第9歩「おいしい家へようこそ」
(※2018年12月ハチモットで連載した記事の加筆修正版となります)
始めたお店“おいしい家”はおかげさまで良い感じ。
毎日たのしく、毎日忙しく、日々が過ぎていきます。
茅野にもお友達や知り合いが増えて、充実した毎日を過ごしているのだけど・・・
さっぱり、藤森さんから告白の返事はないまま。
何をしに茅野にきたんだ?
いい加減どこかで諦めないといけないの?・・・との思いも芽生え始めた頃。
「お店にご招待しよう」
こんな時に、いつも頼れるのは茅野市美術館学芸員の前田さん、
助け舟を借りて、藤森さんが茅野に帰省してくる情報をキャッチ!
これは逃せない!!
と言う事で、お店は1ヶ月ほどご予約を受けない状態で
いつ藤森さんが来ても良い様に待機状態(笑)
そして満を辞して、藤森さんに電話をかけます。
藤森さん「もしもし」
私「もしもし、大畑です(旧姓)お店に来てもらいたくて、ご都合はいかがでしょうか?」
※事前に前田さんから大体の内容は伝えてもらっていました
藤森さん「いいよ、13日なら大丈夫」
私「12時頃で良いですか?」
藤森さん「いいよ、迎えにきて」
私「は、はい、いきまーす!!」
ひや~、遂にお店にやってくる!(自分が招待したくせに)
こんな日がくるなんて~(藤森さんの為にやっていると言っても過言はないお店なのに)
お~すご~~(自分が誘ったのに)
と心の中は大忙し。
さて、これまでの状況を整理します。
「藤森建築で宿がしたい、どうぞ設計してください!」
と告白にも似た企画書を藤森さんに渡したのが8年前。
返事を待ちます、が、なんの連絡もありません。
そして、またアタック!
返事無し!
もっと近くに行かなくては、と穂高から茅野に移住!
諦めてません、とまたアタック!
返事無し!
またアタック!
返事無し!
この間に3年が経過。
・
・
・
あれ?もしかして振られてる?
恥ずかしいー、移住しちゃったやん。
このタイミングでの、お店にご招待。
どんなに緊張したでしょうか?
この機会に返事を聞きたい!
ダメならスッパリ諦めよう、けじめをつける機会にしなくては。
おいしい家ご招待までのドキドキといったら・・・
前日には車の洗車、いままでに頼んだことのない車内の清掃付き(笑)
お店の掃除もいつもに増して丁寧に、年末の大掃除以上に磨き上げ、そこらじゅうピカピカに。
メニュー立て、買い出し、仕込み。
そして、ほとんど眠れずに迎えたその日!
ピカピカのジムニーに乗って、藤森さんをご実家までお迎えにいきます。
ピンポーン。
ガチャ、と扉が開くと。
目の前には麦わらにサンダル姿の藤森さん・・・
わかってはいたけど、想像以上にラフな格好(笑)
子供の頃、この近くの野山を走り回っていた頃とおんなじなんだろうな〜。
そんな姿に緊張は吹っ飛び、ほのぼのした気持ちになりお店へとお連れします。
藤森さんを客室にご案内して、食事を運びます。
まずは前菜を・・・
そして、つぎのお皿を持っていくと!
もう無い!食べ終わっている!
急いで次のお椀を持っていくと!
もうない!
食べるの早い!
一緒にご飯を食べようと思っていた私は、焦りながら揚げ物したり
汁物を温めたり。
うわ~ん(汗)
そして遂に、デザートに。
なんの話もしないまま帰してはいけない!と、
デザートは始めっから2つ用意して、ご一緒させて下さいと言って席に付きます。
蕎麦屋の話とか世間話なんかしながら、時間が過ぎていきます。
そろそろ、企画のお話しなきゃな~。
よく考えてみれば、藤森さんの追っかけで茅野に来て、
自分の紹介になる様にと“おいしい家”を始めて、知らない土地でたくさんのお友達ができて…
今、藤森さんと一緒にデザートを食べている。
幸せなことだな。
なんか、もう設計してもらわなくても充分なのかもしれない…。
と、思っていると。
藤森さん「土地が決まれば設計しましょう」
私「え!!!!!!、はい、ありがとうございます」
嬉しいはずが、なんだか唐突なお言葉に、とにかくびっくり。
その後は、旅館は大変だからまずは食べ物屋をやったらいいんじゃない?
軌道にのれば旅館もやればいいし、とのアドバイスまでしてもらい。
藤森さん、ちゃんと考えてくれてる~。(ジーン)
私「土地、がんばって探しますね!」
としっかりお約束して、藤森さんをご実家までお送りしました。
一人お店に戻ってお茶碗を洗っていると、じわじわと喜びが込み上げてきて。
ボロボロと涙がこぼれ落ちました。
そして、でっかいでっかいガッツポーズ。
「探すで~!!」
さあ、これは一つの大きな区切り、そうと決まればやることは一つ!
ながいながい第二章、土地探しへとつづく・・・。
次回は「ジェラシーの行き先、オーストリアへの旅」です。
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