海外での保育園事情を考える
日経新聞で9月16日から4回にわたって、「保育園「大閉鎖」の波」というタイトルの記事が掲載されました。各地の保育園事情や保育園の取り組みを取材し、今後の保育事業について考察した内容で、たいへん示唆的でした。
9月19日の記事「保育園「大閉鎖」の波3 日本の集団保育、世界へ」から一部抜粋してみます。
同記事からは、主に3つのことを考えてみました。ひとつは、普段何気なくやっていることに強みが見出せるかもしれないということです。
保育園での集団保育は、日本では見慣れた景色ですが、他国では必ずしもそうではないというわけです。逆に、「ナニー」や「ベビーシッター」という言葉が日本ではまだあまり聞き慣れない通り、家庭訪問型の保育や子守りサービスは日本でまだそれほど一般的ではありません。
しかし、家事代行サービスと合わせて、日本でも訪問型の保育や子守りが広まりつつあります。これと同じようなイメージで、インドネシアでも日本式の集団保育が目にとまりつつあるのかもしれません。
ある国や文化圏で定着していることは、それなりのニーズに基づいているはずです。別の国や文化圏では相容れないこともありますが、潜在的に共通するニーズがありながらも知る機会がなかったため採用されていなかった、という状況もありえます。私たちが、自分自身や自分の周囲に関して普通に感じていることも、場所や関わる相手が違えば普通でないかもしれない、そこには大きな可能性もあるかもしれない、と改めて感じます。
その強みに気づき、いち早くアクションに移すことができれば、先行者利益もついてきます。
2つ目は、他国や世界経済の動向を把握することの大切さです。
同記事を参照すると、東南アジアの人口大国であるインドネシアでも、人口置換水準(現在の人口を維持するのに必要な出生率。2.07~2.1と言われている)を下回るのは時間の問題だと想定されます。経済発展に合わせて人口減少が進むという大きな流れは、東南アジアでも例外なく当てはまっているようです。
そして、インドネシアで月額料金が6万6千円の保育園が人気だとあります。日本では、幼児教育・保育の無償化をはじめとした補助金の支給があります。仮に保育園に月額6万6千円の利用者負担が発生するとなると、家計にとっては大きな負担となります。
インドネシアにおいても月額6万6千円を払えるのは限られた世帯だろうと想像しますが、それでも一定の利用者が見られるわけです。少し前ではあまり考えられなかった状況ではないでしょうか。
同記事では、「国内の保育施設に比べ、現地の賃金水準は高い。保育者を目指す学生の就職先として、海外の園で働くことも選択肢の一つになっていく」という指摘もありました。今の日本国内に比べて、国外の経済動向のほうが変化のスピードが速く、その動向をとらえておくことの必要性を改めて感じます。
3つ目は、既存の資産を新事業に活用するということです。
9月20日の記事「保育園「大閉鎖」の波4 「おとぎの国」は介護の園へ」から一部抜粋してみます。
釜山といえば「釜山港へ帰れ」の楽曲が印象的で、存在感のある韓国第2の都市というイメージがありますが、出生率0.66ということで急速に少子化が進んでいるようです。
幼保施設を介護施設に転用できるという視点は、個人的に持ち合わせていませんでしたので、同記事の内容は新鮮に感じます。
少子高齢化、人口減少などの外部環境は、個人では直接変えることはできません。既存の資産で既存のお客さまに向けた既存事業で先行きが成り立たないのであれば、外部環境の変化に合わせて、新たに価値を発揮できる事業を探すしかありません。少子高齢化が日本以上に進む韓国などで見られる取り組みからは、日本で転用できるヒントがあるのかもしれないと思います。
環境変化に強みを掛けあわせて機会を見出す。上記の記事からは、そのことを感じた次第です。
<まとめ>
環境変化に強みを掛けあわせて機会を見出す。