【カオス病院 #2】イケメンのお尻にブルーベリー!?〜血栓性外痔核〜【後編】
後編
「では、ズボンと下着を膝までおろして、こちらのベッドに横になってください」
すらすらと定型文を述べ、カーテンを閉じる。尻の診察なので脱衣が必要なのは言うまでもない。それは診察される本人が一番理解しているはずだ。だが、言葉にこそしないが「やっぱり脱がないとダメか……」という絶望感がカーテン越しに伝わってきた。
イケメンの準備が出来たのを見計らい、失礼しますと声をかけてカーテンを開けた。お尻丸出しのままでは寒いし、恥ずかしいので、気持ちばかりのタオルをかけるのだ。そして、それは私の目に飛び込んできた。
(!!??)
彼のお尻は普通のそれではなかった。なんと、お尻にブルーベリーのようなものがくっついていたのである。
(なんじゃこりゃ!? 食べたブルーベリーが消化されずに出てきた……とか!? でも肛門にピッタリくっついているし……こんな色の外痔核(※がいじかく。痔が外に出てきてしまったもの)見たことない……)
あまりの衝撃映像に一瞬言葉を失ったが、イケメンに動揺を悟られないように「し、失礼しましたー」と、そっとカーテンを閉めた。
ほどなくして、医師が診察にやってきた。
「患者さんどんな感じー?」
「あ……先生……。いやなんというか……」
「んー? 痔じゃないの?」
「ブ……ブルーベリー……みたいの……が、くっ付いてるんです……」
自分でも何を言っているのだろうと思いつつも、それ以外の言葉が思いつかなかった。
「ぶっ! あははははは!! ブルーベリーって! あはははは! 血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)じゃない? それ!」
「血栓性……?」
後に知ることになるのだが、血栓性外痔核とは、血流が悪くなることで外痔核の中に血栓が溜まって腫れたものを指す。見た目は良くないが、そんなに恐ろしい病気ではなく、薬を塗ったり温めたりすることで大体の人は治る病気だ。
その後、無事にイケメンは診察を終え、終始恥ずかしそうに帰っていった。
イケメンとお近づきになりたいなんて思っていたが、よくよく考えてみれば自分の尻(しかもブルーベリー付き)を見た女の顔なんて、二度と見たくはないだろう。
入職して半年、病院での異性との出会いを早々に諦めた瞬間だった。
著者:藤見葉月
イラスト・編集協力:つかもとかずき