でチーズ無料提供がなければ、単純計算では営業利益が+8.1億円となり、43.1億円出せたということになります。
前年同期の営業利益は、約10.3億円(35億÷3.4)です。ほぼチーズ無料提供分の利益しか残せてなかったということになります。同社にとって、無料チーズが状況によっては死活問題になりかねないことが、改めて分かります。
個人的な意見ですが、料理自体の価格を維持して顧客確保を目指す戦略ということなら、利用客としても粉チーズの有料化は理解するのではないかと思います。
このエピソードから感じたのは、私たちは事業活動において適正な価格を提示しているのだろうかということです。言い換えると、無料で必要以上のサービスを提供しているのではないかということです。
どこまでを無料対応し、どこからを有料とすべきかは難しく、一概にも言えないテーマです。そのうえで、行き過ぎた無料サービスは、収益性を圧迫して事業の持続可能性を損ねてしまいます。結果として事業が潰れてしまうと、その事業を必要としてくれる顧客に商品・サービスを届けること自体ができなくなってしまい、顧客にとって値上げ以上に不便な結果となります。
そしてある意味、価格に反映されない無料対応が多いことも、商品・サービスの低価格の一因となって、デフレ、GDPの停滞につながります。無料対応が必ずしもよいとは言えません。
特に、(上記の無料チーズは別ですが)顧客が大して付加価値を感じていないながら、良かれと思って無料サービスとして提供していることがあれば、この物価高の環境を機会に、過剰サービスから適正価格・サービスへと見直しの対象とすべきなのだと思います。
私も時々家族でサイゼリヤを利用しますが、グラスワインが100円で飲めます。この100円のグラスワインを200円のデカンタにするかどうか毎回悩み、200円にした時のリッチな気分がまた味わい深いです。このリーズナブルすぎる100円ワインに喜びを見出している利用者は、他にも多いのではないかと思います。個人的には、このリーズナブルな有料サービス維持にもつながるであろう、無料チーズの見直しは感謝です。
<まとめ>
無料・過剰サービスは、必要に応じて適正価格・サービスへと見直す。